




カイロ/ガザ:12日、イスラエルの戦車と戦闘機によるガザ地区への爆撃により、数十人のパレスチナ人が死亡した。米国のジョー・バイデン大統領はイスラエルに対し、過激派組織ハマスとの紛争における民間人への「無差別」爆撃により、世界からの支持を失いつつあると警告した。
紛争が3カ月目に入ったことに世界が懸念を深める中、オーストラリア、カナダ、ニュージーランドが、持続可能な停戦に向けた国際的な努力を支持すると発表し、ガザ地区の民間人の窮状に警鐘を鳴らした。
国連では、193カ国からなる国連総会が停戦を求める決議案の採決に向け準備しており、外交官らは可決される見通しだと述べていた。米国は先週、15カ国からなる安全保障理事会で同様の呼びかけに拒否権を行使した。
バイデン氏は、イスラエルは現在、米国や欧州連合を含む「世界の大半」から支持されていると述べた。「しかし、無差別爆撃によってイスラエルはその支持を失いつつある」と、ワシントンでの選挙資金集めのイベントで語った。
ガザ保健当局によると、ハマスの殲滅を目的としたイスラエルによるガザへの攻撃により、10月7日以降、少なくとも1万8205人のパレスチナ人が死亡し、5万人近くが負傷した。瓦礫の下や救急車がたどりつくことができない場所で亡くなった、さらに多くの死亡者は、この数字には入っていない。
10月7日にイスラエル南部で1200人が死亡し、240人が人質になったハマスの戦闘員による越境襲撃に応戦する形で、イスラエルの猛攻が開始された。
ガザ南部の主要都市ハーン・ユーニスの住民の話によると、12日、イスラエル軍の戦車砲撃が、市内中心部に集中しているという。ある住民は、12日の朝、ハマス指導者ヤヒヤ・アル・シンワール氏のガザ地区の自宅がある通りで、戦車が活動していたと話した。
高齢のパレスチナ人タウフィク・アブ・ブレイカさんは12日、自身が暮らすハーン・ユーニスの住宅街が警告もなく、イスラエル軍による空爆を受けて、いくつかの建物が倒壊し犠牲者が出たと語った。
「世界の良心は死んでしまった。人間性もいかなる道徳心も」。近隣住民が一帯の瓦礫を調べる中、ブレイカさんはロイターに対し語った。「私たちが死と破壊に直面し続ける日々が3カ月目に入りました。これは民族浄化で、ガザの全住民を立ち退かせるためにガザ地区を完全に破壊しているのです」
エジプトと国境を接する、さらに南のラファでは、ガザ保健当局によると、イスラエルによる住宅への夜通しの空爆で、子どもを含む22人が死亡した。民間の救急隊員が瓦礫の下に残されている、さらに多くの犠牲者を探していた。
イスラエル軍が今月、住民に対して安全な避難先として指定していたラファだが、住民によると、今回の空爆はここ数日で最も激しいもののひとつだったという。
「夜は爆撃のせいで眠れません。朝になって子どもたちの食べ物を探して街を歩き回りますが、食べ物はありません」。6人の子どもの父親であるアブ・ハリルさん(40)はこう語った。
ガザ住民は生き延びるために、飢えと渇きと闘っていると、ラファで瓦礫の中を調べていた住民のムハンマド・オバイドさんが語った。「電気も燃料も水も薬もありません」
ガザ保健当局は、下痢、食中毒、髄膜炎、呼吸器感染、水痘、疥癬などの病気が広まっていると発表した。
停戦はハマスを有利にするだけというイスラエルの見方に、米国も理解を示している。しかしバイデン氏は、イスラエルが世界からの支持を失い始めていると警告したのに加えて、ネタニヤフ首相は強硬路線の政権を変える必要があると述べた。
オーストラリア、カナダ、ニュージーランドの各首脳は共同声明の中で、ガザ地区の市民のための安全な空間が失われつつあることに警鐘を鳴らした。
「ハマス打倒の代償として、パレスチナのすべての民間人が苦しみ続けねばならないなどあり得ない」
ロケット弾の発射
イスラエル軍の発表によると、昨日はガザ地区でロケット弾発射のために使用された複数の基地を攻撃してハマスの敷地を急襲した。そこにあった兵器の中から約250発のロケット弾を発見し、兵器生産工場を攻撃したという。
ガザ北部で始まった地上攻撃は、12月初めに1週間の停戦が崩壊して以降、ガザ地区の南半分にまで拡大した。ガザでは10月下旬に地上侵攻が始まって以来、100人以上のイスラエル兵が殺害された。
ガザ保健当局のアシュラフ・アルキドラ報道官は、イスラエル軍が12日にガザ北部のカマル・アドワン病院を襲撃し、病院長のアフマド・アル・カフルート医師と女性スタッフを含む医療スタッフ全員を拘束したと発表した。
同報道官によると、彼らは救急部門内で脅されながら尋問されていたという。イスラエル軍はこの件についてコメントを求められたが応じなかった。
医療関係者によると、ラファの住宅への空爆で数人が死亡し、ハーン・ユーニス中心部近くの建物への空爆でもパレスチナ人1人が死亡した。
飢餓状態が深刻化している。国連世界食糧計画によると、イスラエルが食料、医薬品、燃料の供給を遮断しているため、ガザ住民の半数が飢餓状態にあるという。
国連人道問題調整事務所(OCHA)は12日、ラファ一帯では限られた援助物資の配布が行われていたが、「残りのガザ地区では、戦闘の激化と主要道路沿いの移動制限のために、ここ数日、援助物資の配布がほとんど停止している」と発表した。
国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)は、イスラエルがガザ地区をほぼ全面的に包囲し、「半数が子どもである200万人以上に対し、集団的懲罰を科している」と発表した。
パレスチナ外相はイスラエルに対し、飢餓状態を戦争の兵器として利用していると非難したが、イスラエル当局者はこの非難を「非常識で不愉快」として退けた。
ロイター