• 世界的にパーティーの到達地点として知られるベイルートのナイトライフが、首都が次々と起こる危機に耐えることを証明しているというのは、陳腐な決まり文句である。

ベイルート：かつてベイルートの居心地の良いレストラン「Tenno」では、犬の誕生日会やレコード・ナイト、お笑いショーが開催されていた。

そんな時代は過ぎ去ってしまった。今月の港の爆発でドアが崩壊し、ガラスは砕け散った。少なくとも180人が死亡し、ベイルートで最も人気のあるパブは被災地と化してしまった。

「私たちは再建を計画しています……私たちには、こんな形で終わらせないという責任があります」と、この約2年前にオープンしたカフェのオーナーの1人であるモハメド・ソリマンさん（28歳）は言った。修理のための資金は、オンラインのクラウドファンディングを通じて集められた。

だが、長年の仕事が数秒で消えかねない国に投資することにもはや意味はないと、再建を目指さない人々も多いだろう。

「私たちは誰もが危機に瀕していると話していました。どうやってここまで来たのか分かりません。長くは続かないでしょう」と、ナイトクラブ・カフェ・レストランオーナー組合のマヤ・ベハジさんは言った。

世界的にパーティーの到達地点として知られるベイルートのナイトライフが、首都が次々と起こる危機に耐えることを証明しているというのは、陳腐な決まり文句である。

レバノン人は、戦争や暗殺事件を経てなおパーティーをするという伝説的な回復力を冗談にしてきたが、そんな華やかさの裏にははるかに暗い現実があった。

この1年は、レバノンの金融メルトダウンやCOVID-19パンデミックなどにより、経済の柱であるサービス産業が打撃を受けていた。8月の倉庫の爆発は2,000以上の施設を破壊し尽くしてしまい、失業率と貧困が急増中のこの国で、さらに何万もの雇用が危険にさらされることになってしまった。

レストラン部門だけでも、再建には少なくとも10億ドルの費用がかかるとベハジさんは見積もっている。

爆発以前から、レバノンの労働力の大部分を雇用する産業では、何百もの職場が大量解雇で閉鎖されていた。

国家は何をしたのかという質問に対して、べハジさんは「誰も気にしてませんよ」と笑う。低賃金労働者が最も打撃を受けている今、組合は1ヶ月間従業員への食事の提供を支援すると彼女は言った。

ベイルートのナイトライフは長い間、投資家の資金や海外のパフォーマーを惹きつけてきたが、その結果、世界中のランキングに贅沢なソワレのイメージが生まれた。

昨年来、通貨の暴落により、これらの企業の多くが顧客としている中産階級を含めたレバノン人の購買力は低下している。ドルが不足する中、コストは急上昇し、サプライヤーは現金を要求した。

ホステルやルーフトップバーも経営しているカフェ・エム・ナジのオーナーは、今は再建の予定はないという。

「国家への信頼がない状態でゼロからスタートすれば、損をすることになるでしょう。再び投資をしたとしても、さらに20回の爆発に見舞われる可能性があります」と、カフェが爆発により破壊された際に肩を脱臼した店長のナジフ・ディラニさんは言った。「この場所は私の人生です。すべてのネジの場所を知っています」

ソーシャルメディアには、バーカウンターの後ろから血まみれの顔が出てくる動画をレバノン人が投稿している。ある者は公共スペースの少ない街での喪失感を語っていた。

エンターテイメントグループ「ファクトリーピープル」の創設者であるジェイドさんにとって、今は170人の従業員を維持することに重点が置かれている。爆風によってクラブの1つはねじれた金属の山になってしまった。このクラブの立ち上げには250万ドル近くの費用がかかり、修理にはさらに数百万ドルの費用が必要となる。

「すべてを投げ打って投資を続けました」とDJは語った。「でも今は、戦場の真ん中で弾薬が尽きたような状態です」

ロイター