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気候変動の健康への影響と闘うスウェーデンのヘルステック・スタートアップ

ストックホルムを拠点とするヘルステックのスタートアップ、エリナムは、大気汚染から身を守る持続可能なマスクを販売している。(提供)
ストックホルムを拠点とするヘルステックのスタートアップ、エリナムは、大気汚染から身を守る持続可能なマスクを販売している。(提供)
アーバン・エアマスク 2.0には、フィルター2つ、呼気バルブストッパー2対、調整できるヘッドストラップがついている。(ANJP)
アーバン・エアマスク 2.0には、フィルター2つ、呼気バルブストッパー2対、調整できるヘッドストラップがついている。(ANJP)
ストックホルムを拠点とするヘルステックのスタートアップ、エリナムは、大気汚染から身を守る持続可能なマスクを販売している。(提供)
ストックホルムを拠点とするヘルステックのスタートアップ、エリナムは、大気汚染から身を守る持続可能なマスクを販売している。(提供)
ストックホルムを拠点とするヘルステックのスタートアップ、エリナムは、大気汚染から身を守る持続可能なマスクを販売している。(提供)
ストックホルムを拠点とするヘルステックのスタートアップ、エリナムは、大気汚染から身を守る持続可能なマスクを販売している。(提供)
ストックホルムを拠点とするヘルステックのスタートアップ、エリナムは、大気汚染から身を守る持続可能なマスクを販売している。(提供)
ストックホルムを拠点とするヘルステックのスタートアップ、エリナムは、大気汚染から身を守る持続可能なマスクを販売している。(提供)
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16 Jan 2022 07:01:16 GMT9
16 Jan 2022 07:01:16 GMT9

カーラ・シャハルー

ドバイ:COVID-19の感染予防対策においてマスクは特殊な位置づけになっている。政府が規制を頻繁に変更し、新変異株や感染率・ワクチン接種率が変化する中、マスク(口と鼻を覆うタイプでCOVID-19が出現する前から世界中で見られたもの)は、ある意味で、不安や恐れの繰り返しから、意識の高い人にとってなくてはならないアクセサリーへと変貌を遂げてきた。

(提供)

マスクの利点に気づく一般の人々が増え、マスクを着用したり、着け続けたりする動機が高まっている。近年、メディアで頻繁に取り上げられ、空気質の情報を知ることができるようになったこともそれを後押ししている。そこでさまざまな企業がそのような考え方に乗じ、COVID-19だけでなく、健康の上で大きな問題となるその他の空気中の汚染物質から着用者を守るために設計したマスクの製造を開始した。

エリナムは、スウェーデンの起業家たちが2015年に立ち上げたヘルステック企業だ。COVID-19感染も含めた大気汚染の健康への影響という差し迫った脅威から身を守るだけでなく、長期的にはウイルスをはるかに上回る環境への悪影響が懸念される問題、プラスチック汚染に抵抗する持続可能なマスクを作り上げた。

世界保健機関によると、毎年400万人以上が屋外の大気汚染が原因で死亡している。大気汚染の悪影響を避けるためにマスクをつけることは極めて重要であるものの、かなりの数量のマスクは使い捨てで、プラスチック製がほとんどであり、現在にも将来にも人類に深刻な課題を突きつけることになる。

アラブニュース・ジャパンの独占インタビューの中で、エリナムのインフルエンサーマーケティング・スペシャリストのメリッサ・ティムス氏は、企業を支えるミッションと、エリナムのマスク、そしてブランドを市場の競合から差別化している特徴について説明した。

「エリナムのミッションは、気候変動が及ぼす健康への影響に対抗する革新的な製品を生み出し、明るい未来をひらく知識を共有することです。世界をリードする保護用具を供給するだけでなく、気候変動に対する人々の認識を高め、知識を共有していくためにマリーン・セル、ヒューマンメイド、アンダーカバーといったブランドとのコラボレーションも頻繁に行なっているのはそれが理由です」

