
来年3月末で期限が切れる在日米軍駐留経費の日本側負担(思いやり予算)をめぐり、更新に向けた日米両政府の実務者協議が始まった。トランプ米大統領と良好な関係を築いた安倍晋三前首相は退陣し、トランプ氏も大統領選での苦戦が予想される。選挙後の交渉本格化を見据え、双方が互いの出方を探り合った。
協議は2021年度以降の5年分が対象。15~16日の2日間、テレビ会議形式で行われ、日米の外務・防衛当局者が出席した。日本側の発表によると、日米同盟に対する相互の貢献について意見交換し、具体的な交渉に向けて調整を進めることで一致した。
20年度の思いやり予算は全体で約1993億円。トランプ氏はかねて「日本は裕福な国にもかかわらず、米国が多額の金を払っている」と不満を示しており、日本政府内ではトランプ氏が再選すれば増額圧力が強まるとの警戒感もある。
しかし、日本側は「現在、在日米軍の駐留経費は適切に分担されている」(茂木敏充外相)として、さらなる増額は難しいとの立場。21年度予算案の編成作業も考慮し、現行の負担額を1年継続する暫定合意も視野に、米側の出方を探る方針だ。外務省幹部も「全ては11月3日(大統領選)以降だ」と語った。
これに対し、米側も菅義偉首相の対米姿勢を見極めるため、安易な妥協はしないとみられる。また米政権はこれまで日本のさらなる貢献を求めてきており、民主党のバイデン候補が大統領選で勝利した場合も、この傾向が変わる保証はない。防衛省幹部は「交渉が長引くほど要求が増え、雰囲気が悪くなる可能性もある」と懸念を示した。
JIJI Press