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オリンピック中止の影響は世界中に波及することになるだろう

11 Mar 2020
東京都と東京2020オリンピック大会の公式ロゴ。(シャッターストック)
東京都と東京2020オリンピック大会の公式ロゴ。(シャッターストック)
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Updated 11 Mar 2020
11 Mar 2020

ステファン・ウェイド、グラハム・ダンバー

オリンピックの中止、または延期ないし無観客開催の影響は、現在7月24日の開幕式を危うくしているウイルスの拡大とまさに同じように、世界中津々浦々へと波及することになるだろう。

大会は予定通り行われると国際オリンピック委員会と現地の開催組織は言うが、時間は刻一刻と進んでいる。

東京大会の運命は、1万1,000人のオリンピック選手と4,400人のパラリンピックアスリート、コーチ、スポーツ関係者、地元開催組織、日本政府と国の士気、海外の放送局、ファン、世界のスポンサーに影響を及ぼす。これに加え、ホテルや航空会社、タクシー運転手も影響を受ける他、8万人の無償ボランティアも、一生に一度のチャンスを逃すことになる。

「オリンピックが中止になる可能性について耳にしましたが、それはまずいと思います」と、2度世界チャンピオンに輝いたレスリング選手で、リオデジャネイロ・オリンピックの銅メダリストのジェイデン・コックスが、AP通信に語った。「そのようなことが起これば、恐らくみんな絶望することになるでしょう」。

スイスに拠点を置く国際オリンピック委員会は、大会が中止されても経済的に最も影響が少ない当事者ではあるが、オリンピックのブランドは傷付くことになる。まだ判断には数ヶ月の期間があるものの、IOCは毅然としたメッセージを出し続けている。

5月末までに決まるのは想像できませんが、そうなるかもしれません」と、感染症学者でネブラスカ大学公衆衛生学部学部長のアリ・カーン博士が、AP通信にメールで語った。「とにかく、体調の悪い数多くのアスリートが、この面白い大会に出場できなくなるかもしれません」。

「スポーツイベントを含むその他の数多くの大規模イベントから我々が学んだのは、髄膜炎からジカ熱に至るまで、病気がこのようなイベントから世界中に非常に簡単に拡散してしまうということです」と、カーンは付け加えた。

「病原菌を抱えたアスリートや観客を迎え入れることに加えて、現在日本で流行している、あるいはその可能性がある病気もあります」。

感染症の専門家で日本政府の有識者委員会のメンバーである舘田一博は、ウイルスはすぐには消滅しないかもしれないと語った。

「温かい気候で消滅するインフルエンザとは違い、新型コロナウイルスに対する反応は半年か1年は続くだろうと、私は考えている」と、舘田が火曜日、放送局NHKに語った。

IOCは中止に備えて幅広い経済対策を用意しているが、中止になったのは、1896年に近代オリンピックが始まって以降、戦争の時だけだ。最新の年次報告書では、2022年の北京冬季オリンピックまでの運営経費を賄うことができる20億ドル近くの蓄えがあることが示されている。

IOCの年次報告書は、2016年のリオオリンピックの中止補償の保険料として1440万ドル近くを、また、韓国の平昌で行われた2018年冬季オリンピックを対象とした保険に1280万ドルを支払ったことを示している。

IOCのトーマス・バッハ会長は先週、理事会後に、東京大会の保険契約の掛け金が2000万ドル程度に引き上げられたのかどうか尋ねられた。

「わかりません」と彼は答えた。「それについては、理事会で協議していません」。

ハンブルグ大学でスポーツ経済学を教えているオリンピックのボート競技の金メダリスト、ヴォルフガング・メーニッヒは、損失を分かち合うよう提案した。

「保険会社はIOCの莫大な損失を払わなければなりません」と、メーニッヒはAP通信にメールで述べた。「残りはIOCが負担しなければなりません」。

IOCはオリンピックを管理し、幅広い行動を行える裁量を持っている。その補償については、2013年に東京都と日本オリンピック委員会との間で締結した開催都市契約第81ページに規定されている。契約の序文にはこう書かれている:「オリンピック競技大会は、IOCの独占的な財産であって、IOC はこれに関するすべての権利とデータ(特に、組織、運営、利用、放送、記録、表現、複製、アクセス、流布に関する、あらゆる形態、手法またはメカニズムのすべての権利)を、既存のものか将来開発されるものかを問わず、全世界を通して永続的にこれを所有する」。

契約は、「戦争状態、内乱、ボイコット」を理由として、「また IOCがその単独の裁量で、本大会参加者の安全が理由の如何を問わず深刻に脅かされると信じるに足る合理的な根拠がある場合」に、IOCが契約を終了し、開催都市の開催権を取り消すことができるとも定めている。

マサチューセッツ州ウースターにあるホーリークロス大学のスポーツ経済学者、ビクター・マシソンは、アスリートが最も影響を受けやすいと語った。オリンピックでは33のスポーツが種目に採用されており、比較的小規模な種目の多くでは、大会が始まるまで、ファンの数は限定的だ。

