
【タイッズ】貨物を山積みにしたトラックが何台もアップダウンしながら苦しげに進んでいるのは、危険なまでの蛇行ぶりと急峻さで鳴るハイジャトゥル=アブド(Hayjat Al-Abed)道路である。イエメン第3の都市タイッズへと続く、山の中の生命線だ。
内戦で荒廃した諸都市とイエメン南西部にあるタイッズをつなぐ道路は、谷底へと目もくらむような断崖がひかえるこの道以外、すべて武装叛乱組織フーシ派の手に落ちている。
政府軍と叛乱軍との長きにわたる抗争が収まる気配も一向に見せぬまま、この穴ぼこだらけの7キロの道路に、イランが後見するフーシ派に取り囲まれた50万ほどの住民たちは活路を見出しているのだ。
年月を経て豪雨によりいちじるしく破損した狭い道路を、大小の車両がすし詰め状態でのろのろ通行している。
「ごらんのとおりだ。でかい穴ぼこだらけだし、勾配だって危ないなんてもんじゃない」。そうAFPに語るのは、若いトラックドライバーのマルワーン・アル=マフターリー(Marwan Al-Makhtary)さんだ。「これ以上進めないもんだからしかたなく止まってバックさせるしかない、なんてこともあるんだ」
道路の補修はまったくおこなわれていない、とマフターリーさんは言う。このまま道路が劣化するよりないなら、最終的には物資の搬入も停止に追い込まれる恐怖がつのる、とも語る。
22日にはタイッズの住民有志が集まって政府に行動を求めた。道路沿いに人間の鎖を作り、何人かは「タイッズの生命線を救え」と書かれたプラカードも掲げた。
デモ参加者の一人、アブドゥルジャービル・ヌーマーン(Abdeljaber Numan)さんは語る。「合法政府と地元当局には道路の維持と補修に向けた取り組みを加速させてほしいと思っている」
「ここ以外、タイッズが外の世界とつながる道路はないんだ。動脈を断たれれば街は危機に瀕しかねない」
地元当局で道路の維持管理を管掌するスルターン・アッ=ダフバリー(Sultan Al-Dahbaly)氏は、国がすでに危機的状況にあり国民の大多数が支援に頼るしかない情勢下、道路が閉鎖される事態にもなれば「人道上の災害」を招きかねない、と語っている。
「この道路はタイッズ市の生命線と考えていいです。ですからできるかぎり利用可能な状態にしておかねば、(タイッズ県の)約500万人に累が及びかねません」と同氏はAFPに語る。
人道的支援
他方で、24日には、敵対するイラン支援の叛乱組織フーシ派に対しイエメンの大統領が、一刻の猶予も許されない人道支援の供給への妨害行為をやめるよう求めている。これは、国連人道問題担当事務次長が先週、紛争で荒廃したイエメンは「おそるべき飢餓」にふたたび見舞われているとした警告を受けての発言となる。
アブドラッボ・マンスール・ハーディー大統領による嘆願は、新型コロナウイルスの感染拡大のためリモートでおこなわれている国連総会の閣僚会合の場で録画演説の形をとって発せられた。この演説に1週間以上先んじて、国際人権NGO「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」が、食糧や医療物資、水、衛生支援の到着をイエメン紛争の当事者すべてが邪魔立てしていると警鐘を鳴らしている。
AFP