Since 1975
日本語で読むアラビアのニュース
  • facebook
  • twitter
  • Home
  • 中東
  • カタール王室を名指しで告訴 イスラエルで米国人10人を殺害か

カタール王室を名指しで告訴 イスラエルで米国人10人を殺害か

首都ドーハ近郊に米欧の一大空軍基地を擁するカタールは、ハマスへ最大級の財政支援をおこなう国でもある。(AFP資料)
首都ドーハ近郊に米欧の一大空軍基地を擁するカタールは、ハマスへ最大級の財政支援をおこなう国でもある。(AFP資料)
Short Url:
11 Jun 2020 08:06:54 GMT9
11 Jun 2020 08:06:54 GMT9

レイ・ハナニア

【シカゴ】イスラエル国内および同国占領下のヨルダン川西岸地区でテロ攻撃により殺害、ないし重傷を負わされた米国人10人の親族が10日(水)、カタール王室を相手取り「不法死亡」のかどで訴えを起こした。

被害者10人と原告51人の意を受けた訴訟団は訴状で、カタールがハマスおよびパレスチナ・イスラム聖戦機構(PIJ)に資金援助をしているとする。両組織とも米政府が「テロ組織」に指定している。

訴状では、カタールは米国の制裁を迂回して3つの組織・団体を通じた資金供与を模索したとする。ひとつは「カタール・チャリティ」で、米政府がハマスとのつながりがあるとして「特定テロ組織」に指定し制裁対象としている「ユニオン・オブ・グッド」に加わる団体。残り2つは、カタール王族の管理下にあるマスラフ・アッ=ライヤーン銀行とカタール国立銀行だ。カタール・チャリティの理事長は、カタール王族のハマド・ビン・ナーセル・アール=サーニー氏が務めている。

「テロ組織も企業同様、活動には資金を必要とする。が合法的な団体と異なり、ハマスのようなテロ組織の場合、その思想に共感を示す国家や金融機関を頼みとする。こうした国家・機関は巧妙な資金調達の計略をめぐらし、テロ組織の活動を擬装したり反テロ法を迂回したりする。慈善活動を通じた支援金の形でテロ組織へ資金供与されているケースもある」と、訴状ではしている。

「カタールは政府の政策として長らくテロ組織ハマスへの資金援助をおこなってきた。したがって、カタール政府とカタール王室の配下にあるマスラフ・アッ=ライヤーン銀行、カタール・チャリティ、カタール国立銀行がこうした活動に参与してきたのはなんら驚くべきことではない」

カタールはドーハ近郊に米欧の巨大空軍基地を擁する。と同時にハマスへの最大級の資金援助国でもある。ガザ地区に本拠を置くテロ組織ハマスにカタールは、年来5,000万ドル以上を供与していると訴状では言明している。

「パレスチナ当局の主張によると、カタールは2008年には、ガザ地区の住民に向けた資金という名目で、ハマスに対し毎月数百万ドル以上を供与した」と訴状には書かれている。

2014年3月には、米財務省のデイビッド・コーエン次官がカタールを名指ししてテロ組織への財政支援に特別に寛容な国だと指摘している。同次官は、カタールは「中東地域の安定をむしばみつづけるハマスへの財政支援を長年にわたり公然とおこなってきている」と発言した。

カタール側の監視体制は穴が多い、とコーエン氏は語っている。「テロ組織へ資金供与をおこなう一大ネットワークの本拠はクウェートにあり、カタールの主だった資金調達団体のいくつかはそのカタール支部的な役割を果たしている」とする。

今回の提訴は、カタールの資金援助を受けたとされるハマスおよびPIJによる暴行の結果、殺害ないし重傷を負ったとみられる10人の被害者らの親兄弟・親族など51人の意を受けた形。

2018年3月23日にはドナルド・トランプ大統領が「テイラー・フォース法」に署名した。パレスチナ自治政府側がテロ行為の実行犯らに俸給を支払っていたとして、米側から自治政府への資金援助をふさぐものだ。パレスチナ側では、イスラエル政府による「集団懲罰」政策により容疑者らの家屋は破壊されており、その生き残った家族らへ供与する「支給金」名目というのが実態だ、としている。

訴状では、マスラフ・アッ=ライヤーン銀行を通じてハマスが支給した資金と攻撃とを関連づけている。マスラフ・アッ=ライヤーン銀行については、訴状では「カタール・チャリティがハマスおよびパレスチナ・イスラム聖戦機構へ財政支援をおこなっていることを知りつつ金融サービスを提供した」として英当局の調査対象となっているという。

訴状はさらに、カタール・チャリティがカタール国内および世界に向けて募金を呼びかけ、そうして得た資金をカタール首都ドーハにあるマスラフ・アッ=ライヤーン銀行の口座に移動させたともしている。

マスラフ・アッ=ライヤーン銀行に預けられた資金は同行のニューヨークの提携銀行で米ドルに換えられる。そののち、ラーマッラーにあるパレスチナ銀行ないしイスラム銀行のカタール・チャリティーの口座に移される。

最終的にはカタール・チャリティーの現地支部がこうした現地口座を通じて米ドルで資金をハマスやPIJやその傘下団体へ供与、これがイスラエル国内のテロ活動の資金源となっている、と訴状には書かれている。

実のないカタール・米関係

テロ支援を疑いつつも、米国や英国や湾岸戦争時に反イラク連合を組んだ国々はドーハ南東に連合軍の基地を維持している。アル=ウデイド空軍基地(アブー・ナフラ空港)だ。

カタール王室は、カタールがテロ組織を支援していると批判されることへの反論として、2012~18年の間に主にジャーナリズム関連の学科を擁する大学へカタール財団を通じ14億ドル以上の投資をおこなってきている。

カタールの関わる提訴は今回が初めてではない。昨年7月、タンパ市のレベッカ・カスタネダ弁護士が、カタールのタミーム・ビン・ハマド・アール=サーニー首長の兄弟に当たるシャイフ・ハーリド・アール=サーニーを相手取り連邦裁判所へ提訴している。シャイフが契約を交わした米国人2人がシャイフと敵対する者たちを殺害しなかったとしてこれを脅迫した、とするかどだ。

カスタネダ弁護士によると、訴訟は当初よりも拡大し、さらに3人の米国人原告も加わっている。中には、シャイフの妻を侮辱したとしてインド人の使用人をシャイフ・ハーリドが殺害するのを目撃した、とするものや、米国のスポーツカーレース業界の有力者の殺害など7人を殺すよう求められたとするものなど、「さらにひどい蛮行」も報告されているという。

カスタネダ氏は、「シャイフ・ハーリドはきわめて凶暴な人物だ」としている。

特に人気
オススメ

return to top

<