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安倍元首相殺害の容疑者「母親の信仰で人生狂った」

11月下旬まで精神鑑定のために勾留されている山上氏は、以前からソーシャルメディア上で旧統一教会に対する憎悪を表明していた。(AFP)
11月下旬まで精神鑑定のために勾留されている山上氏は、以前からソーシャルメディア上で旧統一教会に対する憎悪を表明していた。(AFP)
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26 Aug 2022 05:08:49 GMT9
26 Aug 2022 05:08:49 GMT9

東京:安倍晋三元首相が自作の銃で白昼堂々襲撃された事件は、政治に対する大きな暴力事件に馴染みのない日本国民に衝撃を与えた。

しかし襲撃事件から数週間、容疑者に関する詳細が明るみになるにつれ、新たな驚きの事実が発覚した。以前は裕福だった山上容疑者は、論争の的となっている旧統一教会に母親が多額の寄付をしたため、貧しい生活を強いられ、ネグレクトを受け、恨みを募らせるようになったというのだ。

日本人の中には、41歳の山上容疑者に理解や共感さえ示している人もいる。特に、30年にわたる経済の停滞と社会の混乱の中で自分たちが受けた苦しみと結びつけ、悲痛を感じている同年代の人々は、そう感じているのだろう。

ソーシャルメディア上では、山上徹也容疑者の留置場に、彼を励ますために差し入れを送るべきだという意見も出ている。また、7,000人以上の人々が山上容疑者への減刑署名に賛同した。山上容疑者は、日本で最も強力かつ対立を生んだ政治家の一人である安倍元首相を殺したのは、ある宗教団体(名前は明かさなかったが、旧統一教会であると広く信じられている)が理由であると語った。

専門家によれば、この事件は、虐待やネグレクトに直面している他の何千人もの信者の子どもたちの窮状も明るみにしたという。

「もし山上容疑者が襲撃を実行しなかったとしたら、彼は多くの同情を集めていたことでしょう」と立正大学の心理学教授でカルト研究の専門家である西田公昭氏は話、親の信仰のせいで「他にも苦しんでいる人がたくさんいます」と述べた。

木曜日、警察庁長官が安倍首相襲撃の責任を取って辞表を提出した。

11月下旬まで精神鑑定のため勾留されている山上氏は、以前SNSで旧統一教会に対する憎悪を表明していた。旧統一教会は1954年に韓国で設立され、1980年代以降、信者を巧妙に勧誘し洗脳し、多額の献金をさせているとの批判にさらされてきた。

AP通信が確認した手紙と彼のものと思われるツイートの中で山上容疑者は、母親が多額の寄付をしたために、家族と自身の人生が教会によって崩壊したと述べている。警察は、山上容疑者のワンルームマンションから押収されたパソコンから、彼の手紙の下書きが見つかったことを明らかにした。

「母が(1990年代に)入信した後、私の10代はすべて過ぎ去り、約1億円(73万5,000ドル)が無駄になりました」と、彼はパソコンでタイプした手紙に記した。この手紙は、7月8日に奈良で選挙演説中に安倍元首相を襲撃したとされる前日に、西日本に住むブロガーに送ったものである。「その間の経験は私の一生を歪ませ続けたと言って過言ではありません」

山上容疑者の祖父が創業した会社の役員だった父親が自殺したのは、彼が4歳の時だった。母親は統一教会に入信後、多額の献金をするようになり、一家は破産、山上容疑者の大学進学の希望も打ち砕かれた。その後、兄も自殺。海軍に3年間勤務し、直近では工場で働いていた。

山上容疑者の叔父はメディアのインタビューで、彼の母親は入信後数カ月で6,000万円(44万ドル)を寄付したと話した。1990年代後半に父親が亡くなると、彼女は4,000万円(29万3,000ドル)相当の会社の財産を売却し、2002年に一家は破産した。叔父の話では、子どもにお金使うのではなく、教会に献金することを母親が選んだため、山上家の子どもたちは食費や学費をもらうことができなくなったという。

