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イランとアフガニスタンの国境での緊張により紛争拡大のリスクが顕在化

警備にあたるタリバンの戦闘員たち。アフガニスタンとイランの国境にあるザランジ検問所の入口ゲート。(ファイル/AFP)
警備にあたるタリバンの戦闘員たち。アフガニスタンとイランの国境にあるザランジ検問所の入口ゲート。(ファイル/AFP)
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17 Jun 2023 10:06:04 GMT9
17 Jun 2023 10:06:04 GMT9
  • 専門家:「ここではある意味、イランやタリバンの行動よりも気候変動の方がずっと大きな真の要因となっている」

アリ・ユネス

ワシントン:最近イランとアフガニスタンのタリバン政権との間で国境地域での緊張が高まっている結果、双方それぞれで数人の軍人が死亡しており、両国間に歴史的にも近年にも存在する深い亀裂が顕在化している。

両国政府は迅速に緊張を鎮めるための措置を取ったものの、諸国家間での戦争あるいはより広範な紛争のリスクは依然としてあり得る。アラブニュースが16日に出席したワシントンの中東研究所(MEI)主催のセッションで講演した専門家らはそう指摘する。

根深い障害や緊張要因が存在し、それが今後強まったり弱まったりする可能性があるという。

その緊張要因とは、両国間の国境画定、アフガニスタンからイランに注ぐヘルマンド川から流れる水、イランがタリバン政権を正式に承認していないこと、タリバンの反イラン的姿勢などだ。

両国の情勢に詳しいMEI在外上級研究員のファテメ・アマン氏は、「イランはタリバンとの関係を断ったことは一度もない」としたうえで、イランは米国によるアフガニスタンの軍事占領の期間中、地域において自国の影響力を拡大し米国のプレゼンスに対抗するための試みとしてタリバンに武器支援を行っていたと指摘する。

「イランの対アフガニスタン政策は、1979年のイラン革命以降のどの政権においても変わっていない」

アマン氏は、水の流れに関する問題は存在するものの、イランはアフガニスタンとの間に紛争が起これば勝利は容易ではないことを認識していると主張する。

もし何らかの軍事紛争が発生した場合、地域の「妨害者ら」もイランに対抗する方法を見つけるだろうと同氏は言う。

アトランティック・カウンシル在外上級研究員のニロファル・サキ氏は、イランはアフガニスタンにおいて3つの戦略的・テーマ的関心事を持っていると指摘する。経済的拡大、安全保障、シーア派とスンニ派の分断である。

同氏によると、イランはアフガニスタンが中央アジア市場へのコネクターに、そして自国の商品の市場になることを望んでおり、アフガニスタンの暴力や情勢不安が国境の自国側に波及することは避けたいと思っている。

サキ氏は、イランにはタリバンの内部構造に対する影響力と理解が不足しており、その深層の力学に関しては基本的に洞察できていないと指摘する。

しかしイランの政策立案者らは、タリバンに関与することが最も自国の利益に適うことであり、そうすることで地域において取り残されずに済むと考えていると、同氏は主張する。

今回のセッションの司会者で、MEIのイラン・プログラムのディレクターを務めるアレックス・バタンカ氏は、イランは国境を接する国であり長年不安定な状態にあるアフガニスタンへの対応を基本的に怠ってきたと言う。

「イランはもっとエネルギーを使ってアフガニスタンで起こっていることを理解した方がいいのではないかと思うだろうが、彼らはアラブ世界の別の場所で忙しいのだ」

タリバンは世界に対して自分たちが良き隣人になれることを示すために、また国際社会からの承認や財政支援を得るために、緊張を鎮めたいと思っていると同氏は指摘する。

米平和研究所のアフガニスタン上級専門家であるアンドリュー・ワトキンス氏は、現政権以前から存在する水問題は季節的な問題だと指摘する。タリバンはイランへの水の流れを冬には増やして夏には減らしているからだ。

「ここではある意味、イランやタリバンの行動よりも気候変動の方がずっと大きな真の要因となっている」

イランとアフガニスタンはこの問題に対処するため、1973年にヘルマンド川水利協定を結んだ。これは現在でも、アフガニスタン領内からイランへの水の割り当てを具体的に定めた唯一の協定だ。

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