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イスラエルによる戦争調査の効果は? そして、それは誰のために行われるのか

2024年1月8日、イスラエル軍主催のメディアツアーで撮影された写真。ガザ地区中央部のアル・ブレイジ地区で活動する部隊の様子。(AFP)
2024年1月8日、イスラエル軍主催のメディアツアーで撮影された写真。ガザ地区中央部のアル・ブレイジ地区で活動する部隊の様子。(AFP)
ガザでの調査範囲が限定的であるにもかかわらず、人道支援機関は軍による説明責任の追及を歓迎している。(AP)
ガザでの調査範囲が限定的であるにもかかわらず、人道支援機関は軍による説明責任の追及を歓迎している。(AP)
ガザでの調査範囲が限定的であるにもかかわらず、人道支援機関は軍による説明責任の追及を歓迎している。(AP)
ガザでの調査範囲が限定的であるにもかかわらず、人道支援機関は軍による説明責任の追及を歓迎している。(AP)
ガザでの調査範囲が限定的であるにもかかわらず、人道支援機関は軍による説明責任の追及を歓迎している。(AP)
ガザでの調査範囲が限定的であるにもかかわらず、人道支援機関は軍による説明責任の追及を歓迎している。(AP)
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22 Jan 2024 02:01:50 GMT9
22 Jan 2024 02:01:50 GMT9
  • イスラエル国防軍は10月7日に至る諜報・安全保障の失敗の調査を発表し、同国のエリートたちの間に深い溝があることを露呈した。
  • 法律専門家によれば、このような調査はイスラエルの悪評を一掃することが目的であり、ほとんど結果をもたらさないという。

アレックス・ホワイトマン

ロンドン:ここ最近、イスラエル指導者間の緊張が表面化している。イスラエル国防軍(IDF)が、10月7日のハマス襲撃を防げなかった、諜報・安全保障の失敗に関する調査を進めることを発表したためだ。

この決定は、ガザでの戦争が続いている間はこのような調査は行わないとした、イスラエルの政界と軍部のエリートたちのこれまでの統一見解とは大きく異なるものだ。

とはいえ、この調査は紛争による民間人の死者数を対象にしたものではなく、あるIDF報道官の言葉を借りれば、「我々の部隊の死傷者を最小限に抑える」方法を決定するためのものである。

2023年12月31日、ヨルダン川西岸地区ナブルス近郊のアスカル難民キャンプで、イスラエル治安部隊が軍事突入に備える。(AP)

人権団体「Law for Palestine」の理事会メンバーであり弁護士のハッサン・ベン・イムラン氏は、IDFの調査が、ガザにおけるパレスチナ人の死者数に焦点を当てないことに驚きはないと述べた。ハマスが運営するガザの保健省によれば、紛争による死者数は2万4000人を超えている。

「イスラエルの調査や裁判において、パレスチナ人の犠牲者について実際にその責任が追求された事例を私は聞いたことがない」とイムラン氏はアラブニュースに語った。

それにもかかわらず、イスラエル軍ヘルツィ・ハレヴィ参謀総長による調査の開始は、閣僚や軍関係者の間に分裂が生じさせている。特にベンヤミン・ネタニヤフ連立政権のメンバーは、イスラエル軍が自ら調査することに頭を痛めている。

2023年10月、イスラエル国防軍(IDF)によるガザ攻撃の初期にガザの最前線を訪れたベンヤミン・ネタニヤフ首相。(AP)

調査の範囲が限定的であるにもかかわらず、人道支援機関は軍による説明責任の追及を歓迎している。

「オックスファムはもちろん、加害者が誰であれ、すべての大量虐殺犯罪と人権侵害を調査し、対処しようとすべての努力を支持する」と同NGPの広報担当者はアラブニュースに語った。

この調査は、10月7日のテロ発生後に組閣された戦時内閣のメンバーであるベニー・ガンツ氏を含む、ネタニヤフ首相の政敵からも支持を得ている。

かつてイスラエル軍を統率していたガンツ氏は、1月4日の安全保障内閣会議で調査に関する衝突が発生した後、調査への批判を「戦時下における政治的動機による攻撃」と表現し、これほど稚拙な行動は見たことがないと付け加えた。

