
アラブニュース
ドバイ:空前のデモの波がイラン全土に広がる中、国際社会、特に欧米がイラン国民を支持し、同国の体制に対する制裁を強化することが重要である。イランの政治的反体制グループのイギリス代表が語った。
「米国が犯した戦略的錯誤が何であれ、(ジョー・バイデン米大統領の)政権は今こそそれを正し、政策を変える時です」
「イラン国民と共に立ち、変化を要求するその声を支持するべきです」。そう語るのは、イラン国民抵抗評議会(NCRI)イギリス代表のドウラト・ノウルージ氏だ。トップの政策立案者やビジネスリーダーに話を聞くアラブニュースのトーク番組「フランクリー・スピーキング」で司会者ケイティ・ジェンセンがインタビューを行った。
1981年に設立されたNCRIはイラン体制の転覆を目指す様々なグループで構成される政治連合だ。メンバーの大半は政治的迫害により亡命を余儀なくされており、欧州などの西側諸国で活動している。
ノウルージ氏がイラン国民への支持を訴えた背景には、22歳のクルド人女性マフサ・アミニさんが道徳警察による拘束中に死亡した事件に端を発したデモによってイスラム共和国の体制が揺さぶられ続けているという状況がある。
アミニさんはイランで義務付けられているヒジャブの着用の仕方が不適切だとして拘束され、その2日後にテヘランのカスラ病院で死亡が確認された。当局は持病が死因だと主張したが、遺族や同時に拘束された人々の証言とリークされた診療記録から、彼女が酷く殴られていたことが分かった。
地元クルディスタン州で行われた彼女の葬儀の際に単発的に始まったデモは国内に急速に広がり、体制を転覆する可能性のある全国的な反乱へと雪だるま式に発展した。
ノウルージ氏によると、イランの治安部隊によりデモ参加者400人以上が殺されており、子供を含む2万人が体制によって逮捕され、刑務所や収容所で拷問や裁判なしの処刑にまで至る恐ろしい状況に置かれている。
国が組織する脅迫キャンペーンが行われる中でも、デモ参加者たちは目標への決意を固めているとノウルージ氏は言う。
「つい数日前のことですが、デモ参加者のうち若者や大学生を中心とした2000人が『Bゲート6号』という非常に悪名高い収容所に連行されたという情報が入りました。政治囚や抗議者に対しあらゆる種類の残酷な拷問が行われている収容所です」
「そのような状況にもかかわらず、彼らは自分たち(が身を捧げていること)を知っており、国を取り戻すためには全てを犠牲にしなければならないことを知っているのです」
「現在起こっていることが止まることはないと断言できます。イラン国民は自分たちの国でもうすぐ新たな民主革命を起こす途上にいるのです」
イランの治安部隊によって数千人が殺害され数万人が逮捕された2019年11月や2020年1月のデモなど、全国的なデモの例はこれまでにもあったが、「今回は決定的に違います」とノウルージ氏は指摘する。
「全国的な反乱運動であり、多くの人を動員しています。178もの主要都市に抗議・反乱が広がっているのです。特筆すべきは、イラン全国31州のほぼ全てを網羅していることです。そして今回はイラン社会の様々な部門が(反乱に)関与しています」
現在行われている平和的抵抗を成功させるためには、欧米はイランに対して取ってきた宥和政策を改める必要があるとノウルージ氏は言う。
「残念ながら、イラン体制に対して宥和政策が取られてきました。今すぐそれを変える必要があることを欧米は認識しなければなりません。ただ、米連邦議会に関する限り状況は違います。特に最近の決議118では、260人の議員がイラン国民の抗議を強く支持したのです」
2021年2月に連邦議会で可決された決議118では、「米政府関係者やイランの反体制派を標的とした、イラン国家が支援する暗殺・テロ攻撃」が非難され、体制に対する国民の抗議行動への支持が表明された。
