
Najia Houssari
ベイルート:レバノンでは、首都郊外の一般市場が再開され、マスクを着けた人々が行き交うなか、3月にコロナウイルス感染症の発生のために課された厳しい制限の解除が予定されている。
土曜日、4人のCOVID-19の新規感染者が厚生省により記録されて、3月26日以来感染者の数は合計で733人に増えた。死亡数は25人。
解雇やビジネスの閉鎖が続いて、政府が国内金融危機の解決をIMFに頼るなか、経済的懸念がパンデミックへの恐怖に勝っているようだ。
レバノンの都市サイダのある市場取引業者は、生活環境が恐ろしいほどに悪化したと述べる。「ラマダンの最中で断食明けの祭りイードを控えているというのに、物価が2倍になり、人々は買い控え、購入は必需品に限定されている」とArab Newsに語った。
人気のある観光名所や関連ビジネスは閉鎖され、ベイルートのカフェやバーでは店主が店内を片付ける姿が見られる。
米国ドルに対するレバノンポンドの相場は低いまま、法定平価と闇取引レート間の差は相変わらずだ。ドルの売相場は土曜日3,800レバノンポンドに達し、買相場は4,000レバノンポンドとなった。
レバノンのミシェル・アウン大統領は土曜日、ロシアの通信社スプートニクに対して、国民が「迅速かつ具体的」な変化を望んでいることは分かっているが、一夜にして過去30年間の影響にかたを付けることはできないはずだと述べた。
また、大統領は、汚職に抗議する街頭抗議を政治的に利用する勢力に対しても懸念を表明した。「デモに参加する自由や表現の自由は守るが、治安の悪化は許せない」
数日前、1つの経済計画が政府により承認された。計画にあるIMFへの支援要請は、計画に反対してその「危険性」を主張するレバノン銀行協会をはじめとする、各方面からさまざまな反応を呼んだ。同協会は、計画を策定した者たちの責任を追及するよう要求した。
「計画にある地方再編は、地方レベルでも国際レベルでもレバノンに対する信頼をさらに損なう結果になるだろう。無法状態の公認につながりかねない傾向をはらんでいるのだから」と警告する。
財務大臣のGhazi Wazniは、同協会には計画について意見を表明する権利があるし、計画はレバノンの利益のために議論され、修正されて構わないという。
そして「計画は、現在の非生産的な経済を生産的なものに転換する主要ポイントの1つであり、政府は製造業や農業を含む生産的なセクターを支援することに取り組むことになる」と付け加えた。「現在、わが国は深刻かつ現実の危機のなかにあり、我々が改革を実施することと引き換えに、国際サポートグループカンファレンスを開催する方向に進んでいる」
開発エキスパートのNasser Yassin博士は、政府の計画は社会問題を考慮に入れていないという。「計画のよい所は、初めて問題をしっかり診断して損失を明らかにしたことだ。でも社会的な部分は、耐乏を強いる政策に頼っていることを除いて不明瞭で、IMFには都合がいいが、それが意味するのは、そうした厳しい政策のターゲットが貧困層や軍の補償、教師や社会給付であり、つまりすでに弱体化した社会的保護制度であるということだ。だが、そうした制度は構造的な混乱と欠陥のためにすでに駄目になってしまっている」とArab Newsに語った。
経済が崩壊して人々が街頭デモを行うなか、レバノンはデリケートな段階にあると述べる。「計画は市民社会が意見を述べることができる素案のはずだった。今や議論し修正することは議会任せになっている」
アラブNGO開発ネットワークの常任理事のZiad Abdel Samadは、政府の計画は仮定に基づくものだと述べる。「計画は、むしろIMFとCedar(レバノン経済を支援する、海外の援助資金供与者と投資家の会議)に提出する信任状のようなものだ。だが主要な問題は政治的なものであり、計画の実施を望む政府に対する信頼の欠如なのだ」とArab Newsに語った。「例えば、政府は国境での関税の回避を禁止できるだろうか? 政府は国境にスキャナーを設置して、密輸を防止できるだろうか? 割当量に基づく制度があって、可能なプロジェクトあっても排除されてしまうだろう」
計画はセーフティネットを盛り込んでいるが、それは国際機関の仕事であって、政府の仕事ではないと付け加える。「政府に必要とされているのは、国民のための包括的な保護システムを提供することだ。計画は輸入を減らすために消費を減らすことを盛り込んでいるが、社会的、教育的、保健的な保護システムを提供することなく、国民だけに犠牲を求めることはできない」