• 国連の特別法廷は、資金不足により閉鎖の危機が迫っていると警告していた。

ハーグ：レバノンで2005年に起きたラフィク・ハリーリ元首相の暗殺事件をめぐり、殺人の罪に問われたイスラム教シーア派組織ヒズボラのメンバーの被告2人に対する裁判で、国連が設置したレバノン特別法廷は16日、2人が不在のまま判決を言い渡す。資金不足に陥っている同法廷は、この判決をもって閉鎖される可能性がある。

この事件では、ベイルートで起きた爆弾攻撃事件により、ハリーリ元首相と他の21人が死亡し、226人がけがを負った。オランダのレバノン特別法廷（STL）は3月の控訴審で、ハッサン・ハビブ・メルヒ、フセイン・オネイシの両被告に対し、有罪判決を下した。

しかし、2人の被告が刑務所に収監される可能性は低い。ヒズボラがこの2人や2020年に終身刑を言い渡された3人目の男であるサリム・アイヤシュ被告の引き渡し拒んでいるためだ。

その一方、STLは、2009年の開設から現在までにかかった費用が6億～10億ドルになると推定されており、資金不足により法廷の閉鎖の危機が迫っていると警告していた。

STLは声明の中で、メルヒ、オネイシ両被告に対し、現地時間の17日午後2時（グリニッジ標準時12時）に判決を言い渡すと述べた。

イスラム教スンニ派を代表する億万長者であるハリーリ元大統領は、2004年10月に首相の座を降り、翌2005年2月14日、ベイルート臨海地区を通行中だったハリーリ氏の装甲車列を狙った自爆テロにより暗殺された。

この攻撃をきっかけに抗議運動が沸き起こり、レバノンを29年間武力支配していたシリアを撤退させた。

STLは、国連安保理決議に基づいて設置され、最終的にアイヤシュ、メルヒ、オネイシ、アサド・サブラの四被告の審理を行った。

裁判は、携帯電話の通信記録の状況証拠に依拠して進められた。この記録について検察側は、ヒズボラによる攻撃の企てを示すものだとしてきた。

STLは当初、アイヤシュ被告を有罪とし、他の3人については無罪としていた。

STLは、シリア政府やその同盟組織であるヒズボラの関与を示す直接証拠はないとしたものの、攻撃には国家が関与した可能性が高く、最も利益を得たのはシリアだと述べていた。

しかし、今年3月、STLは検察側の控訴を受けた控訴審で、メルヒ、オネイシの両被告に有罪判決を下し、判決理由では、証拠に欠けているとした一審の判断に「誤りがあった」と述べた。STLは、サブラ元被告を無罪とした一審判決については支持した。

有罪となった3人の男は、なお逃亡を続けている。ヒズボラの指導者であるハッサン・ナスラッラー氏が、被告を引き渡すことや、裁判自体を認めることを拒否しているからだ。

レバノンの政治的な問題や、巨額の裁判費用と裁判の遅滞をめぐる論争に見舞われてきたSTLは、昨年7月、資金が枯渇しているため、未処理の控訴審すべてに対応した後に法廷を閉鎖しなければならなくなると述べた。

法廷が閉鎖された場合、レバノンの政治家を狙った2004、05年の別の3つの襲撃事件について罪を問われているアイヤシュ被告に対し、さらなる裁判が行われない可能性も出てくる。

STLは、予算の51%を有志の国々からの寄付、残りをレバノン政府からの拠出金でまかなっている。そのレバノンは現在、1975年から1990年まで続いた内戦以降、最悪の経済危機に陥っている。

AFP