
ニューヨーク市:国連は7月24日、停滞しているシリア和平プロセスを再び推進するための新たな外交努力を呼び掛け、同国の人道危機に対処し、安全保障理事会決議第2254号にまとめられた道筋を前進させるためには、すべての利害関係者の実質的な関与と協調が極めて重要であることを強調した。
国連シリア担当特使のゲイル・ペデルセン氏は、実質的な関与があれば、新たな外交プロセスが「ブレーカーのスイッチ」の役割を果たす可能性を強調した。その実現のため、シリア紛争に関与するすべての当事者に対し、交渉のテーブルに着いて「真の貢献を行う準備をする」よう呼びかけた。
ペデルセン氏は、特に憲法委員会の再招集と信頼醸成措置の実施を通じて、国連が促進するシリア国内の政治プロセスを再開することがその一番の目標だと述べた。
また、「悪化している悲惨な人道的状況に対処することは、人道上必要であるだけでなく、政治的問題における進展も可能だというある程度の確信を与えるでしょう」と付け加えた。
この発言は、安全保障理事会で開催されたシリアに関する会合で出されたものだ。この会合の2週間前、反政府勢力が支配するシリア北西部で支援を必要としている400万人以上の人々に、トルコから国際的な人道支援を届けることを長年認めてきた越境(クロスボーダー)支援の主要メカニズムの延長について、安保理で合意に達することができなかった。
ペデルセン氏は、「数百万の民間人にとっての命綱」であるバブ・アル・ハワ国境検問所の利用の再認可が安保理で見送られたことに深い失望を表明した。そして、国際社会に対し、国境を越えた人道支援の継続を確保するための努力を強化するよう求めた。
そして、「シリア担当特使として、この問題を解決するあらゆるチャンスが開かれており、安保理およびすべての利害関係者がシリア人のニーズを最優先することを心から願っています」と述べた。
「私たちは、クロスボーダー支援およびクロスライン支援の継続的な提供を確保する解決策を見出すために一層の努力をする必要があります。最も弱い立場にあるシリア人にとって、現在、これほど重要なことはありません」
クロスボーダー支援の場合は、シリア入国後に直接、被支援者に届けられるが、クロスライン支援の場合は、ダマスカスのアサド政権を経由する。
政治面では、ペデルセン氏は「何か月も費やされた重要な意味を持つ可能性のある外交が、シリア国内外のシリア人当事者のための具体的な成果や、政治プロセスにおける実際の動きに結びついない」ことを嘆いた。「すぐに実現されることを願っています。さもなくば、シリア危機の影響が深刻化している現在、シリア紛争を交渉によって終結させるための機会をまた逃すことになります」
ペデルセン氏は、新たな政治プロセスの重要な側面のひとつは憲法委員会の再招集だろうと述べた。そして、開催地などの詳細をめぐる論争を打開するための政治的意志を求め、信頼に足る進展を図るためにすべての利害関係者に憲法委員会の再招集を支持するよう要請した。また、憲法改正プロセスはシリアの将来を決定し、和解と安定の基礎を築くために不可欠であるとも語った。
一方、国連では、シリア北西部の人道的状況は依然として悲惨なものであり、人口460万人のうち410万人が人道支援を必要とし、その80パーセント近くが女性と子供であることが報告されている。
国連はかねてより、増大する援助要求を満たすために、クロスボーダー支援でもクロスライン支援でも、利用可能なあらゆるルートを通じて、シリアへの人道支援提供の確保が緊急に必要だと強調してきた。
ジュネーブの国連人道問題調整事務所(OCHA)の責任者兼代表のラメシュ・ラジャシンガム氏も、クロスボーダー支援の継続を求めながら、安保理がバブ・アル・ハワ国境検問所に与えた権限を延長しなかったことに失望を表明した。
「この議場で何度も言われてきたように、クロスボーダー支援はシリア北西部の数百万の人々にとって死活問題です」と同氏は会合出席者に語った。
