ベイルート:レバノンの保健省は6日、危機の最中にあるレバノン国内で、数十年ぶりとなるコレラ患者を確認したと発表した。
戦禍で荒廃した隣国のシリアが、この1ヶ月で全国に蔓延したコレラを食い止めようと苦戦している中での発表となった。
レバノンでは2019年後半から国内状況悪化の悪循環が始まり、人口の4分の3の国民が貧困に陥った。停電の多発、水不足、急激なインフレなどにより、数百万人の人々の生活環境が悪化している。
保健省の発表によると、今回感染が確認された患者はレバノンの貧しい北部の田舎にあるアッカル地方出身で、この地方はシリア国境に接している。この患者が、水媒介性の感染症であるコレラの、1993年以来初の患者となった。
フィラス・アビアド保健相は症例確認を受けて、大流行を防ぐための手段について関係当局や国際機関と協議した。
WHO(世界保健機構)によると、コレラの感染はコレラ菌に汚染された食品や水を摂取する事によって起こり、ほとんどの症例は軽度から中等度であるものの、治療を受けなければ死亡する事もある。
WHOの東地中海地域緊急ディレクターのリチャード・ブレナン氏はAP通信に対し、WHOはレバノン政府やその他のシリア隣接国と、コレラの可能性のある国内の事例に対応するための必需品の提供について、話し合いを行っていると語った。
ブレナン氏は「国境をまたいだ感染の広がりは懸念事項であり、我々は相当の予防策を講じている。最も弱い立場の人々を守る事が極めて重要になる」と語った。
ブレナン氏はまた、ワクチンの供給が世界的な需要に対して不足している、と付け加えた。
レバノンの貧困家庭は、飲料水や生活用水のためのウォータータンクを購入する余裕がなく、水の配給に頼る事が多い。
国連とシリア保健省は、この大流行は、ユーフラテス川の安全ではない水を人々が飲む事や、汚染された水を作物の灌漑に使用する事による食べ物の汚染が原因だとしている。
シリアの医療サービス機関は長年の戦争により甚大な打撃を受けており、一方で国内のほとんどの地域で水質浄化設備も不足している。
AP