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サウジの「ビジョンと惜しみない貢献」は世界の健康問題に対するWHOの活動に「非常に適合している」

結合双生児の分離手術を行う専門外科医たち。2022年5月15日、リヤドの病院。(KSrelief配布写真)
結合双生児の分離手術を行う専門外科医たち。2022年5月15日、リヤドの病院。(KSrelief配布写真)
眼の検診を行うKSreliefの医療従事者たち。バングラデシュ。(SPA)
眼の検診を行うKSreliefの医療従事者たち。バングラデシュ。(SPA)
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27 Mar 2023 03:03:33 GMT9
27 Mar 2023 03:03:33 GMT9
  • アニル・ソニCEOは、中東の人道・健康危機には「緊急支援と長期的解決策」の両方が必要だと指摘する
  • 援助機関KSreliefによる「素晴らしいモデル」と、サウジビジョン2030の非営利活動や慈善への注力を称賛する

ロバート・エドワーズ

ロンドン:WHO財団は新型コロナパンデミック中の2020年に、世界保健機関のミッションを支援するべく、慈善家、財団、企業、個人から新たなリソースを集めるために設立された。

国連の専門機関であるWHO、そしてWHO財団は、どちらもジュネーブに本部を置いているが、後者は法的にWHOから独立している非営利の助成金提供団体だ。

貧困国の医療改善に20年間取り組んできた実績を持つアニル・ソニ氏は、2023年までに年間10億ドルを調達するという目標を掲げてCEOに就任した。アラブニュースの書面インタビューに応じた同氏は、WHO財団がどのようにWHOの政府間組織としての性格を尊重しながらその活動を支援・補完しているかについて語ってくれた。

WHO財団のアニル・ソニCEO。(提供写真)

アラブニュース:WHO財団がどのように寄付者からの支援を調整しているのか、またWHOがその資金をどのように使用しているのかについてご説明いただけますか。

アニル・ソニCEO:WHO財団の目的は、WHOによる人命救助や重要な活動と様々なコミュニティーの間の架け橋となることです。これらのコミュニティーは、関与、パートナーシップ、そしてもちろん惜しみない寄付を通して、WHOの活動を後押しすることができます。

私たちは、WHOが人命を救う医薬品や物資を必要としている人々のところに届けるのを支援するために、民間部門をはじめとする複数のパートナーからリソースを調達しています。

トルコ・シリア地震、サヘルとアフリカの角での食料危機、ウクライナ紛争などの世界的課題は、全ての人に影響を与える危機に私たちが直面していること、そして協力が必要であることを示すよい例です。

これらの逆境には単一の部門だけでは対処できません。WHOは国連のいくつかの国際機関の一つですが、国連と各国政府だけでは力不足です。個人や企業とも協力する必要があります。

少額であっても全ての寄付に意味があります。積み重なれば人々の人生を変えるようなイニシアティブを実現できるからです。例えば、私たちは新型コロナパンデミック中に「Go Give One」というキャンペーンを行いました。5ドルの寄付で1回分のワクチンを買うというものです。コーヒー一杯分の金額です。企業や慈善家からの数百万ドルも寄付も重要ですが、一つ一つの寄付に意味があるのです。

資金の動員についてはいくつかの方法で行っています。私たちは、変化や解決策に貢献する機会を探している慈善家や企業に対し、触媒的・変革的な関与の方法を仲介しています。

数百万人が被災し(十数年前のハイチ地震以降最多の)5万人以上の命が失われたトルコ・シリア地震に対しては、WHOは救命ツールの調達と迅速な配布を継続しています。

私たちの最も緊密なパートナーの一つがSpotifyです。Spotifyはリスナーがトルコとシリアでの救援活動に貢献する機会を作るべく、私たちの寄付ウェブページに個人(Spotifyユーザー)を誘導するための手助けをしてくれました。

全ての寄付は被災者救援活動の支援に直接使われます。メンタルヘルスサービス、身体的リハビリ、医薬品のほか、衛生施設、清潔な水、医療サービスを利用できないことから生じる伝染病のリスク軽減や対応に必要なツールや物資などです。

Q:地震被災地での援助物資配分や支援が偏っているとして援助機関が批判されています。特にトルコとシリアの間での、またシリア内の体制支配地域と反体制派支配地域の間での格差を指摘する声があります。このような複雑な背景下での援助をより公平にするにはどうすればよいでしょうか。

A:往々にして、危険に直面し助けを必要としている人々は、激しい政治的議論の対象となっている環境や、文字通りの激しい紛争の中にいます。それこそがWHOの活動が重要である理由の一つです。あらゆる所で活動しているからです。WHOは加盟国間の協力で成り立っている国連機関です。世界中の政府がWHOの活動とガバナンスに参加しているのです。

また、WHOの緊急チームは世界中のあらゆる地域にいます。シリアで内戦中もずっと活動を続けている数少ない機関の一つです。政治的状況や紛争の性質を理由に人々のニーズに対してバイアスを持たないようにすることが重要です。むしろ肝心なのはヘルスケア、医療サービス、医者です。医者の仕事は政治に関わり合うことではなく、助けを必要としている人々が適切な医療を受けられるようにすることです。

