ルーカス・チャップマン、アリ・アリ
アレッポ、シリア:1月22日午前2時30分、シリアのアレッポにあるクルド系住民が多数を占めるシャイフ・マクスード地区を悲劇が襲った。5階建ての住宅ビルが崩壊し、住民数十人が瓦礫の山の下に埋まったのだ。
日夜救助が続けられた末、16人の遺体が回収され、2人の生存者が近隣の病院に搬送され治療を受けた。国営メディアによると、この建物の基礎は水漏れによって劣化していた。
反体制派と体制側の両方によって行われている厳しい包囲のもとで何とか生き残ろうとしているシャイフ・マクスードの住民にとって、今回の事故は繰り返される災難の最新の例に過ぎない。
かつては貿易、旅行、文化の中心地として栄えたアレッポは、この10年間で戦場へと変わり、市の大部分が荒廃してしまった。
前線が別の場所に移るにつれ、シリア第二の都市であるアレッポは徐々に再建され始めた。しかし、同市内の北西端にある飛び地の自治区であるシャイフ・マクスードは依然として生存をかけて戦っている。
反体制組織とシャイフ・マクスードの自衛民兵組織との間の長年にわたる戦闘によって、2平方キロメートルあるこの地区の半分は破壊されているが、住民は通常の生活を送り続けるために最善を尽くしてきた。
この1年間、特に残忍な一つの部隊が、医薬品から燃料や食料に至るまであらゆるものをこの地区の住民から奪っている。イランに支援されたシリア軍第4機甲師団である。
住民は身にしみる冬の寒さをしのぐのに苦労している。
12月にシャイフ・マクスードを訪れたアラブニュースに対し、ある住民は、「燃料がないのでゴミを燃やしています。私はそのせいで胸の病気になりました。今週は病院に2回行ったんです」と語った。
シャイフ・マクスードおよびアシュラフィーヤ総評議会のメンバーであるメライ・シブリ氏は、シャイフ・マクスードには50日以上燃料が届いておらず、住民は自家発電機の燃料が空になって1日に1時間以下しか電気を使えないことも多いと話す。
「燃料が手に入らない。子供やお年寄りは寒さに耐えられない」とシブリ氏は言う。「医薬品さえも届かない。届くものは非常に高価だ。6ヶ月前には小麦粉の供給が止まって全てのパン屋が20日以上閉まった」
シブリ氏によると、この地区に到着する燃料トラック1台ごとに第4機甲師団は最大250万シリアポンド(380ドル以上)を要求するという。シリアの平均月給が僅か15万シリアポンド(約23ドル)であることを考えると重い負担だ。
「電気がないので、工房や仕立て屋はもうすぐ店を閉めるだろう。やがて若者は全員職を失い、暗い家の中で座っているしかなくなる」
第4機甲師団のルーツは1980年代に遡る。当時のハーフィズ・アサド大統領の弟であるリファアト・アサド氏が国外に逃亡した際、同氏の準軍事組織「防衛旅団」がいくつかの民兵組織に分解された。
これらの組織の中からやがて結成された第4機甲師団は、後にシリア危機の初期からダルアー、バニヤース、イドリブ、ホムスなどでの反乱の鎮圧に利用されるようになった。2011年のヒューマン・ライツ・ウォッチ・レポートの記述によると、第4機甲師団は恣意的な拘留やデモ参加者の殺害などのいくつかの人権侵害に関与した。
第4機甲師団の事実上の司令官は、シリアのバッシャール・アサド大統領の弟であるマーヘル・アサド氏だ。レバノンのアル・モドン紙の調査によると、イランがシリア内戦に介入し始めて以来、第4機甲師団は同国から物資、資金、助言などの支援を受けている。
内戦初期、シリア軍は離反や内紛に疲弊していた。第4機甲師団もその影響を免れなかった。シリア軍の部隊の多くの例に漏れず、戦力増強のためにイランの民兵に頼らざるを得なかったのだ。
第4機甲師団によって包囲されているのはシャイフ・マクスード地区だけではない。アレッポの北、アフリーンとの間にあるシャフバー地区にも包囲がおよんでいるのだ。この地区にはテル・リファトという町(人口約1万8500人、うち1万5700人が国内避難民)、および5つの難民キャンプ(アフリーン郡からの国内避難民数千人が住む)がある。
