
アラブニュース
ロンドン:この夏、数千もの家族がガザのビーチに集まり、海岸はガザ地区で最高の娯楽の場となっている。徹底した下水浄化活動のおかげで、この数年で初めてガザ地区の海岸の大半が泳げるほどきれいになった。
「水が安全ではなかったので、7年間来ませんでした。今ではかなり良くなったように見えます・・・色が違って、より青くなりました。今日は今年2回目の海水浴です」とナビラ・ハニヤさんはガーディアン紙に語った。
「私たちは多くの紛争と困難に見舞われています。子どもたちには楽しむ権利があるはずです」とハニヤさんは述べた。
イスラエルとエジプトによる封鎖が15年続く中、ガザに暮らす220万人の人々にとって最も差し迫った問題は、清潔な水へのアクセスだ。
イスラエルの輸入規制と、適切なメンテナンスの欠如によって、下水処理工場は数年前に機能不全に陥った。ガザで唯一の帯水層の水のうち約97%はもはや飲用に適さなくなっていると、ガーディアン紙は伝えている。
10年以上の間、未処理の廃棄物が直接海に流され、環境災害を引き起こし、孤立した地区における数少ない娯楽の場を汚染してきた。
しかし、より安定した豊富な電力供給のおかげもあって、国際的な資金提供を受けたガザの3つの下水処理工場は、この1年間で操業を拡大することができた。
2021年10月には、1日あたり18万立方メートルの下水が地中海に廃棄されていた。今では、下水の70%は最新の処理施設へ運ばれ、残りの30%には部分的な処理がなされている。その結果、水が環境サイクルに戻る前に95%の廃棄物が除去されている。
こういった改善により、海洋汚染が近年で最低の水準まで減少し、地域の水管理当局は海岸の65%は「グリーン」もしくは「イエロー」に分類されると発表し、泳いでも安全であることを示した。
ガザの街の南にあるシェイク・イジリン地区のビーチでは、子どもたちが波とたわむれ、両親にラクダ乗りや綿菓子をねだる。シェイク・イジリンのビーチを監視する7人のライフセーバーはガーディアン紙に対し、今年の夏は記憶にある中で最も忙しいと語った。
移動が厳しく制限されたガザにおいて、青く澄んだ水の光景は喜ばしいものだ。ガザでは、人口の半数以上が職に就けず、電気や医療のインフラは崩壊している。
ハマスが転用する可能性がある建築材料などの、イスラエルが「軍民両用の品」とみなす物は持ち込みが禁止されているために、ガザの清潔な水の供給は脅かされ続けている。
「下水処理および海水淡水化施設の消耗したポンプを交換する必要があります。そうしなければ、あふれ出してしまうからです。しかし、簡単に発注することはできず、部品を取り寄せるためには、承認を得たり、イスラエル側と交渉したりする必要があります。それを終える頃には、さらなる損傷が発生しているのです」と、ガザの沿岸自治体水道局のオマル・シャタト副事務局長はガーディアン紙に述べた。
「占領がなければ、5年間でガザの水循環のバランスを取り戻せるでしょう。今の状況では、ここでは持続可能と言えるものは何もありません。5年後、20年後に何がガザに必要か予想しようとしてみますが、それは不可能です」と同氏は述べている。
シャタト氏は、海の浄化についての今年の進捗は、はかなく、簡単に失われてしまうものだと警告する。「もし電力供給がまた不安定になれば、より多くの下水が海に廃棄されることになります。状況が変わったのは、ここの下水の問題があまりに大きくなり、イスラエルのビーチや海水淡水化プラントにまで影響を及ぼし始めたからだと考えています」