「きれいな空気とは万人が手にできるべきものだという信念で設立されたエリナムは、世界最高水準のフィルター技術を駆使し、エンドユーザーに合わせてマスクを設計して、世界最先端のエアマスクを作ることを目指しています。この信念は、身を守る手段になる健康アクセサリーを提供し、気候変動が人間の健康に及ぼす影響を打ち負かすという企業のミッションからきています」

「エリナムは常に、『デザイン思考プロセス』に似た顧客中心の製品開発手法を用いて製造を行っています。第一に答えるべき問いかけは、私たちがこれから作ろうとしている製品が『ネセサリー(必要不可欠なアクセサリー)』であるかどうか、つまり、アクセサリーと必需品を兼ね備えたエリナムであるかどうかです」とティムス氏は言った。

ライト・エアマスク。(エリナム)

「エリナムは、今日の市場で最も先進的な特殊なエアマスクを2商品展開しています。アーバン・エアマスク 2.0とライト・エアマスクです。どちらのマスクも、持続可能性の取り組みを損なうことなく、『エアマスクの絶対的基準』と同等の保護機能を備えています。私たちはこの2つのマスクを、あなたにも、地球にも良い『アーバン・ヘルス・ネセサリー』と呼んでいます」とティムス氏は付け加えた。

(画像)

また、エリナム・アーバン・エアマスク 2.0の技術やフィルター素材を詳しく説明する中で、ティムス氏は、マスクのフィルターには5種類の層が使われており、それぞれ密度が異なるのでいろいろなサイズの粒子を濾過できると述べた。多層フィルターの技術は、世界有数のフィルター研究機関の1つであるスウェーデンのRISE研究開発センターでテストされている。層の構成は、耐久性仕上げの外部フィルターを含む外側のPP層、ガスを濾過して匂いを減らす活性炭層、2つの帯電層(うち1層は大き目のPM10、花粉・その他のアレルゲン、もう1層は小さ目のPM2.5、ほこり・バクテリアを濾過する)、そしてごく滑らかで肌に優しい仕上げの内部フィルターである。

さらに、エリナムのマスクは繊維の抗ウイルス加工技術「ポリジン・バイラルオフ®」で処理されている。この技術で2時間以内に繊維表面から99%のCOVID-19粒子を消毒できる。マスクは「ポリジン」で処理されるので、他の布製マスクに比べ洗浄回数が少なく、製品の持続可能性の面でも優れている。

エリナムのマスクは再利用できるので、通常はプラスチック製の使い捨て医療用マスクの製造と使用で生じる環境課題を解決する有効な手段になる。

このマスクの持続可能な特徴として、フィルターの耐久性の高さも挙げられる。このフィルターはマスクのスキンで保護されているため、使い捨ての手術用マスクや産業用マスクに比べてはるかに長持ちする。安全性の高い洗えるマスクを開発すれば、使い捨て製品にかかっている現在の大きな負担を増やさないようにすることができる。

大気汚染から保護するためにつけるマスクの実際の効果は、非常に効率的な粒子濾過の素材と顔につけたときの適切なフィット感からくる。顔へのフィット感は、マスクの保護性能を左右する重要な要素だ。顔にぴったり合わない場合、着用したときに濾過効率が下がる可能性があるからだ。そして、マスクの布にゆるみがあると、マスクの性能を最大限に発揮できるだけのフィット感は得られない。このため、エリナムのマスクのデザインは3D構造の鼻パッドで設計されている。カスタマイズしてぴったり装着でき、さまざまな顔の形状にフィットする。また、耳にかかる圧力も小さいので、マスクを常に密着させて着用することができ、メガネも曇らないとティムス氏は述べた。


アーバン・エアマスク 2.0。(エリナム)

アーバン・エアマスク 2.0のその他の重要なデザインの特徴は「呼気バルブストッパーです。エリナムのお客さまが換気システムをロックするか否かを選べるように開発されました。パンデミックのような時期には、公共の場で呼気がマスクから出ないようにストッパーを使用することをおすすめします。人の少ない場所では通常のバルブキャップを使えば、呼気をマスクの外に出し、内部の湿気を減らす技術と快適性を最大限に活用できます」とティムス氏は言った。

