
ベイルート:レバノン議会は14日、12回目の大統領選を行ったが、ヒズボラが支持するスレイマン・フランジェ、元財務大臣のジハード・アズール両氏共に1ラウンド目の投票で一定の得票数を得られなかったため、選出失敗となった。
レバノンはすでに世界最悪レベルの経済危機に見舞われ、内閣は部分的な権限しか持たず議会は崩壊しているなかで前代未聞の政治停滞に直面しており、今回の選出失敗は派閥間の緊張をさらに強める形となるだろう。
14日の国会は、ヒズボラおよび同盟党であるアマル党の議員らが1ラウンド目の投票後に退出し、議会は2ラウンド目の投票に進むために必要な定数を割る形となった。
レバノンは7カ月以上にわたって国家元首不在の状況が続いており、前回は1月19日に大統領選が行われた。
レバノンは派閥による繊細な権力共有システムの下、マロン派キリスト教徒が大統領に就任することが慣例となっており、今回の大統領選はフランジェ氏に対し、主にキリスト教徒および無党派層から支持を受けているアズール氏の対決となった。
両陣営共に候補者が一定の得票数を得られなかった今回の大統領選により、政治停滞はより一層強固なものとなる可能性があり、3年間にわたって破綻が続いてきた経済を救うという期待は弱まるだろうとアナリストらは述べている。
レバノンは1年以上にわたって権限が限定されている暫定政権によって統治されており、二重の権力空白に陥っている。
慣例では、首相はイスラム教スンニ派から、議会議長はイスラム教シーア派から選出される。
国際社会は政治家らに対し、国外から数十億ドルの融資を受けるために必要な改革をレバノンに起こすことができる、民意に沿った大統領候補の選出を呼びかけてきた。
元議員・大臣のフランジェ氏はシリアのバッシャール・アサド大統領の友人で、レバノンの多くの政治家と同様に、名高い王朝一族の出身である。
フランジェ氏は10日、自身の連合の偏りにもかかわらず、「すべてのレバノン人の大統領」になると誓った。
アズール氏は2005年から2008年にかけて財務大臣を務めた人物で、今回の大統領選を見据えてIMF(国際通貨基金)中東・中央アジア局長の座を退いた。
当選には3分の2、つまり議員128名のうち86名からの得票が必要となるが、これまでの投票ではヒズボラおよび同盟議員らが無効票を投じたため不成立に終わっていた。
2ラウンド目の投票(こちらは投票数65票で当選が決まる)は、開始前に実行に必要な定数を割る形となった。
ヒズボラおよび同盟議員らは前回の大統領選と同じ戦術を実行した。これにより当時のレバノンは、2016年にミシェル・アウン氏が大統領選に勝利するまで2年以上大統領不在の状況が続いた。
アズール氏が60票以上獲得すれば、「ヒズボラにとっての流れが大きく変わる」だろうとビタル氏は語る。また、これは大規模な超党派での「レバノン政治におけるヒズボラ支配への反対」を示すものになるという。
「しかし現段階では、政治空白の長期化というのが最も可能性の高いシナリオでしょう」ビタル氏はそう付け加える。
アズール氏は12日、大統領選への出馬発表で、危機ではなく「解決に寄与」したいと述べた。
ヒズボラがアズール氏を「反逆と対立の候補」だと述べたことを受け、アズール氏は「誰に対しても反逆などしていない」と述べた。”
ヒズボラ議会連合代表のモハメド・ラード氏は、アズール氏の支持者は彼を当選させたいのではなく、フランジェ氏の大統領就任を阻止するためにアズール氏を「利用している」として非難した。
ビタル氏によると、14日の投票の行き詰まりにより、これまで先延ばしにされてきた「最終的に第三者を選出する」という交渉への道が開かれるかもしれないという。
米国とフランスは13日、レバノンの議員らに対し、協力して新たな大統領を選出するよう改めて呼びかけた。
フランスのアン・クレア・ルジャンドル外務省広報官は議員らに対し、「この日を深刻に受け止め、次の機会を無駄にしない」よう訴えた。
AFP/ロイター