• アンカラがクルド地域政府から直接購入し、契約に違反したとして、仲裁判決でバグダッドに14億ドルの支払いが命じられる
• イラク石油省の関係者が、イラク北部の石油の新たな輸出方法について交渉するため、トルコを訪問する予定

アンカラ：クルディスタン地域政府（KRG）から直接石油を購入し、契約に違反したとして、アンカラがバグダッドに14億ドルの支払いが命じられるという歴史的な仲裁判決が下された後、トルコはイラクとの新たな石油取引について協議を求められている。

イラク石油省の役人は、イラク北部の石油輸出に関する新しい方法を交渉するためにトルコを訪問する予定である。これは約10年間も続いた訴訟の結果として、先週国際仲裁裁判所が判決を下したことを受けてのことだ。

この判決の結果、イラク・クルディスタンの45万バレル/日の輸出が停止し、半自治地域の不安定さと経済危機への懸念が増している。石油生産を完全に再開するには、バグダッドの同意が輸出に必要であり、イラクの両当事者がさらに大きな合意に達する必要がある。

2014年、イラクはKRGからの直接購入に関してトルコを訴え、330億ドルの賠償を求めた。イラクは、KRGが国有のパイプラインを通じて石油を販売することはできず、トルコとKRGの取引が1973年の両国間のパイプライン・トランジット協定に違反しているとの主張を続けている。

アンカラに拠点を置くシンクタンクORSAMのイラク研究コーディネーターであるビルゲイ・デュマン氏は、この事件がバグダッドとクルド地域行政の長年の不和を反映していると述べた。

「国際仲裁の裁定を尊重するトルコは、国際法に基づく義務を果たし、2つの地域パートナー間の不和の解消に貢献する用意があることを示した」と同氏はアラブニュースの取材にて語った。

同氏は、2013年からのトルコとKRGの契約には、補償はすべてエルビルが支払うよう求める免責条項があったと述べた。ただし、「アンカラがイラクに支払う賠償金が、クルド地域政府によってどの程度補償されるかはまだ不明である」とも付け加えている。

デュマン氏によれば、両者間の不和は、イラクで新たに発見された油田の支配権に関する法的な抜け穴をKRGが悪用していることも影響しているという。

専門家たちは、この判決は、昨年石油で57億ドルを稼いだKRGの経済に打撃を与えると指摘している。

ワシントンのアラブ湾岸研究所の研究員であるエレバン・サイード氏は、「バグダッドは、石油の主権を得るために経済的損失を受け入れる準備ができているようだ」と指摘した。「この状況は、クルディスタン地域のクルド人にとって現実的な結果をもたらす。クルディスタン経済は石油に大きく依存しているのだ」と彼は述べている。

石油の販売停止は、KRGにとって財政面と安全保障面の両方で問題をもたらしていると彼は指摘する。

「最善の方法は、アンカラがエルビルとバグダッドの間を仲介し、建設的な役割を果たすことだ」と彼は語った。

「トルコとバグダッドがKRGを迂回して国家間協定を結ぼうとする場合、クルド人の民族主義が復活し、地域の不安定さを煽ることになりかねない」と彼は付け加えた。

一方でトルコは、KRGの石油を失った穴を埋めるために、ロシアとイランの石油に目を向ける必要が出てくる。

大西洋評議会のシニアフェローであるリッチ・アウトゼン氏は、仲裁判決の影響はKRGで最も強く感じられるであろうが、イラクにも波及すると述べた。「石油が流れない限り、イラクにも打撃を与えるだろう。私の見解では、トルコとイラクは罰金全額を下回るような取引を行うだろう」と、彼はアラブニュースの取材で語った。

アウトゼン氏は、バグダッドへの予算支援を行っている米国は、アンカラとの迅速な取引や貿易再開を促すべきだと述べた。「世界の原油価格が上昇することで、石油コストにも影響が出る。今回の裁定はトラックではなく、イラク・トルコ・パイプラインに影響を与えるため、まだトラックで一部の石油が輸送される可能性がある」と彼は語った。

イラクのモハメド・シア・アル・スダニ首相はこの度トルコを公式訪問し、バスラからトルコ国境までの陸路・鉄道回廊の建設プロジェクトについて協議した。