空気の質、汚染、環境悪化への意識が高まり、議論にのぼる機会が増えるにつれ、マスク着用はごく普通のことになり、有名人がマスクをつけて自撮りした写真をソーシャルメディアに投稿するようになった。

多くのブランドがこのチャンスをとらえようとデザイナーズ・マスクの生産に乗り出す一方、エリナムは同じビジョンを持つコラボレーターや影響力を持つ人たちだけに絞ることを選んだ。エリナムのマスクを着用しているところを公開した有名人に、ファレル・ウィリアムス、キッド・カディ、グウィネス・パルトローらがいる。マスクをつけた自分の写真を、広告ではなく自身の投稿としてソーシャルメディアチャンネルで発信することでかなりの注目を集めた。

「エリナムは、マリーン・セルなどのブランドやハイディ・セベストル氏ら著名な気候科学者と共にパリのファッションウィークに登場しました。私たちは、気候変動に関する意識と知識を高めるために協力し合っています。エリナムはパンデミックに乗じてマスク事業に参入したのではありません。感染症流行のずっと前から、今後も長い間、目の前に課題が続く現実の問題である気候変動の影響から人々と地球を守ってきました。ですから世界中のお客さまがエリナムの製品だけでなく、エリナムというブランドを愛しているのです」とティムス氏は言った。

「エリナムの目標は、コラボレーターとともに、気候変動がもたらす結果についてできる限り多くの人々に伝え、情報を提供することです。エリナムのコラボレーションデザインはそれぞれ、気候変動に対する意識を高め、よりクリーンで健康的な明日を目指すムーブメントへの参加を多くの人々に呼びかけていくことを目的としています。地域に根ざした非営利団体の支援で国連の持続可能な開発目標を推進するスウェーデンのプラットフォーム、ミルキーワイヤーと提携し、エリナムは、エリナム基金を通じてあらゆるコラボレーションの収益の一部を寄付しています」とティムス氏は付け加えた。

エリナムの目標は、再利用可能なマスクの製造・販売にとどまらず、地球温暖化が健康に与える影響について一般の人々の意識に積極的に働きかけることである。そのような議論で気候変動に対する多面的な解決策を引き出すことはできないかもしれない。解決には、二酸化炭素などの長寿命温室効果ガスの排出削減を各国に求める必要があるからだ。だが、エリナムは、大気汚染の影響を和らげて短期的に身を守るためのツールの実現は可能であることを示している。そして、このテーマへの関心の高まりには、公衆衛生を改善し、気候変動対策の成功につなげるという1つの共通の目標が現れている。

「それが、私たちがエリナム基金を利用して地球にお返しをしている理由です。この事業を進めつつ、他の人々、組織、ブランドとつながって、気候変動に関する重要な物語を共有しています。知識を持つ人が増えれば、政府や政策立案者に対して一緒にもっと大きな圧力をかけることができます」とティムス氏は言った。

2022年からも、エリナムは、気候変動と公衆衛生に関する知識を広げることに引き続き力を注ぎ、あらゆる状況にいる人が大気汚染、アレルギー、空気感染症から解放されるようなマスクを作る。気候変動が健康に及ぼす影響に打ち勝つというブランドのミッション推進に取り組むエリナムは、世界のニーズを考慮した「ヘルス・ネセサリー」を製造して将来の製品の幅を広げていこうとしている。拡大した製品群の第1弾は、1月25日にウェブサイト上で公開される。

同時に、エリナムは気候変動がもたらす悪影響について議論の幅を広げるだけでなく、発売される新しい「ヘルス・ネセサリー」のそれぞれが気候危機の注意喚起になるという観点から、大気汚染物質、温室効果ガス、またそれに結びついた問題としての保健への注目度を高めようとしている。

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