先月シリアを訪問したWHO事務局長のテドロス(・アダノム・ゲブレイェソス)博士にはとても感銘を受けました。彼はこの10年あまりで初めてシリア北西部に入った国連機関トップとなりました。内戦のせいでこれまで途絶えていたのです。WHOは地震発生直後、アアザーズとイドリブにあるパートナーの倉庫から、シリア北西部の医療施設200ヶ所以上に183トンの物資を配布しました。

その後、シリアの被災地に297トンの緊急支援物資と必須医薬品を届け、370万5000回の治療(心の傷のケア、糖尿病治療、肺炎治療など)を可能にしました。

Q:中東・北アフリカ(MENA)地域が直面する医療上の主な課題は何ですか。WHOのために追加の資金を動員することでそれらの課題に対処できるでしょうか。金銭的な支援にとどまらず、健康格差の背後にある構造的問題を解決するものになり得ますか。

A:それこそが私たちの志です。そうしなければこれらの緊急事態や不公平なニーズに直面し続けることになるからです。現在のMENA地域は目立って悪い状況です。緊急支援と長期的解決策の両方を必要とする人道・健康危機が同時多発しているからです。

トルコ・シリア地震、シリア内戦、レバノンやシリアでのコレラ流行などの深刻な出来事は、気候変動や長期的なダイナミクスが生み出したものであり、持続的な対応と関与が必要です。

現在のMENA地域は支援を提供できるかつてなくユニークな立場にあります。住民や官民の間で経済が急激に繁栄しているからです。重要なのは必要なリソースを調達すること、そして一つ一つの寄付が人道危機対応に多大な役割を果たすという意識を高めることです。私たちはそれをWHO財団で行っているのです。

若い患者を診察するWHOソマリア緊急援助調整官のオマール・サレハ医師(左から2番目)。2012年6月10日、フドゥール地域の病院。(AFPファイル)

しかし、同じくらい重要なのは、不平等の背後にある構造的問題や制度的理由を解決し、パートナーのリソースをフルに活用する必要性です。例えば、私たちはパートナーを単なる資金源としては見ていません。どうすれば彼らに、独自のプラットフォーム、人材、能力、物資を通して私たちの人道援助活動動員を支援してもらえるかも考えているのです。

先ほどお話ししたSpotifyは、私たちが地域の医療システムを構築し緊急対応態勢を高めるために数百万人のリスナーからリソースを集める手助けをしてくれました。

ですから、こういったリソースを調達しパートナーシップを仲介する際に目指しているのは、緊急時の対応だけでなく、基礎となる医療システムを構築し、コミュニティーの医療従事者や十分な物資を確保することなのです。

私たちは長期的な資金調達について、また緊急事態への機敏な対応や将来的な危機(感染症の流行の可能性など)の予測を可能にする強力なシステムの構築について考えています。

Q:WHO財団は世界の準備態勢を高めるためにどのようなことをしていますか。新型コロナへの対応や将来のパンデミックへの対応のみが想定されているのでしょうか。それとも現れつつあるその他の健康脅威(環境的危機や栄養的危機など)も含まれるのでしょうか。サウジアラビアなどの国はどのような備えができますか。

A:WHOとWHO財団は協力して準備態勢の向上に積極的に取り組んでいます。例えば、アフリカ大陸における健康安全保障を強化するためにケニア、セネガル、南アフリカに緊急対応ハブを設置しているところです。これにより、緊急事態が宣言されてから24~48時間以内に人命を救う医療用品や設備を送ることができるようになり、配備までの時間が最大60日間短縮されます。

内戦で荒廃したシリアの反体制派掌握地域を初訪問中に地震避難者のシェルターを訪れたWHOのテドロス・アダノム・ゲブレイェソス博士事務局長(中央)。2023年3月1日、トルコとの国境近くのカフル・ルシン。(AFP)

これらの地域緊急対応ハブは各国政府と緊密に協力して共同緊急対応のために取り組んでおり、医療用品・設備、訓練施設、感染症監視を事前に準備しています。しかし、これらのハブは感染症への対応だけでなく、コレラなどの水媒介感染症のリスクを回避するために清潔な水を持続的に供給できるようにすることなどを通して生活の質の向上の支援も行います。

WHOは常に先を見据え、私たちの支援を最も必要とする場所をより適切に予測するために、気候変動の傾向を分析したり地政学的な影響を予想したりしています。また、各国政府や保健指導者とも協力し、それらの国がまだ経験したことがなかったりする健康危機への対処を支援しています。

サウジアラビアに関しては、そのビジョンと惜しみない資金提供、そして企業や国民との緊密な協力は、WHOの活動に非常に適合しています。私の理解ではサウジアラビアは、特にビジョン2030のもとで、自分たちの幸福、他者の幸福、隣人の幸福の間の相互関連性を認識しようと努めています。南アフリカには「ウブントゥ」という言葉がありますが、これは「あなたがいるから私がいる」という意味です。

