
テヘラン、ベルリン:イランのイブラヒム・ライシ大統領は3日、イラン全土で毒物事件が相次ぎ、数百人の女子生徒が被害を受けたのはイランの敵のせいだと非難した。
これまでのところ説明されていない毒ガス攻撃は、11月にイランの聖都コムで始まり、少なくとも4都市の30以上の学校で行われた。一部の保護者は子供の通学をやめさせた。
イランの保健大臣は28日、異なる学校に通う数百人の女子生徒が被害を受けたと明らかにした。数人の政治家は、女子教育に反対する宗教集団に狙われた可能性があることを示唆した。
ライシ氏は3日、国営テレビで生中継された演説で、イラン南部の群衆に語りかけ、毒物事件はイランの敵のせいだと非難した。
この動画から取った画像に写っている若い女性(学校で行われた毒ガス攻撃の被害者)はイランの病院で酸素吸入をしている。場所は特定されていない。(ロイター)
「これは治安を乱す計画だ。イランを混乱に陥れるのが目的だ。敵は、保護者や生徒に恐怖感・不安感を植え付けようとしている」と同氏は述べた。
同氏はその敵を名指ししなかったが、イランの指導者らは、米国やイスラエルなどがイランに不利なことをしていると常々非難している。
これとは別に、イラン高官は、テヘラン郊外にある学校の隣で見つかり、他の2都市でも見つかった燃料輸送トラックが、おそらく毒物事件に関与していると述べた。
当局はそのトラックを押収し、運転手を逮捕した。パルディス地区のレザ・カリミ・サレハ副知事が半国営タスニム通信に明らかにした。
同氏は、相次ぐ毒物事件に関連した逮捕を報告した最初の政府関係者だ。
同じトラックがコムやイラン西部ロレスターン州ボルジェルドにも来ており、それらの地域でも生徒が中毒になった、と同氏は述べた。詳しい説明はなかった。
「その燃料輸送トラックが止まっていた駐車場の警備員も中毒になった」と、サレハ氏はパルディスの現場に言及して話した。
ジュネーブの国連人権事務所は3日、この攻撃の調査の透明性を高めるよう呼びかけた。
国連人権高等弁務官事務所のラビナ・シャムダサニ報道官は説明会で「不可解な状況下で少女たちが意図的に狙われているという申し立てを、私たちはとても気にかけている」と述べた。政府による調査の結果を公表し、加害者を裁くべきだ、と同氏は述べた。
イランの政治家の中には、女子生徒が女子教育に反対する宗教集団に狙われた可能性を示唆する者もいる。
ソーシャルメディアには、入院している少女の画像や動画が数多く投稿されている。吐き気と心臓の動悸がすると言っている人たちがいた。頭痛や動悸を訴える人たちもいた。
女子生徒たちは、昨年9月にイラン系クルド人女性が拘留中に死亡した事件が引き金となった反政府デモにも参加している。彼女たちは教室で、着用を義務付けられたヒジャブを脱ぎ、最高指導者アヤトラ・アリ・ハメネイ師の写真をびりびりに破り、同氏の死を求めている。
昨年投稿されたインターネットの動画には、女子生徒がヒジャブを振り回し、イランの民兵組織バスィージのメンバーをやじる様子が映っている。
ドイツの外相は、この事件を徹底的に調査し、調査の透明性を高めるよう求めた。
「イランで女子生徒が毒物の被害に遭ったという報道は衝撃的だ」とアナレーナ・ベーアボック外相はツイッターに投稿した。
「テヘランであろうとアルダビルであろうと、少女たちが安心して通学できるようにしなければならない。これは彼女たちの人権に他ならない」とベーアボック氏は訴えた。
「全ての事件を徹底的に調査すべきだ」と同氏は主張した。
一方、世界保健機関(WHO)のマーガレット・ハリス報道官は、WHOは今回の事件に関してイランの保健当局や医療専門家と連絡を取っており、「より良い証拠をつかむために、他の手段を使ってこの事件についての理解を深めている」と述べた。
今回の毒物事件は、イラン全土に怒りの波を引き起こしている。批判している人たちは、標的にされたと報じられる学校の数が増えているにもかかわらず、政府関係者が沈黙していることを非難している。
ドイツとイランの関係は、昨年9月のマフサ・アミニ氏(22)の死をめぐる抗議デモの波の後、特に緊張している。
ベーアボック氏は彼女自ら、抗議デモに対するイラン政府の流血の弾圧や、反政府デモ参加者の処刑に対する西側諸国の非難の声の先頭に立っている。
一方、イランは2日、報復措置としてドイツの外交官2人を追放した。その前にドイツ政府は、ドイツとイランの二重国籍を持つジャムシド・シャルマフド氏が死刑判決を受けたことに対応し、同様の措置を取っていた。
ロイター/AFP