
アラブニュース
ロンドン – 国連人権理事会の特別報告者が、紅海に「生態系の大惨事」をもたらす危険性が高いとして、イエメン沖に放置されている原油タンカーへの立ち入りを認めるよう要請した。
FSO= 浮体式貯蔵積出設備として使用されている大型タンカー「セイファー」は、ホデイダの港付近のイランが支援するフーシ派が支配している海域に係留しており、現在、110 万バレルの原油を貯蔵しているとみられている。
セイファーは 1976 年に建造され、2015 年にエンジンルームに海水が浸水し放置されてからは急速に劣化が進んでいる。
国際社会が承認するイエメン政府とフーシ派の双方は、2018 年に国連の正式な要請を受けて、この船への独立した専門家らの立ち入りを許可することで合意していた。
しかしその後、現地を掌握しているフーシ派の現地当局は立ち入りに必要な許可を与えていない。
「1989年にアラスカで発生した歴史的なエクソン・バルディーズ号の原油流出事故の4倍の被害をもたらしうる流出の脅威を防ぐには、国連の専門家チームのFSO「セイファー」への立ち入りが許可されることが不可欠です」と人権と有害物質に関する国連特別報告者であるMarcos Orellana 氏は指摘する。
さらに「8月にレバノンのベイルートの港で起こった壊滅的な大爆発から、世界は何の教訓も得なかったのでしょうか? 有害物質の不適切な扱いによる危険は、今やあまりにも明らかです」と訴えた。
そして「船が破損して原油が流出すれば、地元の沿岸地域の人々の生活を壊滅させ、この地域の多様な生態系を損ない、そして紅海の航路にも多大な影響を与えかねません」と警鐘を鳴らした。
「国連の専門家チームには、この老朽化したタンカーを調査評価し、最終的にタンカーからの原油流出の危険を防ぐために必要なあらゆる手段を与えるべきです」
人権と環境に関する国連特別報告者である David Boyd 氏は「原油の流出は、約 160 万人のイエメン人の生命と生活、健康と健全な環境に対する権利を損なうでしょう」と述べた。
そして、「これは今起こりつつある悲劇であり、どんなことをしてもこの悲劇がイエメンの人々を襲うことを阻止する必要があります。イエメンの人々はもう十分に苦しんでいます」と訴えた。