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政権復帰したイスラエル左派、影響力は限定的

2021年10月25日、ヨルダン川西岸パレスチナの町ナブルス近くにあるユダヤ人入植地ブルチンで新築住宅建設に従事するパレスチナ人労働者。
2021年10月25日、ヨルダン川西岸パレスチナの町ナブルス近くにあるユダヤ人入植地ブルチンで新築住宅建設に従事するパレスチナ人労働者。
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23 Nov 2021 11:11:27 GMT9
23 Nov 2021 11:11:27 GMT9
  • イスラエルの有権者指向は右派へとシフトし、労働党やメレツの政治基盤は縮小した

イスラエル、テル・アビブ:パレスチナ建国を支持しユダヤ人による入植に反対する小規模のハト派諸党はイスラエルの政界で蚊帳の外の状態が長く続いたが、今年の総選挙後政権に復帰した。だがこうした政党の影響力は限定的であることが露呈しており、連立を組む他の与党はほとんど妥協せず、同国で何十年にもわたって続くパレスチナ占領は終わる気配がない。

入植地の建設が活発に行われ、和平交渉は遠い過去の思い出となりつつある現政権下においてパレスチナ建国への望みがさらに遠のくなか、左派与党は主張を自重することを余儀なくされている。にもかかわらず左派の与党議員らは連立の重要性を訴え、野党であることで状況はさらに悪化すると主張する。

連立の一角を担う穏健派政党メルツのモッシ・ラズ議員は「残念ながら現政権はパレスチナ人と和平合意を締結する政権ではない。我が党は(恥ずかしいものを覆い隠すのに用いられる)イチジクの葉ではない。声をあげて主張しているが、我が党は力に乏しい」と述べた。

長く政局の混乱が続いたイスラエルで6月に発足した連立政権はベニヤミン・ネタニヤフ前首相を権力の座から切り離すという目的で結束しており、これまで対立が絶えなかった政治的立場の異なる政党の「万華鏡」だ。

パレスチナ人が国家建設を求める土地で50年以上も続く占領問題など、主張の隔たりが大きい問題を与党各党は棚上げし、コロナウイルス対策・経済改革・環境問題といった協調の可能性が見出せる問題に焦点を当てている。

だがそんな中でも占領は続く。現政権下においてイスラエルはヨルダン川西岸で数千軒規模の入植者住宅建設を推し進めている。現国防相はパレスチナ人の人権を主張する6団体を武装勢力と関連するとして非合法とした。急進的な入植者らは占領下にあるヨルダン川西岸におけるパレスチナ人に対する暴力的な攻撃の手を強め、イスラエル軍兵士はそれを傍観あるいは支援している。過去に同国最大の入植者ロビー団体会長を務めたこともあるナフタリ・ベネット首相はパレスチナ建国という概念を否定しており、パレスチナ人の間では依然として短期的将来を悲観視する向きが強い。

イスラエルの中道左派政党二党の労働党ならびにメレツは長年野党だった。労働党が以前政権の一角を担ったのは10年前であり、メレツにいたっては20年以上も前のことだ。

1990年代に政権を担った当時の労働党はパレスチナ問題の解決を党主張の核としていたが、過去54年間の全てのイスラエル政権下と同様に入植地の建設はその時代も続いていた。

1990年代中盤、労働党が主導しメレツも参加していた政権はパレスチナと「オスロ合意」と呼ばれる暫定和平合意を締結した。

だが1996年にパレスチナ武装勢力による攻撃が多発し右派が政権を奪取すると合意内容の履行は停滞した。その後2000年に労働党が政権復帰を果たし和平交渉が再開されたが合意にいたらず、同年内にはパレスチナ人の蜂起が頻発し、当時の労働党政権もまた短命に終わった。

イスラエルの有権者指向は右派へとシフトし、労働党やメレツの政治基盤は縮小した。イスラエル建国に貢献した政治家らが所属し、建国後20年間政権を担っていた労働党だが、直近の総選挙ではイスラエル議会全120議席中ひと桁の議席しか獲得できていない。メレツは1990年代に最大12議席を維持していたが現在は6議席のみだ。

労働党やメレツの支持者票の一部は経済対策に主眼を置く議会第二党の中道イェシュ・アティドへと流れた。

3月の総選挙の結果を受けてメレツと労働党はネタニヤフ氏が政権に返り咲くことを忌避し、意見の相違をひとまず忘れてイェシュ・アティドが主導し中道・右派諸政党およびイスラム主義政党が参加する連立政権樹立に合意した。
だが連立に向けた交渉において右派国家主義諸党はパレスチナ問題に関する政策を決定する閣僚ポストからハト派政党を締め出した。右派には優先政策の押し進め方を熟知する交渉手腕に長けた老練な政治家が在籍しているが、長年野党だった左派政党にそうした手腕を発揮できる議員がいない、とエルサレムのヘブライ大学で政治アナリストを務めるガイル・タルシール氏が解説した。

だが左派が優先政策を主張することは依然として可能だ、と同氏は述べた。連立与党はごく僅かな差で国会の過半数を維持しており、合わせて13議席を持つ労働党およびメレツの支持を必要としている。「戦挙を求める政党はない」とタルシール氏はいう。

現状における左派の影響力は美辞麗句に限定され、それさえも事を荒立てないよう薄められた感すらある。占領地におけるイスラエルの人権侵害を監視する機関などを含む6つのパレスチナ系NGOが非合法化された際の左派の対応は鈍かった。

保健相を務めるメレツのニツァン・ホロヴィッツ党首は当時、懸念される事態だとして透明性を求める談話を発表したが事態を非難するにはいたらなかった。

労働党のオメル・バルレヴ公共治安相は安全保障内閣の一員であるにもかかわらず「私には分からないところで決定されたことだ」と述べていた。
労働党ならびにメレツは入植地の拡張を遅らせることもできていない。

メレツのタマル・ザンドベルグ環境保護相は「同党が求めることをすべて実現することは不可能である」と認めたが、それでも連立合意の約束を維持すると述べた。

「我が党はこれらの制約の中で党の主張を押し進めるためにできる限りのことはすべてする」と同氏は最近のAPとのインタビューで述べていた。

連立与党が組織されてからの数ヶ月間、ネタニヤフ政権下で破綻したマフムード・アッバース大統領率いるパレスチナ自治政府との関係改善に向けた試みが僅かながらとられていた。これまでイスラエルの閣僚数名がアッバース大統領と会談し、イスラエル政府はパレスチナ人に対する労働許可証の発行数を増加した。

パレスチナ人に対する入植者の暴力行為を記録する人権擁護団体イェシュ・ディンのリオール・アミハイ氏は「思想の変化が見てとれるが実体の変化にはいたってない」と述べた。例えば入植者の暴力行為についての議会公聴会が最近開催されたが、これまでのクネセト(イスラエル議会)にはこれは期待できないことだったという。

「占領地の現場における結果を指差すことはできないが、何かが変わったという感覚はある。クネセトと協議できるということだ」とアミハイ氏は述べた。

パレスチナ自治政府指導部のアフマド・マジダラーニ氏は「こうした変化は表面的にすぎず、イスラエルにはやらなければならないことが多く残っている」と述べた。

「パレスチナ問題についてこの政府は政策を変えていないと我々は考えている」と同氏は語る。

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