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イスラエル、ガザ地区沖の天然ガス採取めぐりパレスチナ自治政府と内密に協議中

ガザ沖で新しく見つかった天然ガス田で2002年末に生産を開始するため、2000年9月27日に開始された掘削作業を見るパレスチナ海軍の将校(AFP)
ガザ沖で新しく見つかった天然ガス田で2002年末に生産を開始するため、2000年9月27日に開始された掘削作業を見るパレスチナ海軍の将校(AFP)
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06 May 2023 06:05:39 GMT9
06 May 2023 06:05:39 GMT9
  • 1990年代に発見されたガザ地区沖の天然ガス田は稼働開始すれば、エジプトに天然ガスを輸送してからヨーロッパに販売することになる
  • パレスチナ自治政府は天然ガス田の所有権を主張しているが、イスラエル政府は、天然ガス田を合法的に管理する権利があるのは国家のみだと主張する

モハメッド・ナジブ

ラマッラー:イスラエル政府は、ベンヤミン・ネタニヤフ首相とヨアヴ・ガラント国防相の同意を得て、ガザ地区沖のガス田(通称ガザ・マリン)からガスを抽出するためにパレスチナ自治政府と内密に協議を行っていることが、現地の情報筋の証言により明らかになった。

この情報筋によると、イスラエル政府は昨年末から、ガザ海岸から36km離れた地中海沿岸にある天然ガス田に関する内部協議を続けているという。

この協議は、米国の仲介により始まったばかりのイスラエルとパレスチナ自治政府の間の政治・安全保障関係の構築の一環として、ふたたび行われるようになった、と情報筋は述べている。

また、アカバとシャルム・エル・シェイクで行われた会談では、ガザ沖の開発と天然ガス採掘の準備の問題が中心であったという。

この会談では、米国の支援のもと、パレスチナ側とイスラエル側の安保・政治関係者が一堂に会した。ヨルダンとエジプトも協議に参加したとされる。

イスラエル側は、イスラエル国家安全保障会議議長のツァヒ・ハネグビ氏と、イスラエル占領地域での政府活動の調整役であるガサン・オルヤン氏が中心となっている。

イスラエルは、この開発はパレスチナ人に経済的な利益をもたらし、長期的には安全保障上の緊張緩和に寄与する可能性があると考えている、と情報筋は述べている。また、ガザ・マリンから天然ガスの抽出を行うには「イスラエルの承認が必要になる」と付け加えた。

また、イスラエル側は、ガス田を合法的に管理する権利を持つのは国家だけだと主張しているため、議論が行き詰まっているという。

国家として認められていないパレスチナ自治政府が単独で天然ガスを採取することは認められないので、エジプトがガス採取プロジェクトを監督すれば、問題は解決するとイスラエル側は言っている。

情報筋によると、最近この件に関してイスラエルとエジプトの高官による協議が行われたとのことだ。

パレスチナ投資基金(Palestinian Investment Fund)は2021年2月、エジプトガス公社(EGAS)の請負業者協会と、ガザ沖天然ガス田の開発で協力する契約を締結している。

イスラエルは、この件に関して内部協議を再開させたことを、「複数の窓口を通じて」パレスチナ自治政府と米国、エジプトに通知している。エジプト側と米国側は、パレスチナ側を懐疑的に見つつも、このプロジェクトを支持している。

1990年代末に発見されたガザ・マリン油田は自分たちが所有している、とパレスチナ側は主張している。

しかし、パレスチナはイスラエルに対して開発を許可するよう要求したものの、拒否されたため、天然ガスの採取は行っていない。

情報筋は、このプロジェクトの完了には安全保障上の課題があるとみている。

イスラエルの分析によると、「ガス田の開発を武装組織ハマスが黙って見ているわけがないので、どのように開発を進めるのかが最大の問題」である。ハマスに対抗する措置をとると批判を招くかもしれない、とイスラエルは懸念している。

この油田は当初、2000年にブリティッシュガス社が開発し、その後ロイヤル・ダッチ・シェル社(現シェル社)に引き継がれたものの、同社も2018年に撤退した。

同地区の天然ガス埋蔵量は1.1兆立方フィート、あるいは320億立方メートルと推定される。これは20年間、毎年15億立方メートルの生産能力に相当する。

昨年10月、パレスチナの有力な情報筋は、ガザ・マリンからの天然ガス抽出に関するエジプト・パレスチナ・イスラエル間の合意は存在しないとした。

同筋はまた、当時の協議はイスラエル側の参加なしにパレスチナとエジプトの間で行われたものだとし、「われわれのものを取り出すためにイスラエルに金を払うことはない。これは容認できない……イスラエルに求められているのは、作業を妨害しないことだけだ」と述べていた。

パレスチナ政府は閣僚委員会を立ち上げ、パレスチナ投資基金がエジプトとの間でガザ・マリンの資金調達と運営に関する合意を完了させるための支援を行っていた。

この天然ガス採取プロジェクトは、2021年11月以降、深刻な財政危機に見舞われているパレスチナ自治政府にとって、不可欠といっていいほど戦略的に重要なものである。

パレスチナの経済専門家サミア・フーリエ氏はアラブ・ニュースに対し、ガザ・マリンが稼働した場合に得られる年間収入は7億ドルから8億ドルになると述べた。10年以内には70億ドルから80億ドルの収入が得られる。

フーリエ氏によると、パレスチナは天然ガスパイプラインをイスラエルの都市アシュドッドへではなく、エジプトの都市エル・アリーシュにまで延長する予定だ。そこで天然ガスを処理し、エジプトの天然ガスとともにヨーロッパに販売する計画である、と同氏は述べた。

パレスチナ自治政府の高官筋はアラブ・ニュースに対し、「天然ガスが採取されれば、パレスチナ自治政府の国庫にとって重要な収入源となり、今年末までに6億500万ドルに達する水不足を解消することができる」と語った。

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