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世界食糧計画(WFP)GCC地域トップ 「飢餓は増加し、資金は減少している」

2023年7月25日、チャド・アドレ郊外のオウランで、赤十字のボランティアから米を受け取るスーダンの少女たち。(ロイター)
2023年7月25日、チャド・アドレ郊外のオウランで、赤十字のボランティアから米を受け取るスーダンの少女たち。(ロイター)
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04 Sep 2023 12:09:13 GMT9
04 Sep 2023 12:09:13 GMT9
  • アブデル・マギード・ヤヒア氏は、食糧不安の最大の要因は紛争であるとし、さらに気候変動の影響も大きいと述べた
  • ヤヒア氏は、ヨルダンのシリア難民に対する重要な食糧援助プログラムの救済のため、8月にサウジアラビアのKSreliefから680万ドルの寄付があったことを称賛した

アリ・イタニ

ドバイ:紛争、自然災害、気候変動が世界の多くの人々に影響を及ぼしている中で、飢餓もまた世界中で広がっている。現在、79カ国で推定3億4500万人が深刻な飢餓に直面している。

国連世界食糧計画(WFP)UAE事務所所長であり、同計画の湾岸協力理事会(GCC)地域代表のアブデル・マギード・ヤヒア氏は、食糧需要が満たされない限り、飢餓の流行は本格的な大災害に発展する可能性があることを確認した。

「今年、私たちは前例のない飢餓のレベルに直面しているのは事実です」と、彼はドバイで収録されたアラブニュース・ジャパンの特別インタビューの中で述べた。

「2022年には約1億4千万人に支援物資を届けることができ、大きな成功を収めたものの、私たちは、2023年は難しい年になると伝えなければなりません」

世界で飢餓に直面している3億4000万人以上のうち、4000万人が「飢饉一歩手前の極度の食料不足の状態にある」と彼は付け加えた。

2023年7月25日、チャド・アドレ郊外のオウランで、赤十字のボランティアから米を受け取るスーダンの少女たち。(ロイター)

ヤヒア氏によれば、「それはすべて、中東からアフリカ、アフリカの角およびサヘルからアフガニスタンなど、世界のさまざまな部分で私たちが見ている紛争から始まっている」のだという。

気候変動もまた、世界的な飢餓と避難民の永続化に大きな影響を与えていると彼は言い、「新型コロナウイルス感染症に影響を受けた経済不況も原因のひとつです」と付け加えた。

気候変動とは、気温や気象パターンの長期的な変化を指す。そのような変化は自然なものである場合もあるが、気候科学者たちは、過去200年間の地球温暖化のほぼすべての原因が人間によるものであることを示してきた。

しかし、食糧不安の「ナンバーワン」の原因は紛争であるとヤヒア氏は言う。

「スーダンの例を挙げれば、紛争が始まってからわずか4ヶ月の間に、約400万人の人々が、スーダン内の別の場所に移動したか、隣接する国に避難しました」と彼は言った。

「これは、すでに援助不足に苦しんでいた避難先の国々、例えば南スーダン共和国に負担をかけています」

このような状況は、スーダンとその近隣諸国に限ったことではない。ヨルダンでWFPの代表、カントリーディレクター、緊急調整官を務め、WFPの中東地域における最大規模の緊急活動の責任者であったヤヒア氏は、食糧危機に対処した実体験を持っている。

WFPが支援する約50万人のシリア難民をヨルダンで受け入れ、さらに100万人をレバノンで受け入れていることも、受け入れ国がすでに直面している課題をさらに増やしていると指摘した。

長期的な気象パターンの変化、戦争、そしてパンデミックは、人類にとって未経験のことではない。しかし、これらの出来事が一度に発生したことで、WFPは「優先順位をつける」ことを余儀なくされている、とヤヒア氏は言う。

「つまり、飢えている人から奪って、さらに飢えている人に与える。それが、私たちがまさに直面している状況です。一方では人道支援を必要とする人々の数が増え、他方では資金が減少しています。そのような状況下において、私たちがとれる行動はこれしかないのです」

「私たちは資金調達にも苦労しています。なぜなら現在、アフガニスタンからイエメン、シリア、アフリカの角、サヘル、スーダンなど、優先事項が競合しているからです」と彼は言った。

彼は、WFPは世界で最も弱い立場にある1億7000万人の人々を援助するために必要な240億ドルの資金を調達できない可能性が高いと述べた。

「15年ほど前、WFPでは一度に2つの危機を管理できるかどうか話し合っていたのを私は覚えています。しかし、現在は、世界中で10を超える危機が同時に発生しており、その影響は明らかです」と彼は語った。

「昨年は140億ドルを集め、1億4000万人に支援を届けることができたから成功といえます。しかし今年は、100億ドルすら集めることができないかもしれません。つまり、一方では飢餓が増加し、他方では資金が減少しているという状況なのです」

このような状況の中、サウジアラビアはヨルダンの極めて重要な食糧援助プログラムを救うために介入した。8月、WFPはサルマン国王人道援助救援センター(KSrelief)からの680万ドルの寄付を得、ヨルダンのキャンプで暮らすシリア難民への食糧援助プログラムの継続が可能となった。

2015年の設立以来、KSreliefは26カ国の食糧支援プログラムのためにWFPに12億5000万ドル以上を拠出している。

避難民の流入により、すでに戦火に見舞われている国々での食糧需要が増加する一方、スーダンでの紛争は必要不可欠なサプライチェーンと貿易ルートを寸断している(ロイター)。