「アスリートにとって、そのキャリアは長くなく、多くのスポーツでは、オリンピックでの成功が金銭的なリターンを得られる1発勝負となります」と、マシソンはAP通信に語った。

マシソンは、ホテルやその他のサービス業の損失は補償の対象にはならないだろうと語った。会場などに対する莫大な政府支出は、リスクの高い投資のように思える。オリンピックの損失は、日本や東京都が勝ち得るはずだった、計算が難しい信用を打ち消すことになるだろう。

アイルランドのブックメーカーのオッズでは、オリンピックはこのまま前に進まない方向に僅かに傾いている。「7月24日に東京で開幕しない」と「それでも開幕する」のオッズは、4-6となった。

東京都はオリンピックの組織に126億ドルを公式に支出している。ただし、国の会計検査院は、金額は少なくともその2倍だとしている。現地の組織委員会の56億ドルの予算は民間資金で、残りは日本の納税者の税金だ。現地の運営予算の約10億ドルは、チケットの売上から賄われ、大会が無観客開催となった場合、これは入って来なくなる。

「IOC、放送局、保険会社のどこかが、大きい損失を被ることになるでしょう」と、マシソンは語った。「損失は、契約全体をどう定めるかによりますが、誰かの懐から生じることになります」。

マサチューセッツ州ノースハンプトンのスミス大学で経済学を教えるアンドリュー・ジンバリストは、14億3000万ドルの国立競技場など、会場の一部は、「永続的な価値」を得られるだろうと語った。

「しかし、実質的には、そのいずれも、優先度の高い公共投資のリストには載らなかっただろう」と、彼はAP通信へのメールで語り、大会が中止になった場合には、投資の大部分は「無駄」になると付け加えた。

IOCは、大会は予定通り開催されると繰り返し述べており、世界保健機関の助言を信頼しているとしている。国連の保健機関、WHOは、これまでのところ、危機を「パンデミック」と表現することは避けている。「パンデミック」になると、IOCは行動せざるを得なくなる可能性がある。しかし多くの専門家は、パンデミックの基準値には既に達しているとしている。

世界中で11万3,000人以上がこのウイルスに感染しており、近年のSARSやMERS、エボラの感染者数をはるかに上回っている。死者は4,000人を超えた。

ほとんどの人の場合、新型コロナウイルスでは軽い、あるは穏やかな症状しか出ない。一部の人、特に高齢者や持病がある人では、肺炎を含めより深刻な病気を生じさせる可能性がある。

ほとんどの人は、新型ウイルスから回復している。WHOによると、軽い症状のある人は約2週間で回復しているという。より重篤な症状の人の場合は、回復に3週間から6週間かかる場合があるという。ウイルスが最初に爆発的に拡散した中国本土では、8万人以上が感染していると診断され、これまでに6万3,000人以上が回復している。

直近4年間のオリンピックサイクル(2013年から2016年)のIOCの57億ドルの収益の約73%は、放送権の販売から来ている。アメリカのネットワーク、NBCは、少なくとも放送権料の支払いの半分を占めている。IOCの収益のさらに18%はスポンサーからだ。

NBCの親会社、Comcastは、保険や契約内容により、オリンピックが中止になってもNBCは損失を被らないことになっていると語った。しかし、Comcastのブライアン・ロバーツCEOは、会社は広告から得られる利益を失うことになると語り、この利益は2016年のリオオリンピックの場合は2億5000万ドルだったとしている。2020年の広告収入はこれより多くなることが見込まれる。

NBCは2014年から2020年までの4つのオリンピックで43億8000万ドルを支払う合意に署名した。2022年から2032年までの今後6つのオリンピックについて、77億5000万ドルを支払う新たな契約も結んでいる。.

スポーツや知的財産、メディアを専門としニューヨークに拠点を置くクリストファー・チェイス弁護士は、スポンサーや放送局は大会が開催されなかったり、条件が変更されたりしても、契約違反で訴えることはないだろうと述べた。

法律事務所フランクフルト・クルニットのパートナーを務めるチェイスは、このような契約の多くには、契約が満了とならないよう、予見不可能な状況について定めた「不可抗力」または「状況の変化」に関する条項があると語り、これらの条項は、いずれかの当事者、この場合は恐らく、イベント主催者による不履行の防衛策になるという。

IOCは、FIFAやNFLなどの他のブランドと同様、「一番避けたいのは、料金の返金や、スポンサー料の引き下げでしょう」と、チェイスはAP通信に語った。「一番やりたくないのは、返金や、請求額を引き下げることです。従って、一般的に試みることとしては、何らかの形の補償や代替利益の交渉をすることです」。

IOCの主要なスポンサー契約に加えて、地元スポンサーも組織委員会に30億ドル以上を既に支払っている。

「フライトやホテルの部屋など、人を現地に送るために既にお金を支払っている当事者は、損をする可能性が高いでしょう」と、チェイスは語った。「この人たちにとっては、スポンサー料などはどうでもいいことかもしれません」。

AP通信

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