これは相互関連性を本質的に認識しています。自分が成功するための唯一の方法は他者のニーズのことを考えることなのです。私たちは互いに依存し合っているからです。このことは地域におけるサウジアラビアの指導的役割と響き合っていると思います。他の国々や国内外のコミュニティーを支援することがサウジアラビア自体の国民の幸福にとって不可欠なのです。

Q:サウジビジョン2030の「医療セクター変革プログラム」についてはどのような意見をお持ちですか。このプログラムが公平でアクセスしやすい医療に重点を置いていることは、WHO財団の使命や価値観と一致しているとお考えですか。

A:サウジアラビアの「医療セクター変革プログラム」と同様に、WHO財団は公平でアクセスしやすい医療の重要性を信じています。ビジョン2030全体に関して言えば、非営利活動や戦略的慈善の文化にも重点が置かれています。

WHOとユニセフから提供された新型コロナワクチンを接種するシリアの医療関係者たち。2021年5月24日、シリア北東部の都市カーミシュリー。(AFP)

政府の指導があることは確かですが、企業や個人も国家的課題への対処や開発の促進に貢献するよう奨励されています。目標実現のために全員が役割を果たすというこの考え方はWHO財団の使命と一致しています。

私たちはここ数年、多くのことへの対応を迫られています。世界の大半が予測していなかったパンデミック、長い時間をかけて醸成された気候変動の影響、周期性と歴史を持つ自然災害などです。

過去数十年を振り返れば、地震や津波が大きな被害をもたらしてきました。問題は、私たちがそのような大災害への備えができているかということです。起きた災害に対応するばかりで備えをしなければ、被害はより大きくなり、不必要な損失が出てしまいます。

サウジアラビアのような国が2030年に向けて事後対応だけでなく先を見越して取り組めば、他の国に対して重要な手本になるともに、備えをするだけで実現できる進歩を示すことになります。

サウジアラビアのKSreliefが運営する医療クリニックで治療を受けるイエメン難民たち。2021年2月24日、戦争で荒廃したイエメン西部ホデイダ県。(AFP)

Q:KSreliefによる医療介入など、地域の国々の支援におけるサウジアラビアの役割について、WHO財団はどのように評価しますか。今後の人道対応や災害対応において、サウジアラビアはより大きな役割を担うことになるでしょうか。

A:KSreliefは素晴らしいモデルであり、私たちはKSrelief、WHO、その他の国際人道支援パートナーとの間の既存の協力から多くを学んでいます。KSreliefによる惜しみない資金提供は素晴らしいですが、重要なのは金額だけではありません。彼らは意図した好ましい影響を与えるために必要な援助の質や政策の枠組みについても考えています。このようなパートナーシップや関与を見習って構築したいと思っています。

Q:WHO財団はサウジアラビアや地域全体におけるWHOの使命を推進するためにどのような方法でより大きな民間資本や官民連携を動員したいと考えていますか。

A:私たちがWHO財団で行おうとしていることの一つは、サウジや地域の他の国々の利害関係者にWHOが果たしている重要な役割について理解してもらうことです。WHOの存在は新型コロナパンデミック中に目立っていましたが、その役割はパンデミックへの対応だけではありません。様々な緊急事態に対応したり、他の機関が活動していない環境で活動したり、将来的な緊急事態について考え備えたりもしているのです。

WHOは先月、現在続いている54の保健緊急事態に対する準備・対応態勢を高めるための「グローバルヘルス緊急アピール」を発表しました。そしてもちろん、WHOには基準を定めるという仕事があります。FDA、CDC、NIHなどと同様です。

WHOによって確認されたコレラ流行中、病院で治療を受けるイエメンの子供たち。2016年11月11日、首都サヌア。(AFP)

WHOとそのイニシアティブに対する認識や理解を高めることで、地域から多大な惜しみない寄付を受け、地域の利害関係者を動員してWHOが人道的目標を実現するのを支援してもらえると期待しています。

Q:慈善はイスラム教の重要な教義です。WHO財団の地域での資金調達においてザカート(喜捨)はどのような役割を果たし得るでしょうか。

A:私は世界中の様々なコミュニティーや信仰について知る機会に恵まれてきました。ザカートは非常に素晴らしいもので、私も生活の中で実践しています。私はヒンドゥー教徒で米国人ですが、毎年税引き後収入の5%を慈善事業や市民活動への寄付に割り当てています。

ザカートとサダカはイスラム信仰の特別な要素であり、ザカートやサダカと十分の一税の間には大きな一貫性があります。この喜捨の文化は、世界の人道・健康危機に不足している資金を調達し、支援を最も必要としている人々のところに届けるための多大な機会を提供します。信仰のもとでの喜捨という伝統は今後、より大きな慈善、惜しみない寄付、協力を促すことができると考えています。

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