ワシントン:今後数十年で、中東に住む人々は、長期の熱波、平均気温の上昇、および水不足の脅威にさらされることになり、さらに事態を複雑化させる要因として、資源の減少を巡って地域的な紛争が発生する可能性もある。そして、これらの状況を緩和するためには真剣な取り組みが必要だと、専門家たちは警告している。
1990年代と比較して、中東ではすでに平均気温が1.5℃上昇しているが、最悪の状況が訪れるのはまだこれからだと、ワシントンを拠点とする中東研究所(MEI)が8月29日に開催したセッションで気候と水分野の専門家たちが指摘している。
シリア、イラク、イエメン、スーダンなどの国々は、国内紛争と極端な気象条件に苦しむ国々の代表例であり、この地域の人口の半数は水不足の場所で暮らしているとのことだ。
こうした深刻な状況は、裏を返せば、この地域の各国政府が、お互いに連携したり、国際機関と連携したりして、解決策を見つけ行動に移す機会にもなるはずだとの声も、セッションでは上がっていた。
MEIの気候と水プログラムで上級フェローとディレクターを務めるモハメッド・マフムード氏は、気候変動のためにこの地域では厳しい課題が立ちはだかっていると述べた。
「気候変動がなくても、この地域はしばしば干ばつと乾燥に苦しんでいる。それに気候変動が加わることで、問題は一層深刻化する」と、マフムード氏は付け加えた。
マフムード氏は、政府軍と民兵組織の即応支援部隊(RSF)との対立に見舞われているスーダンでは、水と食料の入手が困難になっているとも述べた。
将来的には水資源を巡る武力紛争が発生する可能性が高いとのことだ。
バグダッドの国際赤十字委員会(ICRC)で気候・環境担当官を務めるハイダル・アラブダリ氏は、かつて水資源が豊富で長い農業の歴史を持つイラクが今や水不足に直面し、気温の上昇が農業と人々の健康に影響を及ぼしていると指摘した。
UAEのICRCミッションを率いるクレア・ダルトン氏は、さらなる課題として大気汚染を挙げた。アラブダリ氏によると、イラクは極端な気温、水不足、および食料不足の点で世界で5番目に脆弱な国であると付け加えた。
アラブダリ氏によると、イラク政府は危機的な水不足と気候変動の影響への対策について明確な長期戦略や解決策を持っておらず、さらに川の上流に位置するトルコとシリアで建設されたダムの悪影響が深刻化しているとのことだ。
「人道的な影響をより難しくしているこうした問題に、私たちは特に懸念している」と、アラブダリ氏は語った。
アラブダリ氏は、イラク政府の「解決策はどれも短絡的」と付け加え、例えば農業用水を汲みあげる井戸の設置を許可することで地下の帯水層が枯渇する恐れがあるとも指摘した。
MEIの気候と水プログラムで外部研究員を務めるメーガン・フェランド氏は、干ばつと洪水がシリア全土で水不足を引き起こし、シリアの人々はコレラの流行に見舞われていると指摘し、これもすでに脆弱な生活基盤が武力紛争でさらに悪化しうることを示す1つの例であるとした。