
日本国憲法は3日で施行から73年。安倍晋三首相は2021年9月までの自民党総裁任期中の憲法改正を目指すが、新型コロナウイルスの感染拡大で社会・経済は「緊急事態」のまっただ中。静かな環境で与野党が話し合う雰囲気は乏しく、首相の目標実現はさらに険しさを増している。
「緊急時に国家や国民がどう役割を果たし、国難を乗り越えるか。そのことを憲法にどう位置付けるかは極めて重く大切な課題だ」。首相は4月7日、緊急事態宣言発令を事前報告した衆院議院運営委員会でこう語り、憲法への緊急事態条項創設を国会で議論する必要性を訴えた。
改憲派の民間団体が3日の憲法記念日に開催するオンライン集会にも、同様のビデオメッセージを寄せる。
首相は1月の施政方針演説で、与野党に改憲案の提示を呼び掛けた。その後、新型コロナの国内感染が深刻化。自民党はすかさず、「危機下での国会機能維持」を改憲の新たな論点に加えて野党に憲法審査会の開催を求めた。
例えば本会議を開催する場合、憲法は「総議員の3分の1以上の出席」が必要と規定しており、国会議員に感染が広がれば本会議開催の条件を満たせなくなる恐れもあるとの理由だ。
これに対し野党は、与野党の隔てなく新型コロナ対応に集中すべきだとの立場で、自民党の提案を拒否。憲法審は「不急」と位置付ける。国民民主党の玉木雄一郎代表も今月1日の記者会見で「新型コロナが落ち着いた静かな環境で進めていけばいい」と語った。
公明党も性急な議論に慎重だ。山口那津男代表は4月30日に「憲法の課題はしっかり落ち着いて議論することが重要だ」とくぎを刺した。
自民党内では6月17日までの今国会会期を大幅延長すべきだとの意見もあるが、あくまで新型コロナ対応が念頭にある。今国会で衆院憲法審は一度も開かれておらず、今後のめども立っていない。自民党幹部は「コロナで改憲機運はしぼんだ。首相の総裁任期中は難しい」と話す。
JIJI Press