ワシントン:数日前、アメリカは制裁執行活動の結果、洋上のタンカーからイラン製石油を押収した。3つの情報筋が明らかにした。海上警備会社によるとその数日後、報復措置としてイランが別の石油タンカーを拿捕した。
イランの核開発計画をめぐり、アメリカは長年制裁を課してイランに圧力をかけてきた。石油市場に不安が広がる中、今回の拿捕は両国間の対立の高まりを示している。イランは制裁を受け入れておらず、逆に石油輸出を拡大している。
イラン政府は、核開発は軍事利用を目的としたものではないと主張しているが、アメリカ政府はイランが核兵器開発を意図しているのではないかと考えている。
海上警備会社アンブレーによると、4月27日のイランによるタンカー拿捕からさかのぼること少なくとも5日前に、アメリカによるイラン製石油貨物の押収があった。「当社はイラン海軍によるタンカー拿捕は、アメリカの行動を受けて行われたものと見ています」と、アンブレーは顧客向け報告書で述べている。
「いずれのタンカーもスエズマックスサイズ(船舶の最大サイズ)で、イランは以前にもイラン製石油が押収された後に報復行動に出ています」
事情に詳しい関係筋(機密を含む問題の性質上、身元を明らかにすることは拒んだ)によると、アメリカ政府は裁判所命令を取った上でマーシャル諸島船籍のタンカー「スエズ・ラジャン」号に積載されていた石油を押収した。船舶の追跡データによると、「スエズ・ラジャン」号の所在が最後に報告されたのは4月22日、南アフリカ近海であった。
ロイターはタンカーの管理者でギリシャを拠点とするエンパイア・ナビゲーション社およびアメリカ司法省にコメントを求めたが、即時の回答はなかった。
アメリカ海軍は、イランが27日オマーン湾でマーシャル諸島船籍のタンカーを拿捕したと発表した。地政学的に不安定なアラビア湾岸の周辺海域で民間船舶をイラン政府が攻撃または拿捕するのは、今回が初めてではない。
イラン国営テレビは28日、拿捕されたタンカーはイラン船籍のボートと衝突事故を起こし、乗組員数名が負傷し、3名が行方不明になった後も8時間にわたり無線による呼びかけに応答しなかったと報じた。
「我々は武力を行使する前に、当該の船に接触を試みて…停船を求めましたが、彼らは協力しようとしませんでした」とイランの海軍副司令官であるモスタファ・タジョディニ海軍少将は国営放送に対し説明した。
国連のアントニオ・グテーレス事務総長はオマーン湾での拿捕事件に関し、国際海洋法への支持をあらためて表明したと、国連報道官が28日発表した。
昨年、アメリカはギリシャ近海でイラン製石油の積荷を押収しようと試みたが、これを受けてイランはギリシャ船籍のタンカー2隻をアラビア湾で拿捕した。タンカー2隻は後日解放されている。
両国間の緊張をさらに高める可能性のある動きとして、27日、12人の米上院議員がジョー・バイデン大統領に対し、1年以上の間国土安全保障省がイラン製石油の積荷を押収する際の妨げとなっている、財務省の方針を撤廃するよう求めた。
2020年、アメリカ政府はベネズエラ行き外国船籍の船に積まれた貨物4つ分のイラン製燃料を押収し、非公開の他国のパートナーの支援の下で他の船2隻に積み替え、アメリカへ向けて出航した。
ロイター