
医薬品や電子機器の製造に必要な複雑な化学物質を作り出す方法を開発してノーベル賞を受賞した日本人化学者、根岸英一氏が85歳で死去した。所属するアメリカの大学が発表した。
根岸氏は6日、インディアナポリスで死去したとパデュー大学が発表し、家族が来年日本に埋葬する予定だと付け加えた。
満州で生まれた科学者の根岸氏は、名門東京大学を卒業し、日本の大手化学会社の帝人に勤務した後、1960年にフルブライト奨学金を得て渡米し、化学を学んだ。1979年にはパデュー大学の教授陣に加わった。
2010年には、デラウェア大学のリチャード・ヘック氏、北海道大学の鈴木章氏と共に、ノーベル化学賞を受賞した。
この3人の研究により、有機化学は「科学者たちが試験管の中ですばらしい化学的創造を行なう芸術的な表現形式といえるまでに進展した」と表彰状には綴られている。
ヘック氏は、1960年代に触媒を用いて炭素原子の結合を促進する基礎を築いた。
根岸氏は1977年にこれを上手く改良し、鈴木氏が処理を行う実用的な方法を発見したことでさらに一歩前進した。
根岸氏は3人の研究を、レゴブロックを積んで遊ぶことに例えた。
「我々は触媒を見つけ、複雑な有機化合物が他の化合物と実質的にかみ合って、より経済的かつ効率的に希望する素材を作れるような反応を生み出した」と、大学の声明は根岸氏の発言を引用した。
「レゴは組み合わせて、あらゆる形、サイズ、色のものを作ることができるが、我々の反応はこれを有機化合物でも可能にするものだ」。
パデュー大学によると、彼らの研究は、DNAの配列化に不可欠な蛍光マーキングから、農作物を菌類から守る農薬、薄型LEDディスプレイの材料に至るまで、幅広く使われているという。
「科学者として、また人間として人々の生活に変化をもたらした、偉大で優しい人を世界は失った」と、バデュー大学のミッチ・ダニエルズ学長は語った。
「我々は根岸博士の死去を悲しんでいるが、世界を変える発見をし、パデュー大学の教授として周囲の人々の人生に触れ、影響を与えたことに感謝する」。
AFP通信