ワシントン:イランのモラル警察による拘留中にクルド系イラン人女性マフサ・アミニ氏が死亡してから1年の節目を前にして、15日に米国、英国、カナダがイランへのさらなる制裁を科した。アミニ氏の死をきっかけに数か月にわたる反政府抗議運動が巻き起こり、この運動に対する弾圧はしばしば暴力的なものとなった。
22歳だったアミニ氏は、イスラム共和政国家であるイランの強制的服装規定を無視したとして逮捕された後の、昨年9月16日に死亡した。彼女の死をきっかけに数か月にわたる反政府抗議運動が巻き起こり、この数年の中でイラン当局への反対を最も大きく示すものとなった。混乱が予想されるため、今週末にはアミニ氏の故郷にイランの治安部隊が配置されている。
米国、英国、カナダは欧州連合(EU)とともに、複数回にわたってイランへの制裁を発表しており、アミニ氏の死後の抗議運動に対する広範で、しばしば暴力的な弾圧について指摘してきている。
「イランのいわゆる『モラル警察』の拘留下におけるマフサ氏の悲劇的で無意味な死はイラン全土でデモを巻き起こし、イラン政権は言語に絶する暴力、大量逮捕、組織的なインターネット遮断、検閲でこれに対応した」と、米国のアントニー・ブリンケン国務長官は声明で述べた。
Mahsa Zhina Amini’s death a year ago sparked protests across Iran that were met with violence, mass arrests, and systemic internet disruption by the regime. We'll continue to take appropriate actions against those who suppress Iranians’ basic human rights. pic.twitter.com/ceoc85xXbk
— Secretary Antony Blinken (@SecBlinken) September 15, 2023
ブリンケン氏は、「イラン国民の人権の行使を抑圧する人々の責任を追及するため、国際的パートナーと共に適切な措置を講じ続けていく」と述べ、カナダ、オーストラリア、その他のパートナーも今週制裁を科すと付け加えた。
米国財務省は別の声明の中で、アミニ氏の死をきっかけとした抗議運動に対するイランの「暴力的抑圧」、反対意見の弾圧、インターネットの制限に関わったとして、20以上の個人と組織に制裁を科すと述べた。
この措置の対象は、イスラム革命防衛隊(IRGC)およびイランの法執行部隊(LEF)の主要メンバー18名と、イランの刑務所組織(Prisons Organizations)のトップを含む29の個人と団体だと、財務省は述べている。イランのインターネット遮断に関与した高官と、いくつかのメディアも対象となっている。
この制裁は、LEFのサイード・モンタゼロルメフディ報道官、LEFとIRGCの多数の指揮官、イランの刑務所組織の責任者であるゴーラマリ・モハマディ氏を対象としている。
Douran Software TechnologiesのCEOであるアリレザ・アベディネジャド氏と、国が管理するメディア組織であるPress TV、Tasnim News Agency、Fars Newsも制裁対象となった。
「米国は...イラン国民の人権の行使を抑圧する人々に対し、集団での措置を講じ続けていく」と、財務省のテロ・金融情報担当次官のブライアン・ネルソン氏は声明で述べている。
ホワイトハウスの国家安全保障担当補佐官ジェイク・サリバン氏は、米政府は近日中にさらなる制裁を科すと述べた。
「世界人権宣言に含まれる人権の基本的規範の無視にしろ、ウクライナ市民の殺害のためのロシアへの兵器供与に向けたイランの動きに関わるものにしろ、イランの行動への制裁を続けていくし、近日中にさらなる制裁対象を指定する」と、サリバン氏は記者たちに述べた。
米国はイラン製ドローンのロシアへの供給に対して、複数の措置を講じてきており、イランとロシアの軍事協力と、ロシアによるウクライナ戦争でのイラン製ドローン使用に対する米国の懸念を反映している。
英国は、イランの文化・イスラム指導省の大臣と次官、テヘラン市長、イラン警察報道官を含む、イランの上級政策決定者らを対象とした制裁を独自に発表した。
One year on from Mahsa Amini's death, it is tragic that in 2023 Iranian women continue to fight for their fundamental human rights.
— Lord (Tariq)Ahmad of Wimbledon (@tariqahmadbt) September 15, 2023
Today the UK with other partners have sanctioned those responsible for Iran's repressive laws.
We will continue to stand with the Iranian people.
15日に発表された、昨年10月以降で14回目の対イラン制裁となるカナダの制裁パッケージには、6名の個人への制限が盛り込まれた。カナダ政府によると、この中にはIRGCや「文化革命最高評議会(Supreme Council for Cultural Revolution)」のメンバーが含まれている。
EUは、デモの弾圧を理由にイランの高官4名を制裁ブラックリストに追加した。
27か国が加盟するEUは、既に弾圧をめぐって約170のイランの個人、企業、組織にビザ発給停止と資産凍結を科している。
対象となった4名の高官は、イランの革命防衛隊の指揮官1名、警察の地域責任者2名、刑務所長1名だ。
4つの刑務所、革命防衛隊と関連のある1つの通信社、インターネットを監視するサイバースペース最高評議会もブラックリストに載せられた。
EUに加盟する27か国は声明の中で、「イランの女性と男性の基本的権利と彼らの願望への強固な支援を改めて表明する」と述べた。
また、「懸念される問題に対処するために、選び得るあらゆる適切な選択肢を検討し続ける」と述べている。
ロイター、AFPと共同