
Najia Houssari
ベイルート:昨年10月に始まり、コロナウイルスのパンデミックで中断していたレバノンの反政府運動が、数カ月ぶりの大規模デモに向けた準備を進めている。
活動家らは、長引く生活条件の悪化に対するデモに参加するため、6日にベイルート都心部に集結するよう、あらゆる階層の人々に呼びかけた。しかし、過去のデモに参加した市民団体の多くが、今回は不参加の意思を表明している。
経済危機は悪化の一途をたどっているにもかかわらず、市民らの気持ちは離れて行っているようだ。
組織された抗議団体に加入していない数人の活動家が、デモ前夜にベイルート中心部の殉教者広場に集結した。
「私たちは、悪化する経済・社会状況をもたらした無能な政府に立ち向かい続けるということを主張するために集まるのです」とNazih Khalaf氏は言う。
「しかしながら、今回は活動家の間に分裂が起こっています。各グループが独自の意見があります。これはソーシャルメディアのプラットフォームを見れば分かります。土曜日、人が集結しないのではないかと心配です。」
障害を持つ学生の教師を務めるGhina Jamil氏は、「私は何の組織にも属しておらず、政府に自分の声を届けたいのです。支配階級が誰かは関係ありません。私にとって大事なのは、自分の権利を獲得することです。選択肢は2つ、外に出て抗議するか、家に残って飢えや重い税金で死ぬかどちらかです。」
「もう人に頼ることはやめました。テクノクラート内閣を装って保身している政府は、コロナウイルス拡大でデモが急停止を余儀なくされ、勢いに乗っていた活動が抑制される中、宗派闘争のカードを使って抗議者の怒りを弱めることに成功しました。」
変わらぬ意志を持った活動家らがデモの準備を進める一方、首都中心部の秩序維持という任務を与えられた警備員らも同じく態勢を整えている。
5日の夜、抗議者らは早期の議会選挙を求めるスローガンが書かれたプラカードを掲げ、「支配層エリートは信用できない」として「略奪されたお金を返し、腐敗をなくす」よう求め、また物価の上昇やドル高に対する不満を訴えた。
社会運動を研究するNizar Hassan氏は、昨年10月の大規模な反乱と、直近の抗議活動は大きく異なると指摘する。
「10月17日の反乱は終わり、前のような状況に戻ることはないでしょう」、「政治階級が(パンデミックによって)3カ月の猶予期間を利用して政治的分裂を復活させたのは残念なことです」と彼は話す。
「反乱は異なる宗派、教義、イデオロギーを持つ人々を共通の要求で結束しましたが、権力は彼らを引き裂こうとしています。」
「これまでの出来事が集団的不満を引き起こし、人々は10月17日に抱いていた信念を失いました。今ある不満な状況と共存することを選んだのです。」
Hassan氏は、活動家グループの要求の一つであるヒズボラの武装解除について、「この要求は今日、緊急の要求ではなく、レバノンが直面する経済的現実に影響はありません」と指摘する。
その一方、レバノンの自由で公正な大統領選挙と、同国内の全外国軍の撤去を求めた国連安全保障理事会決議1559遵守への要求を受け、ヒズボラとその支持集団は要求の賛同者をイスラエルの回し者だと非難し、抵抗運動に反対派と呼び市民運動に対する暴力的な作戦を始めた。
「これによりヒズボラ寄りを含む多くの団体が活動から撤退したことから、背後に治安当局の存在があるという可能性も排除できません」とHassan氏は加える。
「一部の富裕層団体も市民運動に参加し、早期の議会選挙の日程を求めました。10月17日に求められていた早期選挙は、新たな選挙法の確立に関連した多くの要求の1つでした。そうでなければ、現行の法律の下で選挙を行う意味はないですよね。単に同じ権力を再現し、日和見主義の団体に、自分たちのいいように政治を悪用する機会を与えるだけです。」
Hassan氏は、「かなりの数」の活動家が6日にベイルートのデモに参加すると見ているが、抗議者間で矛盾した要求がぶつかり、緊張が高まるという事態を予想している。
「各活動団体内に2つの考え方があるので、混乱を招く」というのが同氏の見解だ。
サポーターが6日の抗議活動に参加しないと宣言した政治家の中に、ミシェル・アウン大統領の義理の息子にあたるChamel Roukoz議員がいる。
彼は現在、アウン大統領の自由愛国運動やその議会ブロックに属していない。「彼らは早期選挙の日程決定を優先としているが、私たちは裕福なビジネスマンが議会を支配できる現行の選挙法を改正することが私たちの目標である」という理由からだ。
彼はまた、「抗議者らが支配層エリートを転覆したいのなら、私は支持しません。なぜなら、責任は政府と議会にあり、共和制における大統領の権限は限られているからです」と加えた。
Roukoz氏は今週末デモに参加する人々に対し、「挑発的なスローガンを使わず、治安部隊との衝突を避ける」よう求めた。
金曜日、ベイルートのTariq Al-Jdeideh地区ではすでに緊張が高まっていた。現在の紛争を理由に、棒、ナイフ、なたなどの武器を持った若い男たちが衝突し、2発の銃弾が空中に撃たれた。
暴徒化を恐れ、多くの店や会社が閉鎖した。治安部隊、諜報局、軍隊が現場に送りこまれ、捜査を始めた。
Syndicate of Money Changersの日報によると、金曜日の時点でのベイルートのドル為替レートは、3,890~3,940レバノン・ポンドだった。
Money Changersは中央銀行の要求に応え、今後10日間で、1ドルの価格を3,200レバノン・ポンドに下げる見込みだ。