


ドバイ:長年西側諸国から隠密裏の核爆弾プログラムの首謀者とみなされてきたイランの科学者が、11月27日(金)にテヘラン近郊における待ち伏せ攻撃で殺害された。ドナルド・トランプ政権最後の数週間に、イランとその敵対国との間の対立を引き起こす可能性が出てきた。
イランの最高指導者アヤトラ・アリ・ハメネイは、モフセン・ファクリザデを殺害した人間たちに対する報復を宣言した。国営メディアの報道によると、ファクリザデは乗っていた自動車が武装した犯人らに襲撃されて負傷し、搬送先の病院で死亡したという。 「我々はこの非業の死を遂げた殉教者の殺害者らに対して直ちに徹底攻撃し、その所業を後悔させる」と、やはり軍事指揮官を務めるホセイン・デフガンがツイートした。
ファクリザデは長年西側諸国から、2003年に停止された隠密裏の核爆弾プログラムの首謀者とみなされており、イスラエルと米国は、イランが密かにそのプログラムを再開しようとしているとして非難している。イラン側は核エネルギーの武器化についてはずっと否定している。
「残念な事に医療チームは(ファクリザデを)再生させることがかなわなかった。つい数分前、この監督者かつ科学者であったファクリザデ氏は、その何年にもわたる努力と葛藤により、殉教者という高位が与えられた」とイラン軍が国営メディアを通して声明を発表した。
イラン政権寄りの通信社タスニムによると、テロリストらはファクリザデと彼のボディーガードを乗せた車を首都近郊で待ち伏せして襲撃する前に、「もう一台の車も爆破した」という。
その攻撃に関与したのが誰であろうと、米トランプ政権最後の数週間にきて、イランと米国との間の緊張が高まることは間違いない。
トランプ大統領は11月3日の大統領戦で再選叶わず、1月20日には退任するが、彼はイランが密かに核兵器を開発していると繰り返し非難してきた。核合意のもと、イランは核プログラムを中止する代わりに制裁を解かれていたが、トランプ大統領はその核合意から米国を撤退させた。ジョー・バイデン次期大統領は、核合意にふたたび加盟すると言っている。
ある米国高官は今月上旬、トランプ大統領は軍事補佐官らにイランへの攻撃計画を求めていたが、その時は一旦とりやめたと語った。
ファクリザデは、国連の核活動監視機関や米国の情報機関がイランの計画的な核兵器プログラム(2003年に中止)だったと確信する動きの首謀者だったいわれて いる。
ファクリザデは、国際原子力機関(IAEA)が発行する、イランの核プログラムに関する未解決問題の2015年度「最終報告書」の中で名指しされている唯一のイラン人科学者だった。
IAEAの報告書によれば、彼はいわゆるAMAD 計画の中で、「イランの核プログラムの軍事的と思われる側面に加担するような」活動を監督していたという。
イスラエルのベンジャミン・ネタニヤフ首相は、イランの継続的な核兵器開発への動きを非難する2018年のプレゼンテーションで、ファクリザデがいまだイラン防衛軍内で「特別プロジェクト」に携わっていると述べた。
「ファクリザデという名前を忘れるな」と当時ネタニヤフ首相は言っている。
11月27日(金)、ファクリザデ襲撃のニュースが出る前に、イスラエルのある高官が、イスラエルはイランへの対処方法について湾岸アラブ諸国と協議していると語っていた。
「この一件はトランプでもなければイスラエルでもなく、イランの話だ。米国の新政権が核合意へ後戻りするのは脅威を増大させることであり、湾岸諸国の存在自体を危機にさらすことになる。」とネタニヤフ政権の安保部門を担当するツァヒ・ハネグビがテルアビブのラジオ局102 FMに語った。「我々はイランの脅威という問題にどう対処すべきかわかっている、たとえそれが我々の単独の方法であっても」
ロイター