
カイロ:国際刑事裁判所(ICC)の主任検察官は29日、ガザ地区への人道支援物資の搬入を妨害することは犯罪にあたる可能性があると警告した。
カリム・カーン主任検察官はカイロで記者団に対し、「ジュネーヴ諸条約で規定されている、支援物資の輸送を妨害する行為は、ICCが管轄権を有する犯罪にあたる可能性がある」と語った。
この発言は、エジプトのラファ検問所を訪問後になされたものだ。同検察官は、切実に必要とされている物資を満載したトラックが同検問所で立ち往生しており、ガザ地区に入ることができていないと述べた。
「人道支援物資を満載したトラックがエジプトのラファで止められているのを見た。物資を必要としている人々がいるのはそこではないのに」
「これらの物資をガザ地区の民間人に遅滞なく届けなければならない」
ラファ検問所は、世界からの支援物資をガザ地区に搬入するために現在使用できる唯一の入り口である。ハマス支配下の同地区は、ほぼ完全な包囲とイスラエルによる容赦ない空爆に直面している。
イスラエル当局によると、10月7日にハマス戦闘員らが行った越境攻撃により1400人(その大半は民間人)が殺害され、230人が人質に取られた。イスラエルはそれを受け、ガザ地区を包囲し大規模な空爆を開始した。
ハマス傘下のガザ保健省によると、それ以降のイスラエルの空爆による死者は8000人以上に上り、その半数が子供である。
10月21日にラファ検問所からの限定的な支援物資搬入が再開されて以降、合計117台のトラックがガザ地区に入った。
包囲以前は、支援物資などを積んだトラックが1日約500台入っていた。
カーン検察官は、「(ガザ地区の)民間人が基本的な食料や医薬品を受け取れるよう、これ以上引き延ばすことなく目に見える努力を行う必要があることを、イスラエルに対し明確に強調」したいと述べた。
国連は29日、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)が運営する食料支援施設が略奪に遭ったことを受け、治安の崩壊を危惧していると警鐘を鳴らした。
国連のアントニオ・グテーレス事務総長は、死傷者が増加し、食料、水、医薬品、シェルターなどの必要不可欠な物資が減少していく中で、状況は「刻一刻と絶望的になっている」と訴えた。
カーン検察官は、ICCは、「パレスチナ自治区に対し行われている犯罪、そしてイスラエルによるものかパレスチナによるものか、あるいはパレスチナに対して行われているかパレスチナからイスラエルに対して行われているかを問わず、あらゆる犯罪」に対する調査を続けていると述べた。
「それには、ガザ地区で現在起こっていることも含まれる。ヨルダン川西岸地区で現在起こっていることもだ」
また、イスラエルが1967年以降占領しているヨルダン川西岸地区において「入植者がパレスチナ民間人を襲撃する事件の報告件数が急増していることも非常に懸念している」と語った。
続けて、人質を取る行為はジュネーヴ諸条約違反であることについても強調した。
「イスラエルから連れ去られた人質全員を即時解放し、家族のもとに無事に返すよう求める」
さらに、次のように述べた。「イスラエルには、ハマスとの戦争に関連して、(紛争に関する法を遵守する)明確な義務がある。道徳的な義務だけでなく法的な義務もだ」
「これらの原則はハマスにも等しく適用される。イスラエルに対する無差別なロケット弾発射に関連してだ」
2002年に設立されたICCは、ジェノサイド、戦争犯罪、人道に対する罪を含む世界の最も重い犯罪を調査する唯一の国際独立法廷である。
パレスチナは2015年、ICC設立に関するローマ規程に加盟した。
同規程を批准していないイスラエルは、ICCによる調査への協力や、その管轄権の承認を拒否している。
AFP