
ベネディクト・スペンス
ロンドン:アラブ世界との間の関係回復を実現するためにはイランが近隣諸国への内政干渉を止めたと納得させなければならないと、中東研究所のイランプログラムディレクター兼フロンティアヨーロッパイニシアティブのシニアフェローを務めるアレックス・ヴァタンカ氏は火曜、アラブニュースが出席したチャタムハウス主催の講演にて語った。
「イランの政治競争、および外交にもたらされる影響」と題された講演では内紛に陥りやすい国内政治の性質からアラブ世界におけるイランの代理勢力活用、アフガニスタンとの今後の関係に至るまで、幅広いトピックが出された。
“The Battle of the Ayatollahs in Iran”(イラン・アヤトラたちの戦い)の著者であるヴァタンカ氏は、イランは国外で代理勢力を使用する戦略について紛争が二度とイラン国土に到達しないよう保障するものだとして国民に対して正当化を図った一方、その結果近隣諸国はますますその思惑を警戒するようになったと述べた。
「これによりイランの近隣諸国の多くが警戒態勢に入った。イランが一体どんなことをしでかすか不安なのだ…(イランは)近隣諸国のエリート支配階層を引きずり下ろすことにはもう関心がないのだと、各国を安心させなければならない。そうすればアラブ世界、特に湾岸諸国の信頼を得るうえでかなり有益となるだろう」
ヴァタンカ氏は国内の政治競争により政策の大枠が形成された一例として、イランの最高指導者アリー・ハメネイ師とアクバル・ハシェミ・ラフサンジャニ元大統領の間の歴史的なライバル関係を挙げた。
ヴァタンカ氏は、このような国内の位置関係はイランの「日和見主義的」な外交政策における代理勢力の使用にもみられる一方、政権のニーズを優先するためにイラン国民のニーズを犠牲にしていることを示すものでもあると述べた。
「国益が…テヘランで権力を握る小さな派閥の利益のために犠牲にされることがあまりに多くみられる」とヴァタンカ氏は付け加えた。
「ひとつ例を挙げると、イランは米国や英国で製造されたワクチンは購入すべきでないとハメネイ師が言ったとき、国は新型コロナ感染の第5波に直面し、10万人以上が死亡し、大型の保健危機に見舞われていたのに、師はそれを政治の駆け引きの道具にしていたのだ」
「純粋な外交政策問題としては、道理にかなわない。権力政治の観点で見なければつじつまが合わない。これこそがまさに、大体において起きていることだ。国益が犠牲になっているのだ」