2005年に山上容疑者が自殺を図った時も、母親は旧統一教会が創設された韓国への旅行から帰ってこなかったと叔父は言った。

山上容疑者の母親は、「息子の犯罪容疑のことで教会に迷惑をかけたことを申し訳なく思っている」と検察に打ち明けたと伝えられている。山上容疑者の叔父は、母親は滅入っているように見えたが、教会は脱退していなかったと語った。教会当局と地元の弁護士会はコメントを拒否している。山上容疑者、母親、叔父、そして彼らの弁護士に何度も連絡を取ろうとしたが、繋がらなかった。

2019年10月から「silent hill 333」のアカウント名でツイートしていたとされる山上容疑者は、教会や自身の辛い過去、政治問題について書き込んでいた。

2019年12月には、祖父が一家のトラブルを山上容疑者の母親のせいにし、殺そうとまでしたとツイートしている。「最も絶望的なのは、祖父が正しかったということだ。でも、私は母を信じたかった」

山上容疑者の事件が人々の共感を得た理由の一つは、彼が日本のメディアが「失われた世代」と呼ぶ、低賃金の契約社員から抜け出せない世代の一員であることである。彼が高校を卒業した1999年は、1980年代のバブル経済崩壊後の「就職氷河期」であった。

世界第3位の経済大国でありながら、日本は30年に及ぶ経済の混乱と格差社会に直面し、この時代に育った人々の多くが未婚で、不安定な仕事と孤独感や不安感から抜け出せないでいる。

2008年の東京・秋葉原電気街での大量殺傷事件や2016年の京都アニメーションへの放火致死事件など、近年話題になった犯罪には、家庭や職歴に問題を抱えた「失われた世代」の犯人が関わっていると報じられている。

今回の事件は、旧統一教会の信者の子どもたちにも光を当てることとなった。専門家によれば、多くは放置され、政府や学校関係者が信教の自由を理由に干渉することに抵抗を示す傾向があるため、ほとんど援助が行われていないという。

新潟青陵大学社会心理学教授でカルト専門家の碓井真史教授は、「過去数十年間のうちに、社会がこの問題にもっと注意を向けていれば、(山上容疑者による)襲撃は防げたかもしれません」と語った。

強制的に入信させられたという「二世」信者の法的保護を求める署名には、5万5千人以上が参加している。

安倍首相は2021年9月のビデオメッセージで、教会による、朝鮮半島の平和のための活動や家族の価値観に焦点を当てた活動を賞賛した。彼のビデオ出演が山上容疑者の犯行のきっかけになった可能性があると、心理学教授の西田氏は述べた。

山上容疑者は警察に対し、2012年の文氏の死後、教会を率いている教祖の夫人、韓鶴子氏を殺害する計画を立てていたが、このパンデミックの中彼女が日本を訪れる可能性は低いため、ターゲットを変更したと語ったという。

「苦々しくは思っていましたが、安倍は私の真の敵ではありません。あくまで最も影響力のある統一教会のシンパの一人に過ぎません」と山上容疑者は手紙に書いている。「安倍の死がもたらす政治的意味、結果、最早それを考える余裕は私にはありません」

この事件は、1964年に来日した旧統一教会と、第二次世界大戦後の日本をほぼ一貫して支配してきた自民党政権との結びつきが注目されるきっかけとなった。

政権与党の青山繁晴議員は先月、党の派閥リーダーから、「教会の票が、いかに組織の後ろ盾を持たない候補者の助けになるか」について聞いたと語った。

教会の日本支部長である田中朋弘氏は、特定の政党への「政治的干渉」を否定したが、反共産主義の姿勢を共有しているため、教会は他の政党の議員に比べてより密接な関係を築いてきたと述べた。

教会との金銭的なトラブルを抱える人々に数十年にわたり法的支援を行ってきた「全国霊感商法対策弁護士連絡会」のメンバーによると、総額1,200億円(9億ドル)を超える金銭の損失に関する苦情が3万4,000件寄せられているという。

田中氏は、弁護士やマスコミが教団信者を「迫害」していると非難した。

40代の元信者は最近の記者会見で、高校生の時に母親が信者になり、自分と2人の姉妹が強制的に入信させられたと語った。

教会が手配した2度の結婚に失敗した後、「マインドコントロール」から覚め、2013年に帰国したという。

「旧統一教会に人生を狂わされた」被害者2世として、「彼(山上容疑者)のしたことは間違っていたが、痛みは理解できる」と語った。

AP

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