
アラブニュース
ロンドン:湾岸戦争終戦30周年が近づいた現在、この2、3年でようやく公開に至った英国政府の文書を振り返ることによって、非常に興味深い歴史的事実の詳細や背景事情を紐解くことができる。
例えば、マーガレット・サッチャー元英国首相は、イラクがクウェートを侵攻した際、サダム・フセインをナチスの指導者アドルフ・ヒトラーに例えた。2017年に機密扱いが解除となって公開された文書には、サッチャー元首相がフセインのことを「わがままで横暴なる独裁者」で、「心理戦」を仕掛けていると記されている。
2月28日は湾岸戦争の終戦から30年目にあたる。この戦争は、イラクの独裁者サダム・フセインによるクウェート侵攻・占拠から米軍率いる同盟軍がクウェートを解放したことで終結をみた。戦争開始はその前年の8月だった。
サッチャー元首相の側近の一人が外務省の同僚宛に、首相と当時の英国外相ダグラス・ハード氏の間に交わされた会話の詳細を書き留めた覚書を送付している。
その覚書には「首相と外相は、主要軍事基地で外国籍の人間が拘束される可能性が極めて高くなっているようだということで意見が一致した」と書かれている。
「サダム・フセインはヒトラーのごとく振る舞っており、心理戦を行っている。彼の目的は敵の行動をおびき出すことにまず間違いなかろう。首相は、英国側がフセインの心理戦法を慎重に研究し、適切な方法で応戦することの重要性を強調している」
覚書には、サッチャー元首相とハード元外相が1980年代に何十万人という死者を出した8年間におよぶイラン・イラク戦争に言及し、サダム・フセインを「わがままで横暴なる独裁者」だと述べていたことも書かれている。
イラクは1990年に、小国ながら石油資源の豊富な隣国クウェートに侵攻した。経済を破綻へ追い込んだイラン・イラク戦争の終結からわずか2年後のことだった。この侵略でイラクが何より必要としていた石油供給への財政拡大がなされただけでなく、サウジアラビア並びに小規模の湾岸隣国に対し、深刻かつ切迫した軍事的脅威も呈することとなった。
クウェートの侵攻と占拠によって米国・英国・サウジアラビアを中心とする35カ国の軍事同盟が出動し、サダム軍は直ちに撤退を強いられた。
湾岸戦争の終結はイラクにとって経済困窮と制裁と外交上の孤立時代の先駆けとなり、2003年には米軍率いるイラク侵攻中に専制君主サダム・フセインが打倒されて幕を閉 じた。