この調査は、パレスチナ武装勢力ハマスによる前例のない10月7日の襲撃を受けた後、イスラエルがガザに対して開始した軍事作戦の中で、軍が行う2度目のものとなる。この襲撃では約1200人が殺害され、240人が人質として拉致された。

最初の調査では、イスラエル軍がハマスの捕虜から逃れた3人の人質を誤って殺害した事件に焦点が当てられた。彼らはヘブライ語で「SOS」と書かれた白旗を振り、武装していないことを示すために下着以外のすべてを脱ぎ捨てていた。

ジュネーブ大学の国際法教授マルコ・サッソリ氏は、人質の死に関する調査がいかに迅速に行われ、結論づけられたかについて述べた。

「IDFがイスラエル人の人質を殺害した際、彼らは直ちに調査の実施を発表し、その結果も同様の速さで発表した」とサッソリ教授はアラブニュースに語った。実際、12月18日の死亡に関する調査報告は1週間も経たない12月21日に発表された。

「しかし、私たちはIDFが多くのパレスチナ人を殺害していることを知っている。その中には降伏し、適切な対応を受けるべきハマスの戦闘員も含まれる。これらの殺害は戦争法に違反するものだ」

アロン・シャムリズ氏(左)、サメル・アル・タラルカ氏(中央)、ヨタム・ハイム氏は、自分たちが人質であることを訴えていたにもかかわらず、イスラエル兵に殺害された。(AP/ファイル)

イムラン、サッソリ両氏にとって、諜報の失敗に関する今回の調査の焦点が限定的であることは、イスラエル軍、政府、司法制度が自軍の行動と戦争遂行を検証することに消極的であることを反映している。

この消極性は多くの政府に共通するものであるとサッソリ氏は述べ、米国、英国、ロシアが戦時中に自国の軍隊による不正行為の疑惑を即座に調査しなかったことを例に挙げた。

「イスラエルの戦争を振り返ってみると、軍人、指揮官、政治家が、国際人道法に違反する行為を扇動していたことに対して責任追及がなされた事例を見つけるのは難しい。しかし同様に、米国に目を向ければ、グアンタナモ湾の説明責任はどこにあるのだろうか?」と彼は述べた。

「国際人道法のもとでは、戦争犯罪を調査する義務がある。戦争におけるすべての行為ではなく、戦争犯罪が発生したと思われる事例を調査する義務があるのだ」

パレスチナ人弁護士ハッサン・ベン・イムラン氏は、IDFの調査が、ガザにおけるパレスチナ人の死者数に焦点を当てないことに驚きはないと述べた。(AP)

義務があろうがなかろうが、少なくとも当面は、このような調査を開始しようという意欲はイスラエルにはほとんどないようだ。しかしイムラン氏は、イスラエル人がパレスチナ人に対して行った行為を調査した以前の事例を挙げ、それはあまり重要でないと述べた。

「イスラエルは、『良い警官/悪い警官』のメソッドを使って司法制度を利用する傾向がある」と彼は述べた。

「基本的に、裁判所とその審問はある目的のために存在する。その目的とは、イスラエルの悪評を一掃することだ。ダワブシェ一家を殺害し、生後18カ月の息子を生きたまま焼き殺したイスラエル人入植者の事件がある」

この事件では、放火犯の1人が終身刑に、襲撃時に未成年だったもう1人は42月の刑を受けた。

イムラン氏は、この事件でさえも、捜査は「真剣」なものではなく、むしろ国際舞台でイスラエル政府の見栄えをよくするための政策決定であったと述べた。

「そして、イスラエルの印象操作のより最近の例もある。例えば、高等裁判所がジェノサイドへの扇動を犯罪化したことだ」と彼は述べた。

ジュネーブ大学の国際法教授マルコ・サッソリ氏は、諜報の失敗に関する今回の調査の焦点が限定的であることは、イスラエル軍、政府、司法制度が自軍の行動と戦争遂行を検証することに消極的であることを反映していると言う。(AFP)

「しかし、イスラエルのあらゆる層からのジェノサイド(大量虐殺)行為や発言が95日間続いた後にようやく行われたのであり、さらに南アフリカが国際司法裁判所でイスラエルに対する申し立てを行った後のことでもある」

