




ベネディクト・スペンス
ロンドン:英国のアーティスト、バンクシーによる欧州難民危機を描いた3連作の地中海の絵が、ロンドンのオークションで220万ポンド(290万ドル)以上で落札された。
3連パネルの作品「地中海の眺め2017」は、7月29日にサザビーズのオークションハウスで売りに出された。当初は西岸地区の小児病院、ベツレヘム・アラブリハビリテーション協会のために120万ポンドを調達する見通しだった。
売上は急性脳卒中病棟と小児リハビリテーション設備に充てられる。
この作品は、海が描かれたロマン主義時代の油絵3点に基づいており、放棄された難民ボートから海岸に出された救命胴衣やオール、その他の残骸を描いている―進行中の一連の自然災害や、イラク、シリア、リビアでの戦争を含む人間が起こした出来事による、中東・北アフリカからヨーロッパへの大量の人口移動について評したものだ。
「『地中海の眺め2017』で、バンクシーは題材として採用した油絵3点にウィットに富んだ自身の改変を加え、19世紀の海景を装いながら、21世紀の切迫した問題の一つにスポットライトを当てています」と、サザビーズのヨーロッパ現代美術責任者、アレックス・ブランジックは語る。
「この3連作は、ベロット、ファン・ホイエン、ターナーなどの歴史上最も偉大な風景画家の作品と一緒にサザビーズのギャラリーに飾られています。しかしバンクシーの作品は、単独で強力な政治的メッセージを打ち出しています」
自らの正体を秘密裏に保つバンクシーは、政治的・社会的メッセージ性の強いテーマのグラフィティアートの裏側で、国際的に有名になった。
近年では、地中海移民危機とイスラエル・パレスチナ紛争の2大問題がバンクシーの作品上大きな役割を果たしている。
2015年には、イギリスの町ウェストン・スーパーメアに、難民ボートとアナキズムのテーマをフィーチャーしたディストピアのテーマパーク「ディスマランド」というインタラクティブ作品を制作した。
またバンクシーは、ベツレヘムに有名ホテルチェーン・ウォルドルフの名前をもじった「ウォールド・オフ・ホテル」をオープンした。
ウォールド・オフ・ホテルは、イスラエル西岸地区の国境の壁の隣に位置し、「世界最悪の景色」を誇っている。
宿泊客は1日に25分しか直射日光を浴びることができない。「地中海の眺め・2017」は以前、このホテル内に掛けられていた。
2015年に別名「ジャングル」と呼ばれるフランス・カレー港の移民キャンプの壁に飾られた「シリアからの移民の息子」でバンクシーは、テック大手アップルの億万長者の故創設者スティーブ・ジョブズを、身の回り品の入った袋と初期のアップルコンピュータのみを手にした難民として描いた。ジョブズの実父、アブドゥルファッタ・ジャンダリはシリアの都市ホムス出身である。
バンクシーの最新の作品は、ロンドンの地下鉄の車両にCOVID-19に関するメッセージをスプレーしたものだった。
地下鉄の運営会社であるトランスポート・フォー・ロンドンが定期清掃の一環として作品を消したことが明らかになると、議論が沸き起こった。