
パリ:イラン大統領選の最有力候補であるイブラヒム・ライシ氏は、司法府の中心にいるという立場を利用して、政治犯の集団処刑を含む重大な人権侵害を行ってきた。活動家らはこう指摘する。
ライシ氏は、保守派のライバルですら審査で失格となった後、18日に勝利を目指しているが、国を率いるよりも国際司法の裁きを受けるべきだ。彼らはこう主張している。
中堅の聖職者であるライシ氏は60歳。1979年の革命で国王が打倒された直後から要職を歴任してきた人物としては、まだ比較的若い。
同氏は弱冠20歳でカラジ地区の検事に任命され、その後、ハマダン県の検事になった。その前の1985年にはテヘランの次席検事に昇進した。
この立場にいたとき、ライシ氏は反体制派の囚人数千人(そのほとんどが、非合法組織ムジャヒディン・ハルク(MEK)のメンバーであるとの疑いだった)の死刑執行において重要な役割を果たした、と活動家らは主張している。活動家らによると、ライシ氏は4人から成る「死刑委員会」の一員として、正当な手続きを一つも踏まずに囚人を死刑にしたという。
最高指導者アヤトラ・アリ・ホメイニ師の有力後継者と見られているライシ氏は、1988年に起きた殺害への個人的な関与を否定しているが、死刑執行に踏み切ることを決めたことを賞賛している。
同氏はその後、1989年にテヘランの主任検察官、2004年には司法副長官となり、その地位に10年間就いた。2019年からは司法長官を務めている。
「ライシ氏のただ一つの場所は大統領の座ではなく法廷の被告席だ」と、「イランの正義」の事務局長であるシャディ・サドル氏は言った。「イランの正義」は、ロンドンに拠点を置き、イラン国内の犯罪の免責に反対する運動を行っている。「ライシ氏が現在司法長官であり、大統領選に立候補しているという事実だけを見ても、凶悪犯罪を犯した人たちがイラン・イスラム共和国で享受している免責のレベルが分かる」と同氏は話した。
1988年の殺害は、革命の指導者であるアヤトラ・ルホラ・ホメイニ師が直接命令し、同年7月から9月にかけて行われたとされているが、現在イランではほぼタブーとなっている。多くの人権団体や歴史家は、4000~5000人が殺されたと言っているが、MEKの政治組織である国民抵抗評議会(NCRI)は、3万人弱という数字を出している。
NCRIの外交委員であるホセイン・アベディニ氏は、ライシ氏は「40年間の抑圧の経歴」を持つ「冷酷な殺人者」だと述べた。
昨年、国連の特別報告者7人がイラン政府に対して、「この状況は人道に対する罪に相当する可能性がある」と述べ、イラン政府が十分な説明責任を果たさない場合は国際的な調査を行うよう求めた。
アムネスティ・インターナショナルも2018年の報告書で同様の結論を出した。その報告書によって、ライシ氏がイランの「死の委員会」の一員であり、同委員会がテヘランにあるエビン刑務所やカラジにあるゴハルダシュト刑務所で数千人を秘密裏に死刑にしたことが明らかになった。
虐殺を免れたと言う現在亡命生活を送っている元囚人らは、ライシ氏が委員会の一員として働いているのを直接見たと証言した。
遺体の大半は墓標のない共同墓地に埋葬されており、イランは犠牲者の悲運と遺体のありかを隠し続けている、と非難されている。
AFP