「これらはすべて、政府の弁護チームが裁判所で主張することを支持するために行われるものだ」

ニュージャージー州ラトガース大学ジェノサイド・人権研究センターのアレクサンダー・ヒントン所長は、このような調査がもたらす無力感を理解している。

「このような調査は常に政治的なものであり、時にはほとんど結果をもたらさないように見えるが、重要なことだ。調査には抑止効果がある。また事実を明らかにし、過失を立証し、時には説明責任を果たし、裁判にまで発展させることができるのだ」と、彼はアラブニュースに語った。

「そして、その可能性はネタニヤフ政権の右派メンバーにとって不安なものになる」

サッソリ氏も同様に、紛争に関する今後の調査の利点について悲観的ではない。

2023年12月29日、ガザ地区南部のラファで、イスラエル軍の攻撃後に破壊された建物のがれきの上に座るパレスチナ人の少年。(AP)

彼は、軍事調査が犠牲者の救済になるとは考えていないが、それでも、将来の変化をもたらすその可能性に「希望を失わない」ことが重要だと考えている。ただし、これを実現するためには、その範囲を広げる必要があると認識している。

「これは軍事的な調査全般に言えることだが、イスラエル・パレスチナに関しては、その文脈が鍵となる」

「学術的、人道的見地からすれば、真の調査とは、封鎖や入植地、そしておそらくはメディア環境を通じてイスラエル国民に与えられている、視点の欠如に関連する問題を扱うものとなるだろう」

そのような範囲が対象にならないとしても、サッソリ氏はこのような調査がイスラエルの政治指導者に対する一種の圧力になると主張し、重要視している。

このような圧力が、地上で進行中の作戦に違いをもたらすかどうかという問いに対して、彼は「答えるのが難しい質問」であることを認めた。もし半年前に聞かれていたなら、肯定的に答えただろうと彼は述べた。

2024年1月7日、ガザ地区のラファでイスラエル軍の空爆により死亡したとされるアルジャジーラ・テレビ・ネットワークのジャーナリスト、ワエル・アル・ダフドウ氏の遺体を悼む親族たち。イスラエル軍の戦争行為について調査が求められている。(AFP)

「しかし現在、私たちが見ているのは、テロとの戦いにおける米国の反応と似たものだ。政治家は基本的に『容赦ない』アプローチを強制している」とサッソリ氏は言い、2001年9月11日のワシントンとニューヨークへの同時多発テロ後の、強化された尋問技術の行使や特例拘置引き渡しを指摘した。

「ある意味で、これを理解することは非常に重要だと思う。再び米国を例に取ると、米国軍は(ドナルド・ラムズフェルド元国防長官によって推奨された)拷問の行使に強く抵抗していた。軍がそのような技術を受け入れたのは、大きな政治的圧力を通じてのみだったのだ」

「私の推測では、ガザから聞こえてくる主張によれば、IDFの国際法違反は政治的圧力の結果である。問題なのは、政治家と一部の軍法務官なのだ」

もしそうだとすれば、イスラエルの新たな政治家のグループが、ガザとヨルダン川西岸地区におけるパレスチナ人に対する軍の扱いを具体的に変えるような調査を開始することに前向きになっているかもしれない。

そのような変化は間近に迫っている可能性がある。ガンツ氏はネタニヤフ陣営内の絶え間ない政治的駆け引きに嫌気がさしているとの報道もある。

イスラエルの戦時内閣のメンバーであり、かつて軍を統率していたベニー・ガンツ氏にとって、調査への批判は「戦時下における政治的動機による攻撃」だった。(プール/AFP)

ガンツ氏の、連立パートナーへの軽蔑の感情は、現職首相の原動力が、パレスチナとの紛争を解決することよりも、戦争の引き金となったハマスの攻撃の責任を免れることにあるという、広く信じられている考えから生じているようだ。

しかしイムラン氏は、現在または将来のどの政権も、パレスチナ人に利益をもたらす実行可能な調査を開始することには懐疑的である。

イスラエル政府は、パレスチナ人が「国内的に、あるいは国際的に問題になったとき」だけ、彼らを気にかけるのだと彼は言う。

「例えばオスロ合意は、第一次インティファーダの後にのみ成立した。交渉の必要性を感じたからだ。自分たちを守るためだった。イスラエル政府は完全に自己中心的だ」

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