
ワシントン:米国のジョー・バイデン大統領は、第一次世界大戦中のオスマン帝国による多数のアルメニア人殺害を「ジェノサイド(民族大量虐殺)」と正式に認定する見込みだと、複数の情報筋が21日語った。認定が行われれば、トルコの強い反発を招き、NATO加盟国同士でありながらすでにほころびている両国の関係がさらに緊張の度を高めるものと予想される。
今回の認定はほぼ象徴的なものではあるが、米政府が何十年にもわたって用いてきた慎重に配慮した表現からの脱却を意味しており、また時機的に、トルコと米国両国の政府がすでに一連の問題について対立している中での動きでもある。
バイデン大統領は、殺戮の犠牲者のために毎年4月24日に世界中で催されているメモリアルのための声明の一部で「ジェノサイド」という表現を使用する可能性が高い、とこの問題に詳しい3人の情報筋が明かしている。
「私の理解しているところでは、大統領はこの件についてすでに決定を下しており、24日の声明でジェノサイドという言葉を使用することになっています」と事情に詳しい情報筋は述べた。
米ホワイトハウスのジェン・サキ報道官は21日、ホワイトハウスは24日にこの問題について「もっと話すことになります」と記者団に語ったが、詳細は明らかにしなかった。
米国務省はコメントを求められてもすぐに応答せず、ホワイトハウス国家安全保障会議もサキ報道官の発言以上のコメントは出さなかった。
1年前、まだ大統領候補であったバイデンは、オスマン帝国の末期に命を落とした150万人のアルメニア人の男性、女性、子供たちを追悼し、彼らの殺戮をジェノサイドとして認める努力を支援すると述べていた。
「今日も、私たちはアルメニアの人々が直面した残虐行為、“メッツ・イェゲルン”(大虐殺の意)― つまりアルメニア人のジェノサイドを記憶しています。もし大統領に選ばれたら、私はアルメニア人の殺戮をジェノサイドを認める決議を支持することを約束し、普遍的な人権を最優先の課題とします」とバイデン現大統領は当時ツイッターで表明していた。
トルコは、オスマン帝国に住んでいた多数のアルメニア人が第一次世界大戦中にオスマン帝国軍との衝突で殺害されたことは認めていますが、その数には異議を唱え、殺害が組織的に計画されたジェノサイドであることは否定しています。
何十年もの間、トルコとの関係への懸念とトルコ政府による激しいロビー活動に影響されて、アルメニア人虐殺のジェノサイド認定は米国議会では保留されており、歴代の大統領たちもジェノサイドと呼ぶことは慎重に避けてきた。
トルコのタイイップ・エルドアン大統領は、トランプ前米大統領とは緊密な関係を築いていたが、バイデン現大統領とは、1月20日の就任以来まだ話をしていない。
バイデン大統領の就任以来、トルコと米国の当局者たちは話し合いを行ってはいるが、バイデン政権は、トルコ政府の人権問題の扱いに対する不満を頻繁に表明することにより、トルコへの圧力を強めている。また、トルコによるロシアの武器の体系的な購入、およびシリア問題に関する政策の違いなどの多くの問題についても、両国のギャップは残されたままだ。
トルコのメブリュト・チャブシオール外相は20日、大量殺戮をジェノサイドに認定しようとするバイデン大統領の動きは、同じNATO加盟国である両国のすでに緊張している関係をさらに悪化させてしまうだろうと語っている。
調査・コンサルティング企業 ユーラシアグループの創業者社長、イアン・ブレマー氏は、予想されているバイデン大統領によるジェノサイド認定は両国の関係悪化を反映したものだが、エルドアン首相からの反応はおそらく限られたものになるだろうと見ている。
「エルドアン首相が、トルコの弱い経済をさらに弱体化させかねないような対抗策を取ってまで米国を刺激する可能性は低いと思います」とブレマー氏は語った。
2019年、米国上院は、オスマン帝国によるアルメニア人殺戮をジェノサイドと認める拘束力のない決議を可決した。これは歴史的な意義を持つ決議であると同時に、トルコからの激しい反発を招くことともなった。
アダム・シフ下院議員と100人に及ぶ超党派議員のグループは今週、バイデン大統領に手紙を送り、選挙公約を実行し、「何十年にもわたる過ちを正す」よう促している。
ロイター