
キエフ:米国は水曜、モスクワのウクライナ侵攻による「驚くべき」人的被害に対し、警鐘を鳴らした。クラスター爆弾その他、条約違反の兵器が明らかに配備されており、1週間前に始まった紛争が更に残虐化する恐れが出てきたためだ。
アメリカは、ロシアが「旧ソ連邦ウクライナへの攻撃で、ロシア軍兵士498人が死亡した」と発表したことを受けて警鐘を鳴らした。ロシアは初めて死者数を公式に発表したが、キエフはこれを「実際よりも遥かに少ない数字だ」と見ている。
ロシアによる急襲は、月曜の第1回停戦協議が不調に終わった後、停戦協議が再開される前夜に発生した。
ウクライナの断固とした抵抗にもかかわらず、ロシアのプーチン大統領が7日前に命じた攻撃は、国際社会のほぼ全てを無視して一層強化されているようだ。
南東部の主要港があるマリウポルのバディム・ボイチェンコ市長は、「今日は最悪で、一週間の戦争の中で最も残虐を極めた日となった」と述べた。「ロシア軍は何時間もかけて街を破壊し、市民が街から退避するのを妨げようとした。」
同市長はTelegram動画で、「ロシア軍は今日、私たちの全てを破壊したかっただけだ」と語り、ロシア軍の人家襲撃を非難した。
ボイチェンコ市長によると、この攻撃で同市の主なインフラが更に被害を受け、電気、水、暖房が使えない状態になったという。
ワシントンでは、米国国務長官のアントニー・ブリンケン氏が「人的損失はすでに驚異的だ」と警鐘を鳴らし、「ロシアは非軍事施設を攻撃している」と非難した。
ブリンケン氏は、「数千人とは言わないまでも、何百人もの市民が死傷した」と語った。同氏は来週、ウクライナ支援と停戦に向けた活動を強化するため、東欧に赴く予定だ。
キエフは、ベラルーシとポーランドの国境(詳しい場所は非公開)で行われる木曜の停戦協議に代表団を派遣中だが、「最後通牒は受け入れない」と警告した。
国連総会では水曜、ロシアのウクライナからの即時撤退を「要求」する決議が圧倒的多数で採択され、世界の大多数の国々がモスクワを強く非難した。
ウクライナ特使がロシアの行為を「大量虐殺」と呼んで非難するなど、異常な議論が2日以上続いた後、193カ国中141カ国が拘束力のないこの決議案を支持した。ロシアについて反対票を投じたのはエリトリア、北朝鮮、シリア、ベラルーシだけだった。
ウクライナ当局によれば、これまでに少なくとも350人の市民(14人の子どもを含む)が殺害され、侵攻が始まってから数十万人が国外に脱出した。西側諸国は、ロシア経済を麻痺させることを目的として制裁を課すことを決定した。
国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は、752人の民間人の死傷者(227人の死亡を含む)を発表したが、実際は「これよりかなり多い」と考えている。
ブリンケン氏は、「人道的影響は今後ますます大きくなるだろう」と警告している。
国連では、米国大使がブリンケン氏の「民間人犠牲者の増加に対する警告」に追随し、「モスクワはクラスター爆弾その他、国際条約で禁止されている武器を隣国に持ち込んでいる」と非難した。
リンダ・トーマス・グリーンフィールド氏は、国連総会の場で「ロシアはウクライナに対し、より残虐な作戦を準備しているようだ」と述べた。
ロシアは水曜、黒海に面した人口29万人のケルソン港を占領したと発表。しかし、「死者や負傷者を街から運び出し、食料や医薬品を運び込む」許可をオンラインで訴えたイゴール・ニコラエフ市長は、これが事実かどうか確認できていないという。
同市長は、「食料や医薬品がなければ、街中の人間が死んでしまう」と書きこんだ。
AFPは、ウクライナ中部のジトーミルやウクライナ第2の都市ハリコフで、ロシアが市場や住宅街に爆撃した直後だと思われる状況を目撃した。
ウクライナ内相顧問のアントン・ゲラシチェンコ氏は、「夜明け前にロシアの空挺部隊がハリコフに上陸後、ありとあらゆる場所に砲弾を撃ち込んだ」と語った。
人口140万のこの北東部の都市で昨日おこなわれた砲撃は、1990年代のサラエボ民間人虐殺と比較される程のものだった。
ロシア軍の大砲がキエフ郊外に集結する中、ボクシングチャンピオンから市長に転身したビタリ・クリチコ氏は、力強く立ち上がることを誓った。
「敵は首都に近づいてきている」と彼は語った。「キエフは持ちこたえているし、これからも持ちこたえるだろう。我々は戦うつもりだ。」
住民たちは1週間前からキエフへと退避した。また水曜には、数十家族が地下鉄のドロホジチ駅に避難した。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、ビデオ演説で「ロシア軍は、ウクライナと国民全員を消し去りたいと望んでいる」と語った。
その前日には、ナチスによる33,000人以上の虐殺(ほとんどがユダヤ人)が行われたバビ・ヤールのキエフテレビ塔が攻撃され、5人が死亡した。
自身もユダヤ人である44歳のゼレンスキー氏は、世界中のユダヤ人に声を上げるよう訴えた。「ナチズムは沈黙から生まれる。だから民間人の殺害について声を上げよう。ウクライナ人の殺害について叫ぼう。」
民間人の犠牲が増える中、ロシア国内でも紛争への反発が強まっている。モスクワとサンクトペテルブルクでは、クレムリンを批判して収監されたアレクセイ・ナワリヌイ氏がロシア人たちを街頭に集め、プーチン氏を「狂気の小皇帝」と断じた。その後、数十人の反戦デモ参加者が拘束された。
国際的には、米国が新たな制裁措置を発表した。今回は、ロシア同盟国のベラルーシとロシアの防衛産業が標的となった。
権威主義的なベラルーシとロシアは密接な関係にあり、ベラルーシは隣国ウクライナ侵攻の際の重要な中継点となっている。
欧米諸国は、すでにロシア経済に重い制裁を課しており、金融からハイテク、スポーツ、芸術に至るまで、あらゆる分野でロシアへの国際禁止令やボイコットが行われている。
フランスでは、エマニュエル・マクロン大統領が国民演説をおこない、「ヨーロッパは新しい時代に突入した。防衛に投資し、ロシアのガス依存から脱却しなければならない」と述べた。
EUとNATOの加盟国は、すでにウクライナに武器や弾薬を送ったが、軍隊は派遣しないと明言し、ゼレンスキー氏のEU加盟希望は水を差された格好となった。
ロシアを孤立させる最新の動きとして、EUはロシアの国営メディア「RT」と「スプートニク」の放送を禁止し、ロシアの7銀行を世界的な銀行決済システムであるSWIFTから排除した。
ロンドンでは、チェルシーのロシア人オーナーであるロマン・アブラモヴィッチ氏がプレミアリーグのクラブを売却するという「非常に難しい」決断を下したと述べ、その収益をウクライナの戦争犠牲者に寄付すると約束した。
アブラモヴィッチ氏は、プーチン大統領と密接な関係にあるとされるが、ロシアの銀行や企業、親クレムリン派の大物などを対象とするイギリスの制裁リストには名前が挙がっていない。
しかし、同氏は資産差し押さえの可能性を懸念し、このような行動をとったものと見られている。
AFP