シャフバーにある体制の検問所の一部では、バッシャール・アサド大統領やハーフィズ・アサド元大統領の写真の隣にイランの最高指導者アリー・ハメネイ師の写真が飾られている。
テル・リファット地区の共同議長であるムハマド・ハナン氏はアラブニュースに対し次のように語った。「シリア軍に加わる人はもういない。軍の兵士は全てイランの傭兵だ。ここに来る傭兵たちの目的は、全てを奪って自国の物にすることだ」
ハナン氏が説明するところでは、シャフバー地区に駐留するイランの民兵は、テル・リファトとアレッポの間にあるシーア派住民が多数を占める町ヌブルとザハラを守ることを主な任務としている。
2013年から2016年の間は反体制派組織がシャフバー地区を支配していたが、クルド人民防衛隊(YPG)によって追い出された。当時は、シリア国軍の駐留地は主に地区内の小さな町や村に限られていた。
しかし、2018年にトルコがアフリーンに侵攻すると、同国に支援された反体制派組織からシャフバー地区を守るという口実のもと、政府軍の人数が(結果としてイランの傭兵の人数も)増え始めた。
ハナン氏は、「結局のところ彼らは何も守っていない。現在まで、シリア体制はあらゆる機会をとらえて我々を弱らせシャフバーを全て乗っ取ろうとしてきた」と言う。
同氏や他の地元関係者がアラブニュースに語るところでは、体制の検問所は国連やその他のNGOからの命にかかわる支援物資がシャフバー地区に届くのを妨げているという。
シャフバーにあるアヴリン病院の院長であるアザド・レショ医師はアラブニュースに対し次のように語る。「体制の第4機甲師団は道路を封鎖している。外から燃料やプロパンなどを持ってきたいと思ったら、小分けにするしかない」
「医薬品の場合も同じだ。体制側から供給される必要がある。国際的な保健機関がシリアに支援物資を提供する時も、体制がステータスを持っているため、全ての支援物資は体制を通さなければならない」
「ここにはロシアやイランなどの外国の軍も来ている。全て政治のゲームなのだ。体制が支援をくれることがあるとしたら、これらの軍の利益になる場合だけだ。このような状況のせいで、我々は政治の犠牲者になっている」
クルド赤新月社シャフバー支部の管理者であるハッサン氏はアラブニュースに対し次のように語った。「酷い状況だ。医薬品が全くない。我々は救急患者にのみ対応している。皮膚科医も腎臓専門医もいない。MRI装置などの設備もない」
「そういったニーズのある患者はアレッポに移送しなければならないが、それにも問題がある。そういった患者が(アレッポに)入るのを体制に止められることがよくあるのだ」
ただ、息の詰まるような供給制限を課されているシャイフ・マクスード地区とシャフバー地区においても、第4機甲師団はある商品については地区内に入ってくるのを喜んで許可しているようだ。ドラッグである。
昨年にニューヨーク・タイムズ紙の調査が明らかにしたところでは、第4機甲師団はシリア各地におけるカプタゴン錠やクリスタル・メスの製造・流通に関与している。これらのドラッグを国境検問所や港湾都市に運んでいるという。
シャイフ・マクスードの地区内治安部隊の関係者であるケーレマン氏はアラブニュースに対し次のように語る。「我々はつい最近、ハシシ124kgを押収・焼却した。この124kgはシリア体制、つまり第4機甲師団、ヒズボラ、その他のイランの支援を受けた組織が持ち込んだものだ。石油の容器に入れて持ち込もうとしていた」
「彼らは色々なもの、特に麻薬錠剤をメンバーに持ち込ませ、人々の間に蔓延させようとしている」
シブリ氏は、包囲が行われているにもかかわらず「人々は非常に打たれ強い」と話す。
「体制は我々が敗北して2007年に逆戻りするのを望んでいるのだろうか。我々全員が一つの旗、一つの言語、一人の指導者のもとに従わなければならないと彼らは主張している」
「シャイフ・マクスードに住む我々は民族の共存と兄弟愛を望んでいるのに、体制は我々を受け入れない。しかしもちろん、自由を見出した人々が再び体制に取り込まれることはあり得ない」