レイ・ハナニア

• 億万長者シェルドン・アデルソン氏が今週亡くなった。彼はその富を使って自身のメディア帝国を利用し、政治的影響力を金で買い世論を左右した
• アデルソン氏は180人の共和党議員・候補者ならびに特別政治活動委員会（スーパーPAC）のいくつかの保守派委員会に1億2千万ドルを寄付していた

シカゴ：1月11日（月）、億万長者シェルドン・アデルソン氏が87歳で亡くなった。彼はパレスチナ人民のことを臆面もなく「でっちあげ国家」と呼び捨て、そのメッセージを自分のメディア帝国を通して声高に叫び、米国の選挙に影響を与えるために自身の富を使った。

イスラエル最大の新聞社イスラエル・ハヨムは、アデルソン氏は米国のドナルド・トランプ大統領の大統領選に対する最大の寄贈者で、共和党議員・候補者たちに対しても何百万ドルという金を寄付していると報道している。

「シェルドン・アデルソン氏は米国の愛国者であり、イスラエルとユダヤ人たちの揺るぎない擁護者であった。彼を失ったことは米国、イスラエル、そしてユダヤ人にとって多大な損失だ」とトランプ大統領の中東に関する初代主要顧問をつとめたジェイソン・グリーンブラット氏がアラブニュースに語った。

「イスラエルとその多くの課題についての彼の深い知識は、過去4年間トランプ政権にとって貴重なものであった。シェルドンは、妻のミリアム共々、トランプ大統領のイスラエル関係の政策について重大なアドバイス、強力な激励、貴重な洞察を提供した人々の一人だった。私は彼らのことを、極めて貴重な情報を提供した重要な人々だと考えている」

しかし、グリーンブラット氏のアデルソン氏に対する憧憬の念は、アラブ-米国関係の活動家たちや指導者たちの大半とは意見を異にする。その内アラブニュースに話をした一部の人々の見解は、辛辣すぎて紙上に記載することが憚られる。

アラブアメリカンインスティテュートのジム・ゾグビー学長はアラブニュースに対し、アデルソン氏は自身の富と影響力を使って米国市民およびイスラエル-パレスチナ抗争に関する政治的世論にインパクトを与え、「トランプ大統領を自分の代役として利用した」と語る。

ゾグビー学長は在イスラエル米国大使館をテルアビブからエルサレムへ移動したのがその一例だと指摘する。

アデルソン氏はコミュニケーションとメディアの力を心得ており、自身の富と新聞を利用して米国世論に影響を与えた。

2014年8月、アデルソン氏とイスラエルは何百人ものイスラエル人大学生を集め、2014年のイスラエルによるガザ地区爆撃事件に対する世界の否定的な反応に対抗するためのアプリを開発させた。その爆撃事件によって2,251 人のパレスチナ人が殺害され、そのうちの半数以上が一般市民だった。

ACT.IL  と名付けられたそのアプリ（ILはイスラエルのインターネット指定先を表している）は、当時3,000 人以上のユーザーにイスラエルを支持するコメントを多数の　　ニュースやメディアのサイトに投稿させた。

2015年に、アデルソン氏は自身のラスベガスのカジノで活動家たちを集めた大会を主催し、イスラエルに対する「ボイコット、投資撤収、制裁（BDS）」運動 の高まりを抑えようとした。

 その結果として、米国の28州以上で、全てのコントラクターや従業員がイスラエルのボイコットについて非難しなければ、州ごとの方法により彼らを罰するという法令が採択された。

最初の反BDS法が2015年4月にテネシー州で可決されると、それにサウスカロライナとイリノイ州が続き、さらに13州が2016年に、9州が2017年に、そしてサウスダコタ州が2020年1月に可決した。

反BDS運動はキャンパス・マッカビーズと呼ばれ、アデルソン氏からの5,000万ドルの寄付金によってまかなわれた。 

アデルソン氏は彼の金を使って選挙運動中議員たちに直接影響力を行使した。

連邦選挙委員会の記録によると、彼は1億2千万ドル以上を180人の共和党議員・候補者ならびに特別政治活動委員会（スーパーPAC）のいくつかの保守派委員会に寄付し、それには「プリザーブ・アメリカ」と「RJC ヴィクトリーファンド」が含まれている。

作家でプロデューサーのリーザ・アスラン氏は次のようにツイートした：「シェルドン・アデルソン以上に米国の政治に破壊的威力を持つ個人を考えつかない。彼は何十億ドルという金を使って、この世界を廃墟へ向かう最悪の場所にした」

トランプ大統領はアデルソン氏の死を悼んで声明を出したが、ジョー・バイデン次期大統領からはまだコメントが出ていない。