
ナジア・フッサリ
ベイルート:レバノン中央銀行(Banque du Liban)のリアド・サラメ総裁は、銀行・専門業に関する秘密保持法を盾に、同銀行の口座の監査のためコンサルタント会社、Alvarez and Marsalに必要な文書を渡すことを渋っている。
Alvarez and Marsalのジェームズ・ダニエル マネージングディレクターは4日、レバノンのガジ・ワズニ財務相と会い、レバノン政府とAlvarez and Marsalが締結している監査契約について話し合った。ダニエル氏は5日にはミシェル・アウン大統領と会談する。
アウン大統領、そしてハッサン・ディアブ首相率いる暫定政府は、レバノン経済の崩壊について中央銀行のサラメ総裁による金融エンジニアリングに原因があるとしており、差し押さえられた資金を取り戻すため総裁との政治的争いのただ中にある。
マリー・クロード・ナジム法務相は、財務監査の実施に必要な情報と文書をAlvarez & Marsalに提供するようサラメ総裁に求める通達を出している。この通達は、「レバノンの法律で規定されている銀行の秘密保持義務は、国およびレバノン中央銀行の口座には適用されない、とりわけ件の資金は情報公開の権利に関する法律の下で機密とはされないため尚更である、という事実」に基づいたものだという。
中央銀行は4日に声明を出し、適正な手続きに従って「すべての口座内容を財務大臣に引き渡し」たと発表した。
「国の口座に関してレバノン政府は、その口座すべての詳細な収支報告書を要求し、かかる報告書を、通知するのが適切であると政府が判断する当事者に引き渡すことができます。この引き渡しにより、レバノン中央銀行は、法的拘束力のある秘密保持法への、懲罰の対象となるような違反を犯すことを回避しました」と声明は付け加えている。
中央銀行はまた、「Alvarez and Marsalに提供された情報とデータのソーシャルメディアへの漏洩は、法律およびAlvarez and Marsalとの契約条項に違反」したものだとして、遺憾の意を表明した。
Alvarez and Marsalは、レバノン当局に「レバノン中央現行から受け取った文書は、これまでのところ刑事に関する監査業務を継続するには不十分」であると報告している。
しかし、レバノン議会のエリー・フェルズリ副議長は、「国の経済的利益を損なう」として、この件を銀行秘密の例外とすることを拒否している。
議会で発表した声明の中で、フェルズリ副議長は次のように述べている。「マネーロンダリングやテロなどに関しては銀行秘密の例外としますが、恣意的な告発についてはそうではありません」
「一体何のために、銀行秘密の例外を認め、国際社会にもうほとんど残っていないレバノンの信用を完全に破壊しようというのでしょうか。誰かの満足のためでしょうか?もし将来、銀行秘密の例外が認められた場合、私達は生活していく基本となるものをどこから得たらいいのでしょうか?リンゴとブドウから、とでも言うのでしょうか。レバノンにとって何が最善かを考えてください。」
ジブラーン・バシール氏が率いる自由愛国運動(FPM)は4日、バアブダーで同組織の存在感を示す自動車集会を開催し、刑事に関する監査の続行を要求した。
エコノミストのジャシム・アジャカ博士はアラブニュースに次のように語る。「法律的には、レバノン中央銀行にはいかなる情報を開示する権利もありません。レバノンと監査会社(Alvarez and Marsal)の間で締結されている契約は、銀行の口座のみを監査することを規定しており、省庁やその他の公的機関は含まれていません」
「ですから、必要なのは、銀行の上層部に情報を開示するよう圧力をかけることではなく、議会に行って銀行秘密法を修正する新しい法案を提出するか、特定の口座を監査する要求を司法または監査局に照会することです。銀行秘密の例外を認める権利を有するのは、議会と監査局の2なのですから」
アジャカ氏はさらに、「必要なのは、例えばエネルギーと通信に関係する省庁の口座から始めることです。これらの省庁が使っている銀行がレバノン中央銀行なのですから」と付け加えた。
イブラヒム・ナジャール元法務相は、次のように述べている。「犯罪に関する監査のためにAlvarez and Marsalと契約するという政府の決定は、公会計の監査を担当する監査局の役割を超えたものです。また、中央銀行に対して内閣は権限を持っておらず、レバノンの中央銀行は世界のほとんどの国の中央銀行と同じ様に、完全な独立性を保持しています。特に、銀行の口座は金融信用法、とりわけその第15条、レバノンの銀行秘密法に関する規定で守られているためです。」
ワズニ財務相に近い筋はアラブニュースに、理想的なシナリオは契約を一時停止することだと語った。 「現在の暫定政府は、閣議を開くことも、レバノン銀行に対する措置を決定することもできていません」とその情報筋は述べた。 「レバノンが一時停止の費用をAlvarez and Marsalに支払わなくてもよいという条件で、1〜2か月の間停止するべきだと思います。」件の契約を履行前にキャンセルするには、政府はAlvarez and Marsalに15万ドルを支払わなければならないだろう、と同情報筋は付け加えた。