そのような措置が正しい方向への一歩であることは確かだが、「政府に関しては、イラン人コミュニティーや反体制派の要求に(応えるなど)もっと積極的に行動する必要があります」とノウルージ氏は付け加える。
イラン体制の資金源を奪うことが重要だとノウルージ氏は指摘する。
「彼らはテロを輸出しており、(一方で)核兵器を獲得しようとしています。それは全て、イラン国民のものである石油や天然ガスから得られる国の収入から盗んだお金で行われています。体制はそのお金を建設ではなく破壊に使っているのです」
石油や天然ガスが豊富なイラン南部の諸州では、デモや労働者主導のストライキにより主要な石油化学施設が閉鎖に追い込まれた。これは大きな進展だとノウルージ氏は見る。
「これは非常に重要な役割を果たします。特に資金と貿易に関して、体制の経済(の生命線)を(遮断)できるからです」
このような行動はデモ隊に対する残虐行為に資金提供する体制の能力を奪ったと同氏は指摘する。石油や天然ガスの埋蔵量という意味ではイランは物凄く豊かであるにもかかわらず人口の80%は貧困線以下の生活を送っているが、体制はそのことを認識しているという。
あらゆる形の抵抗を鎮圧する体制の能力を奪ううえで西側諸国、特に欧州が重要な役割を果たすことができるとノウルージ氏は言う。
「イラン国民や、自由と民主主義という彼らの主要な要求を支持するために、彼らは非常に重要な役割を果たすことができると思います」
「そのためには、ここ数週間のデモで行われた処刑や恣意的な逮捕などの体制の非道行為を言葉で非難すること以外にも、欧米諸国にはできることがたくさんあると思います。例えば、大使(返すこと)ができると思いますし、するべきです」
「また、自国のイラン大使館の閉鎖も行うべきです。私たちが知る限りの現実として、それらは体制によって、あらゆる種類の諜報活動だけでなく、テロの輸出や、欧州のテロリストネットワークへの物流・資金・財政支援・兵器の提供に使われているからです」
ノウルージ氏は一つのテロ計画に言及する。在オーストリア・イラン大使館の第三外交官であったアサドラ・アサディ氏が、NCRIがパリで開催する集会を標的にするために、高性能爆弾を自分のスーツケースに入れて欧州数ヶ国を通過したのだ。
「70ヶ国以上から数千人の政府関係者が参加していました。幸い計画は阻止され、アサディ氏と共謀者たちは逮捕されました」
1979年のイスラム革命以降、イランは4大陸で50以上の襲撃、暗殺、爆破を実行し、数百人の外国政府関係者、イランの外交官、一般市民を殺害してきた。そのような国家が支援するテロを止めるためには、米国やEUによる介入や具体的な措置が助けになるとノウルージ氏は言う。
「体制、特に若者や女性の処刑や拷問に深く関与している政府関係者や(イスラム)革命防衛隊に対して、あらゆる種類の包括的な制裁を科すよう求めています」
「また、イラン国民の正当な自衛権を認め、実際に支援を継続し、変化と希望を求める何百万人ものイラン国民の側に立ってくれるよう呼びかけています」
ノウルージ氏は、自分たちの国に変化をもたらそうというイラン国民の決意と覚悟を指摘する。
「確実に言えるのは、イラン国民が(抗議を)続けるということです。アミニさんに起こったことを彼らは知っているのですから。アミニさんだけの問題ではありません。同じことが他の誰かの姉妹、妻、母や、周りの人の身にも起こり得たのです」
「国民に対するあらゆる種類の犯罪に体制が関与していることを彼らは知っています。だから、イラン国民の大多数は決意を固めており、その決意は体制が倒れるまで続くでしょう」
デモは国際社会に対し、「イラン国民、特に女性差別的で残酷な体制の主な犠牲者となっている女性たちが、変化を起こすことを固く決意している」ことを示したとノウルージ氏は言う。
「彼らはうんざりしています。民主主義を、宗教と国家が分離した民主的な共和国を求めているのです。だから、体制による非人間的行為、非道行為、抑圧、攻撃にこれ以上耐えられるわけがありません」