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ダーイシュ指導者の死で地域安全保障におけるトルコの役割が前面に

トルコ情報機関(MIT)の工作員によってダーイシュ指導者のアブ・フセイン・アル・クライシ氏が殺害された現場となった家。2023年5月1日(月)、シリアのアレッポの北。(写真:AP)
トルコ情報機関(MIT)の工作員によってダーイシュ指導者のアブ・フセイン・アル・クライシ氏が殺害された現場となった家。2023年5月1日(月)、シリアのアレッポの北。(写真:AP)
レジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は、トルコの情報機関MITはダーイシュ指導者のアブ・フセイン・アル・クライシ氏を「長い間」追跡していたと述べた。(ロイター)
レジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は、トルコの情報機関MITはダーイシュ指導者のアブ・フセイン・アル・クライシ氏を「長い間」追跡していたと述べた。(ロイター)
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02 May 2023 06:05:22 GMT9
02 May 2023 06:05:22 GMT9
  • シリアでテロ責任者を殺害したトルコの作戦は選挙の見通しに有利に働くとアナリストらは指摘する
  • エルドアン大統領は、「無差別テロ組織との闘いの継続」を決意していると述べた

メネクセ・トキャイ

アンカラ:ダーイシュ指導者を殺害したという先週のレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領による発表は、地域安全保障におけるトルコの主導的役割を強調するものであるとともに、厳しい選挙を前にした同大統領のテロリストに対する強硬姿勢のアピールを強化するものだ。アナリストらが指摘した。

エルドアン大統領は4月30日、前日に情報機関「MIT」の工作員がシリアでアブ・フセイン・アル・クライシ氏を殺害したと発表したが、詳細は明らかにしなかった。ロイターが地元情報筋や安全保障関係者の話として伝えたところでは、同氏はトルコが支援する反体制勢力が支配するシリア北部の町ジャンダリスにおいて実施された急襲で死亡したという。

エルドアン大統領は、「無差別テロ組織との闘いの継続」を決意していると述べた。

ダーイシュ元指導者のアブ・イブラヒム・アル・クライシ氏は昨年2月、シリア北部の潜伏場所に対して米国が実施した急襲で死亡した。同氏の前任者だったアブ・バクル・アル・バグダディ氏は2019年10月、やはり米国がイドリブ近郊で実施した急襲により殺害された。

アブ・フセイン・アル・クライシ氏は2022年11月にダーイシュ指導者に就任した。

「スーファン・グループ」で研究ディレクターを務めるコリン・P・クラーク氏はアラブニュースに対し次のように語る。「ダーイシュ指導者に対する米国の空爆の作戦テンポから分かるのは、我々はこれらの人物が誰であるのかさえほとんど知らず、偽名しか知らないということだ」

「ダーイシュのここ数人のカリフはほとんどメディアに露出していない。生き残るので精一杯だったからだ」

「トルコも同様に、今になってこれらのダーイシュ指導者を近くで追跡し行動を起こすことができるようになった。だから、シリアのダーイシュは最高レベルの指導者や幹部を狙った暗殺が繰り返されていることに動揺している」

クラーク氏は、これらの作戦がエルドアン大統領の選挙にとって最大限に有利になるようなタイミングで行われていることは想像に難くないと語る。

「彼は常に自分を強い人物として提示してきたし、今度の選挙では(野党指導者のケマル・)クルチダルオール氏との差を強調しようと努めている」

「強い男というイメージはエルドアン大統領が就任以来培ってきたものだ。ハイレベルな対テロ作戦をアピールすることは、そのような主張を続けるうえで役に立つだろう」

MITは2021年6月、武器と爆発物を持ってトルコに密入国しようとしていたダーイシュの資金調達者カシム・ギュレル氏(別名アブ・ウサマ・アル・トゥルキ)を拘束した。

同氏はクルチダルオール氏を含む政治家の暗殺を計画したとされていた。

MITは他にも、トルコにおける数回の自爆攻撃を指示したダーイシュ幹部数人を拘束した。

トルコは2013年にダーイシュをテロ組織に指定した。ダーイシュはそれ以降、一連の攻撃を行ってきた。109人の死者を出した2015年10月のアンカラの平和集会に対する自爆攻撃もその一つだ。

トルコの治安部隊は同国の5月14日の選挙に向けた数ヶ月間、ダーイシュに対して厳しい取り締まりを実施してきた。先週アンカラで行われた対ダーイシュ作戦では外国国籍者9人が逮捕され、今年に入ってからトルコ国内で逮捕されたダーイシュ関係者は合計35人となった。

アンカラを拠点とするシンクタンク「TEPAV」の安全保障アナリストであるニハト・アリ・オズジャン氏はアラブニュースに対し、先月シリアで行われたダーイシュ幹部に対する作戦は欧米へのメッセージでもあったと指摘する。

同氏は次のように語る。「トルコは過激なテロ組織との戦いにおいて積極的な役割を果たしてきたというメッセージが込められている」

「地域のテロ対策の取り組みに関与し続けているトルコは、非合法化されているクルディスタン労働者党(PKK)だけでなくダーイシュも標的にしているという事実を強調しようとしているのだ」

一方、トルコ軍はイラク北部における対PKK作戦も継続しており、潜伏場所に対して空爆を行っている。

 

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