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外交のパラダイムシフトがいかに和平をもたらし得るか

2023年11月23日、ガザ北部においてイスラエルの攻撃後に立ち込める煙。(AFP)
2023年11月23日、ガザ北部においてイスラエルの攻撃後に立ち込める煙。(AFP)
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24 Nov 2023 01:11:16 GMT9

7週間近くにわたる戦争を経て、ついに大きな進展があり、イスラエルとハマスが22日に4日間の戦闘休止を発表した。この停戦は、1か月前に2人の人質を解放した際にハマスがほのめかしたものの縮小版だ。

10月20日のヨケヴェド・リフシッツ氏とヌリット・イツハク氏の解放は、ハマスが示したように「人道的理由の下」で行われ、カタールが「仲介」したものだ。これはハマスからの、交渉を望むというメッセージだったのであり、何について交渉したいか、交渉の場で誰に代弁してもらいたいかについてのメッセージだった。

国際社会がこれらのメッセージを十分に重要視するようになるまでに1か月を要した。ハマスは、被った最小限の損害を考えれば、停戦がなくてもそれほどを困らなかっただろうが、ガザ市民は別で、彼らは生きるか死ぬかの存在の危機に直面している。

停戦の維持や延長には国際社会の多大な努力が必要となるだろう。この戦争の開始以来、国際社会は二極の間で分断されてきた。一方はパレスチナ人市民の死者数増加を止める人道主義的義務、もう一方はハマスを解体し、ハマスがイスラエルにもたらす脅威をなくすという政治的目標だ。

西側諸国の政府による、自らの価値観を見落とし、市民の権利を軽んじ、真実の発見を無視する決断は、欠陥のある、中央集権的な外交政策決定の体制の産物だ。それがイスラエルに揺るがぬ支持を与え、国際法を順守する気がほとんどない国家への盲目的信用をもたらした。このことは、紛争当事者の一方が寄せる増幅されたインプットに依存し、もう一方を見落とす体制を示唆している。

しばしば、この体制が各国家の目標をむしばむ。多くの国が利害関係を有し、紛争当事者双方のニーズに応えようとして行動を見せているからなおさらだ。たとえば、米国はこの紛争において二軸のバランスのとれたスタンスを維持しようと試みている。同国はイスラエルの最大の支援国だが、パレスチナにも平均すると1年に6億ドルという、かなりの人道援助を提供している。

米国によるパレスチナへの人道支援があっても、ヨルダンの世論は、NAMA戦略情報ソリューションズ(NAMA Strategic Intelligence Solutions)が最近実施した世論調査の初期結果が示すように、米国をパレスチナの主要援助提供国と認識してはいない。それどころか、米国政府は完全にイスラエル支持のスタンスをとっているという考えが支配的となっている。

アントニー・ブリンケン国務長官は先月、「イスラエルを守ることは必須。ガザの市民への援助も同様」と題されたワシントン・ポスト紙への寄稿において、米国の2重の立場を説明しようとした。しかし、自らを「国務長官として、ユダヤ教徒として、夫および父親として」と表現したイスラエルにおける以前の同氏の発言は、この公平な立場から逸脱したものだった。確かに、ブリンケン氏にはこのような形で自分自身を表現する権利があるが、パレスチナの人々も同じレベルの理解、同情、代弁に値する。

代表者たちに偏見を持たないよう求めることは、特にこの特定の紛争の文脈においては、現実的でない。1人の仲介者が紛争当事者の双方を代弁することは、少なくとも今回の紛争においてはとてもできない。国連のような公平な組織でさえ、紛争当事者間の仲介を1人の特別代表もしくは特使に行わせることに、芳しい成功実績はない。一方の当事者がほんのわずかな偏見に気付くだけで、特使の取り組みは無効となってしまう。

それゆえ、この体制の問題点への対処、抜本的改革が必要だ、そのようなパラダイムシフトは、偏見が重要な強みと見なされ得るような別々の個人を通して紛争当事者の利益を代弁することを目指し、外交政策決定から主観性を排除することから開始されなくてはならない。

鍵となるのは、各々の偏見、あらゆる偏見は建設的となり得るもので、考慮に入れるべきものだということを認めることだ。したがって、公平にふるまうという不可能な責任を負った1人の代表に任せるよりも、2人の特使を立てることで、この問題に効果的に対処することができる。二国家解決を支持する国家ならなおさらだ。

二国家解決の提唱国でパレスチナとイスラエルの双方を支援していることが明らかな米国の場合、そのような改良された体制は、外交政策の優先事項とこの紛争における同国のスタンスに合致するだけでなく、国内外のあらゆる圧力の問題の回避につながるだろう。

組織的仲介役の第一の目標となるべき2重のスタンスは、2人の特使を立てる体制に反映されるべきだ。それにより特使らが、中央集権的な政策決定者へのインプットおよびフィードバックと、この政策決定者からのインプットおよびフィードバックを伝達することができる。

現在の体制は紛争当事者の一方が寄せる増幅されたインプットに依存し、もう一方を見落とすものだ。

モハメド・アブ・ダロホウム

米国においては、現在国務省パレスチナ問題担当特別代表であるハディ・アムル氏のような重要な政治・外交上の立場を有する有力なアラブ系米国人が多数存在する。米国の2重のスタンスにおけるパレスチナ支持の要素を代弁できる資質と経歴を持った人物の役割を拡大することは、おそらくパレスチナ人やアラブ人に歓迎されるだろう。

ある集団の代弁者がその集団の一員である場合、自分たちの最大の利益が守られるということが分かり、親近感、理解、信頼が高まる。そのような形で適切に代弁が行われているということをひとたび実感すれば、人々が主要な要求に対する代替案を検討する可能性が高くなり、基本的にゼロサムな(参加者の利益と損失の総和がゼロとなる)紛争がウィンウィンな結果につながる状況に変わり得る。

この原理は、これまでに提案された最良のウィンウィンな筋書きである二国家解決にもあてはまる。2人の特使による取り組みが成功するかは、単一の政策決定者の双方のインプットを平等に考慮する能力にかかっている。もしもある集団の利益や苦難が他の集団より重要視されることになる場合、話し合いは行われず、解決策を導くこともできないだろう。

モハメド・アブ・ダロホウム氏はMENAACTIONの会長で、NAMA戦略情報ソリューションズの上級リサーチアナリストである。

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