
菅義偉首相の所信表明演説に対する29日の各党代表質問は、28日に引き続き、日本学術会議をめぐる問題が大きなテーマとなった。野党は首相による会員候補の任命拒否が学問の自由を保障した憲法23条に抵触すると指摘。首相は、学術会議会員は国家公務員であり、憲法15条が定める公務員の選定罷免権は国民固有の権利と反論。双方が憲法の異なる規定を持ち出して主張を展開、議論はすれ違った。
共産党の志位和夫委員長は任命拒否に関し「憲法23条の学問の自由を侵害する。理由を明らかにしないままの任命拒否は個々の科学者に萎縮をもたらし、自由な研究の阻害となる」と批判した。
さらに、首相がこれまで15条を基に自らを正当化していることに触れ、「15条は公務員の最終的な選定罷免権が主権者の国民にあることを規定したもので、それをいかに具現化するかは国会で個別の法律で定められる」と指摘。「15条を持ち出して(任命拒否を)合理化するなど天につばするものだ」と訴えた。
参院本会議で立憲民主党の福山哲郎幹事長の代表質問に対して答弁する菅義偉首相=29日午前、国会内
参院本会議で立憲民主党の福山哲郎幹事長の代表質問に対して答弁する菅義偉首相=29日午前、国会内
これに対し首相は「会員らが個人として有する学問の自由、会議の職務の独立性を侵害することになるとは考えていない」と答え、23条に抵触していないと反論。また、志位氏の指摘を意に介さないかのように15条を引用し、「必ず推薦の通りに任命しなければならないわけではないという点は、政府として一貫した考え方だ」と強調した。
首相は「必ず推薦の通りに…」と同じ答えをさらに2度繰り返し、志位氏の質問だけで計6回、15条を使って答えた。
首相は立憲民主党の福山哲郎幹事長の質問にも同じように回答。代表質問後、志位氏は記者会見で「公務員の選定、罷免は首相固有の権利だと誤読している。『朕(ちん)は国家なり』を想起した」と皮肉った。
JIJI Press