「この寄付は、ヨルダンでの活動や、私たちが管理しているキャンプ内の難民への食糧パイプラインの救援に役立ちました。9月1日、私たちはキャンプ内の住民への援助を削減または縮小することを発表するはずだったのです。KSreliefの寄付はヨルダンにおける私たち活動にとって適時な救済であり、直ちに効果が現れるでしょう」とヤヒア氏は述べた。

ヤヒア氏はこの点についてさらに詳しく述べた。「キャンプにいる難民は、食料クーポンや食料配給を継続的に受け取ることができます。寄付はキャンプにいる難民を対象にしています。しかし、キャンプにいる難民以外にも難民はいるのです」

「キャンプ外の難民もいるのです。他のドナーからの寄付がない場合、私たちは非常に難しい選択肢に直面し、解決策を決断しなければなりません。そのような状況の中で、サウジアラビアの寄付は、ヨルダンでの私たちの活動における真の救済であり、タイミングも良かったのです」

避難民の流入により、すでに戦火に見舞われている国々では食糧需要が増加している。スーダンでの紛争は必要不可欠なサプライチェーンと貿易ルートを寸断している。

「このような危機的状況に陥ると、食料の輸入が途絶え、貿易ルートも寸断されます。悪条件はつきず、良いことは何もありません。危機が起こる前からでさえ、良い方向には向かっていなかったのです。そして、今はまったく間違った方向に進んでいるのです」とヤヒア氏は語った。

「しかし、私たちは現場で活動を続けています。私たちはチャドから西ダルフールへの越境作戦を開始し、スーダンの他の地域にも到達しました。苦労しながらも、私たちはハルツームにたどり着くことができました。アクセスは依然として私たちの課題です」

ヤヒア氏は、スーダンの人口の半数近くが食糧不足に陥っていると繰り返した。この悲惨な状況は、今年4月15日、スーダン軍と準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」との間の暴力的な権力闘争が何の前触れもなく勃発する以前から存在していた。

「紛争は、すでに燃えていた火にさらに油を注ぐことになった」と彼は言う。「スーダンはその不安定な経済状況にもかかわらず、他国からの難民の受け入れ国でもありました。現在は1900万人が人道支援を必要としています。今、私たちは治安状況が原因で、アクセスなどの問題に直面しています」

スーダン危機と気候変動がサヘルやアフリカの角の飢餓人口に大混乱をもたらす一方で、特定地域の、それもかなり遠い地域の紛争が全世界の食糧安全保障を脅かしている。ロシアのウクライナ侵攻である。

ロシアとウクライナを合わせると、世界の小麦の4分の1以上、そしてWFPによる穀物供給の40%を供給していたことを考えると、2022年に起こった侵攻は、世界中――特に食糧援助に頼っている国々――で大規模な食糧不足と食糧価格の高騰を引き起こす恐れがある。

「もちろん、2022年4月の戦争勃発に伴う急激な高騰を私たちは見てきました。当時は新型コロナウイルス感染症の影響もあり、サプライチェーンが寸断されたため、輸送コストはさらに上昇しました」とヤヒア氏は語った。

アラブニュース・フランス地域マネージャー、アリ・イタニとのインタビューに答える国連世界食糧計画UAE事務所長兼GCC代表アブデル・マギード・ヤヒア氏。(ANフォト)

「世界の食料価格が2022年以前の水準まで下がったのはありがたいことですが、紛争が続いているため、供給状況が再び悪化する可能性があります」と彼は警告した。

「ウクライナでは、地雷が原因で農家が農場にアクセスできない、他にも、港へのアクセスに問題があるなどの理由で、食料の生産量が減少し続けるでしょう」と彼は述べた。

ヤヒア氏によると、WFPは戦争の影響を受けたウクライナ人に約20億食を提供することができたという。今もウクライナ人の3人に1人が依然として食糧不安に直面しているため、WFPは現地での活動を維持しているという。

ロシアは7月、国連とトルコの仲介で1年前から結ばれていた合意から離脱した。この合意により、ウクライナの封鎖された黒海港から、世界で最も食糧難の国々に穀物、食品、肥料、その他の商品が輸送されることが許可されていた。

ヤヒア氏によれば、穀物取引の破綻と、重要な黒海の「人道回廊」の閉鎖は、ウクライナの国境をはるかに越えて影響を及ぼす可能性があるという。「これはもちろん、世界の他の場所からこれらの商品を調達するための輸送コストの上昇を意味する」と彼は語った。

イエメン、サヌアのチャリティーキッチンで食事を待つ少年たち。(ロイター/写真)

紛争は世界的な飢餓の拡大の主な原因であるが、気候変動もまた食糧不安の原因として大きな役割を果たしている、とヤヒア氏は言う。彼は人道支援分野で30年以上の経験があり、戦争、大量虐殺、飢饉、自然災害で荒廃した地域で活動してきた。

気候変動に関する政府間パネルの2019年版報告書『気候変動と土地(Climate Change and Land)』によると、気候変動はすでに、特にアフリカの低緯度地域や乾燥気候において、食料安全保障に影響を及ぼし始めているという。

牧畜コミュニティは特に気候変動の影響を受けやすいと報告書は付け加えた。

「昨年、アフリカの角、ソマリアやエチオピアなどで見られたように、食糧生産の減少や人口の移動という点で、気候変動は紛争と同じような役割を果たしている」とヤヒア氏は述べた。

「気候変動は、確実に大きな役割を果たしていると思います。気候はもはや、閉ざされた部屋の中だけで語られるものではないのです。気候は、世界の食料安全保障に影響を与える現実的なものなのです」

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