「クロスボーダー支援の将来は政治的な決定ではなく、人道的な決定であるべきです」
7月11日にロシアが拒否権を発動してバブ・アル・ハワ国境検問所に与えられた権限を延長する決議を阻止した直後、シリア政府は国連に書簡を送り、安保理の合意は得られなかったものの同国境検問所を通過して援助物資が輸送する許可を与えた。しかし、この書簡には救援活動を妨げ、国連職員を含む人道支援活動従事者を危険にさらす可能性があると懸念される制限事項が含まれているという理由で、国連の反応は慎重だった。
同書簡はまた、国連に対し、この地域で「テロリスト」と協力しないよう求めていた。ここでの「テロリスト」とは、バッシャール・アル・アサド政権が敵対勢力を表現する際に使用する用語である。
7月の持ち回り議長国である英国は、シリア政府のこの動きを即座に非難し、「国連の監視なしに、この重要なライフラインの管理権が、シリア国民の苦しみの原因となっている人物に渡ってしまいました」と警告した。
今月安保理議長を務める英国のバーバラ・ウッドワード国連常任代表は、「私たちはこの件を躊躇なく安保理に持ち帰ります」とも語った。
ラジャシンガム氏は、国連のクロスボーダー支援活動は、「人道、公平、中立、独立」という人道主義の原則に従う自由を与えられるべきだと述べた。
これは、支援を必要とするすべての人に確実に支援を届けるために、支援活動の独立性を維持し、「シリア全土」の対応体制を維持することの重要性を国連が広く強調していることと一致している。
2月にシリア北部とトルコ南部の一部を襲った壊滅的な地震の後、シリア政府が一時的に許可を出したことで、バブ・アル・サラームとアル・ライの国境検問所を通過して、国連職員、救援物資、保護援助がシリア北西部へ送られ続けている。しかし、ラジャシンガム氏は、このクロスボーダー支援活動の許可は8月中旬に期限切れとなり、許可期間が短いため、資金、ロジスティクス、調達を含む人道支援活動に難題をもたらしていると述べた。同大使は、効果的な人道支援対応を確実にするため、クロスボーダー支援の許可を与える際の予測可能性を高めるよう求めた。
米国の国連代表であるリンダ・トーマス・グリーンフィールド大使は、国境を越えた人道支援活動の権限延長を目指す安保理の取り組みをロシアが妨害していると批判し、ロシアは弱い立場にある人々のニーズを軽視していると非難した。
さらに、ウクライナの穀物インフラに対するロシアの攻撃と、それが世界の食料供給に与えた影響により、シリア人や他の地域の人々が直面している状況はさらに悪化していると述べた。
また、バブ・アル・ハワ国境検問所を通じて国連援助物資の配送を継続することを許可するというアサド政権の提案に対しても、救援活動を妨げ、人道支援者を危険にさらす「容認できない」制限を理由に、難色を示した。
米国は、他の主要援助国とともに、あらゆるクロスボーダー支援提供の取り決めについて、活動の独立性の維持、「シリア全土」の対応体制の維持、人道主義の原則に基づく長期的かつ一貫した援助提供などの主要条件を要求した。
ロシアのドミトリー・ポリャンスキー国連次席大使は、シリアのアラブ連盟への復帰で、中東にシリア危機の解決を促す雰囲気が生まれたと他の国連メンバーに語った。同次席大使は西側諸国に対し、「こうした自然なプロセス」を妨げず、早期復興や難民の帰還といった人道問題を政治化することを控えるよう求めた。
クロスボーダー支援メカニズムについてポリャンスキー氏は、「新たに説明することは何もない」と述べた。さらに、人道支援活動が世界の「他の国」と同様に調整されるようになったことをロシア政府は喜んでいる、とロシア政府の同意を得て語った。
また、国連には役目を果たすために「必要な手段はすべて揃っている」とし、国連人道問題調整事務所(OCHA)に対し、「西側諸国の言いなりにならないよう」求めた。