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シリアでは武装勢力による子どもの徴兵が増加している

13歳のペイヤル・アキルさんの母親ハムリン・アルージさん、シリアのカーミシュリーにある自宅で娘の写真に目を通す。(AP)
13歳のペイヤル・アキルさんの母親ハムリン・アルージさん、シリアのカーミシュリーにある自宅で娘の写真に目を通す。(AP)
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29 Jun 2023 09:06:22 GMT9
29 Jun 2023 09:06:22 GMT9
  • ペイヤル・アキルさんは友人と一緒にいたとき、リクルーターの男に出会った
  • これまで12年間にわたるシリア内戦の期間を通して、武装勢力は子どもたちを徴兵してきた

カーミシュリー(シリア):先月、13歳のクルド人少女が学校の試験の帰りに武装集団の男に声をかけられ、その後行方不明になった。両親はすぐに、娘が武装集団に加わるよう説得され、訓練キャンプに連れて行かれたのではないかという最悪の事態を恐れた。

その少女、ペイヤル・アキルさんは友人と一緒にいたとき、その男に遭遇した。男は武装集団「革命青年」のリクルーターだった。ペイヤルさんはその男について行き、シリア北東部のカーミシュリー市にある革命青年のセンターのひとつに向かった。友人たちは外でペイヤルさんを待っていたが、彼女が出てくることはなかった。

ペイヤルさんの母親ハムリン・アルージさんによると、夫とともに地元当局に苦情を申し立てたが無駄だったという。

革命青年は後に、ペイヤルさんが自ら進んで入隊したと主張したが、この主張をアルージさんは受け入れなかった。ぬいぐるみや学校の教科書で満たされた娘の部屋でインタビューに応じたアルージさんは、革命青年のプログラムを受けて「たとえ本人が納得していたとしても、年齢を考えると娘の同意は無効だと考えています」と語った。

シリアではこれまで12年間にわたる紛争と内戦の期間を通して、武装勢力は子どもたちを徴兵してきた。6月27日に発表された国連の新たな徴兵に関する報告書によると、シリアのほとんどの地域で戦闘が終息しつつあるにもかかわらず、シリアでの子ども兵士の活用が増加しているという。

国連によると、シリアで武装勢力に徴兵された子どもの数は、2020年の813人から2021年には1,296人、2022年には1,696人と過去3年間で着実に増加している。

そして、子どもを徴兵しているとされる武装勢力のひとつが、過激派組織ダーイシュとの戦いにおいて米国と同盟関係にあるクルド人主体のシリア民主軍(SDF)だ。、国連は、2022年に事例の半数にあたる637件をシリア北東部のSDFとその関連団体によるものだとしている。

同報告書はまた、過去にSDFと武力衝突したトルコ支援のシリア国民軍による611件の徴兵事例と、シリア北西部のアルカイダ系組織タハリール・アル・シャーム機構(HTS)による383件の徴兵事例を国連が確認したとしている。さらに、シリア政府軍と親政府民兵組織による25件の子どもの徴兵を挙げている。

独立系市民社会団体「真実と正義のためのシリア人(STJ)」事務局長のバッサーム・アラハマド氏は、シリア全土で子どもたちが徴兵されていると述べた。

場合によっては、子どもたちが強制的に徴兵されることもあるという。また、未成年者が自分や家族がその給料を必要としているために入隊する事例もある。イデオロギー的な理由から、あるいは家族や部族への忠誠心から入隊する子どももいる。場合によっては、子どもたちは他の紛争で傭兵として戦うためにシリアから送り出される。

シリアでは地域ごとに異なる武装集団が活動していることから、このような徴兵を止めようとする試みは簡単にはいかない状況だ。

2019年、SDFは18歳未満の子どもの入隊を廃止し、支配地域に多数の児童保護事務所を設置することを約束する国連との協定に署名した。米国務省は声明で同盟関係にあるSDFを擁護し、SDFは「子ども兵の使用を終わらせるという国連の呼びかけに応じたシリアで唯一の武装勢力」だと述べた。

SDF傘下の地方行政機関が運営する児童保護事務所のひとつで広報を担当しているノデム・シェロ氏は、SDFの支配下にある地域で子どもたちが勧誘され続けていることを認めた。

しかし、苦情のメカニズムは機能しているとシェロ氏は述べた。シェロ氏の事務所には、今年年始から5か月間で20件の苦情が寄せられたという。4人の未成年者がSDFにいることがわかり、家族の元に戻された。その他の苦情の対象者はSDFにはいなかった、とシェロ氏は説明した。

実際には子どもが別の集団にいるのに、親が自分の子どもがSDFに連れて行かれたと思い込んでしまう事例もあるという。

アラハマド氏は、2019年の合意以降、SDFによる徴兵は減少したが、SDF支配地域で他の武装集団が引き続き子どもをターゲットにしていることに、SDFは介入していないと述べた。

その武装集団のひとつが、トルコで禁止されているクルド民族の分離独立を求めるクルディスタン労働者党(PKK)とつながりのある集団「革命青年」だ。革命青年はSDFと関係のある地方政府から認可を受けているが、両団体はそれ以上のつながりを否定している。

国連の報告書では、2022年に革命青年が関与した事例は10件だったとされているが、その数はもっと多いと言う意見もある。真実と正義のためのシリア人(STJ)は1月の報告書で、2022年にシリア北東部で記録した児童徴兵事例49件のうち45件は革命青年が関与していたと発表した。

アラハマド氏は、SDF傘下の行政機関は見て見ぬふりをしていると語った。そして、「こうした活動を止めるために、責任を負うべきだ」と訴えた。

革命青年の関係者は、同団体が未成年者を勧誘していることは認めたが、強制的に徴兵していることは否定した。「私たちは誰も誘拐していませんし、強制的に加入させることもしていません」と、この関係者は同団体の規則に従って匿名を条件に語った。

「未成年自身が私たちのところにやってきて、国家のために奉仕したいという意思を伝えてきます」とこの匿名の関係者は語った。「優柔不断だったり、確信が持てない未成年者を、私たちは入隊させません」

また、未成年者は直ちに兵役につくわけではないという。むしろ、最初は教育訓練コースやその他の活動に参加することが多く、その後「希望すれば山に送られる」と、イラク北部のカンディル山脈にあるPKKの本部を指して説明した。

ペイヤルさんについて尋ねると、彼女は両親がヒジャブの着用を強制したと訴え、家にいるのが不満だと訴えていたと説明した。

アルージさんによると、ペイヤルさんが家に不満を抱いていた様子はまったくなく、失踪前夜には弁護士になるための勉強をするつもりだと話していたという。

5月21日の失踪から1か月後、ペイヤルさんは帰宅した。母親が言うには、彼女は革命青年の訓練キャンプのひとつから逃げ出してきたのだという。

娘が戻ってきて以来、「厳しい訓練を受けていたため、娘の精神状態は悪い」とアルージさんは語った。一家はもはや安全だとは感じておらず、シリアから脱出する方法を探しているという。

AP

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