
ワシントン:ドナルド・トランプ米大統領は19日、スーダンが米国のテロ犠牲者とその家族に3億3500万ドルを支払うという約束を実行すれば、スーダンは米国のテロ支援国家リストから除外されるだろうと述べた。
この動きによりスーダンは、疲弊した経済を再建し、同国の民主主義への移行を助けるために必要な国際融資と援助を得る機会を得るだろう。この発表が行われたのは、米大統領選挙をわずか2週間後に控え、トランプ政権がスーダンのような他のアラブ諸国を、最近イスラエルを承認したアラブ首長国連邦やバーレーンの後に続かせようとしているからでもある。
スーダンをテロ支援国家リストから除外することは、スーダン政府がイスラエルとの関係を正常化するための重要なインセンティブだ。トランプ氏の発表が行われたのは、スティーブン・ムニューシン財務長官がバーレーンを訪れ、同国がイスラエルを承認することを確固としたものにした後だった。
トランプ氏はTwitterに次のように投稿した。「素晴らしいニュースです! スーダンの新政府は、大きく前進しているのですが、米国のテロ犠牲者とその家族に3億3500万ドルを支払うことに同意しました。支払われたらすぐにスーダンをテロ支援国家リストから除外します。米国民のための正義とスーダンのための大きな一歩がついに実現しました!」
スーダンは、オサマ・ビンラディン氏がスーダンに住んでいたときに同氏のアルカイダ・ネットワークが行った攻撃である、1998年にケニアとタンザニアの米国大使館で起きた爆破事件の犠牲者に賠償金を支払うことに合意している。
スーダンの最高評議会議長アブドルファタハ・ブルハン中将は、トランプ氏の発表を「建設的なステップ」として歓迎した。同氏は、除外されるのは「スーダンで起きている歴史的変化が認められているから」だろう、とTwitterに投稿した。
スーダンは、昨年起きた民衆蜂起をきっかけに軍部が2019年4月に独裁的な指導者オマル・バシル大統領を打倒した後、民主化へと不安定な道を進んでいる。現在、軍と文民による政府が国を統治しており、2022年後半には選挙が可能になる。
アブダラ・ハムドク首相もこの発表を歓迎した。
「私たちは、スーダンの前の、消滅した政権の最も重い遺産を取り除こうとしています」とハムドク氏はTwitterに投稿した。
補償金が支払われたら、トランプ氏は、スーダンをテロ支援国家リストから除外する命令に署名する予定だ。スーダンは、リストに載っていることで米国による厳しい制裁を受け、27年間低迷している。
米国議会はその後、スーダンの国家免責特権を回復させるために動くと予想されている。それにより、スーダンに対する補償請求が今後、米国の裁判所に提出されることが事実上阻止されるだろう。一方、スーダンはイスラエルとの関係正常化のプロセスに着手する予定だ。恐らく、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が、トランプ氏とハムドク氏が電話をつないで祝辞を述べるときに参加するだろう。
スーダンの高官らは、同国をリストから除外する条件について1年以上にわたって交渉してきたが、スーダンとの関係修復に向けた米国の取り組みは、2017年1月にプロセスを開始したバラク・オバマ大統領政権の末期に遡る。
「テロ支援国家」指定は、米国政府が持つ最も効果的な制裁手段の一つであり、米国と、リストに載っている国との全ての非人道的な取り引きを事実上禁止している。リストは、テロ行為に資金提供や支援を行った国を罰するために1979年に作成された。スーダンが除外されると、リストに残るのはイラン、北朝鮮、シリアだけになる。
スーダンのテロ支援国家指定は、スーダンがビン・ラディン氏や他の指名手配中の過激派を一時的に滞在させていた1990年代に遡る。スーダンはまた、イランが、ガザ地区にいるパレスチナの武装勢力に武器を供給するためのパイプラインの役割を果たしていたと考えられていた。
スーダン暫定政権は、米国によるテロ支援国家指定に関連した制裁を解除することを切望している。それがかなえば、孤立からの脱却と、ここ数カ月間急激に落ち込み、民主主義への政治的な移行を不安定にする恐れのある、疲弊した経済の再建に向けた重要な一歩となるだろう。
AP