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毎年1000万人もの命を奪う「静かな伝染病」は打ち負かすことができる

コンゴ民主共和国東部の都市、ブカブで抗マラリア薬の主成分を検査する医療研究チーム(AFP)
コンゴ民主共和国東部の都市、ブカブで抗マラリア薬の主成分を検査する医療研究チーム(AFP)
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18 Dec 2023 06:12:23 GMT9
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医学や技術が著しく進歩した現代においても尚、世界中で毎年何百万人もの人々が、予防や治療が可能な病気で命を落としている現実は、残念でやり切れない。

悲劇的にも、毎年約1000万人が予防や治療が容易な病気で命を落としていると推定されている。これは、世界的な健康問題として取り組むべきである。加えて、その負担がしばしば低所得国、特にその国の子どもたちに不均等に負わされていることを指摘することも重要である。

予防や治療が容易な病気の影響は地域によって異なるが、こうした予防可能な死亡の大部分は、サブサハラアフリカ(サハラ以南のアフリカ)や南アジアで発生している。予防や治療が容易な病気による死亡率が高い国々には、ナイジェリア、コンゴ民主共和国、モザンビーク、ブルキナファソ、マリ、アフガニスタンなどが挙げられる。

知識、資源、効果的な介入策があるにもかかわらず、残念ながらこれらの病気は依然として存在している。

予防・治療可能な病気のいくつかは世界の死亡率に大きく影響している。特に、蚊によって伝播される感染症であるマラリアは、サブサハラアフリカにおける死亡原因のトップに挙げられる。殺虫剤で処理した蚊帳や抗マラリア薬などの簡単な予防対策で、この病気の発生率と影響を大幅に減らすことができることは注目に値する。

他にも、コレラやロタウイルスによる下痢が、清潔な水と衛生設備へのアクセスが限られた発展途上地域で多くの命を奪っている。これは、衛生状態の改善、清潔な水へのアクセスの促進、安全な水の利用方法の普及によって、これらの問題は部分的に解決できる。

その他の予防や治療が容易な病気には、肺炎などの呼吸器感染症があり、特に子どもや高齢者にとって大きな脅威となっている。ワクチン接種キャンペーン、十分な栄養摂取、医療への迅速なアクセスは、呼吸器疾患に関連する死亡率を大幅に減少させることができる。最後に、結核は依然として世界的な健康問題であり、毎年数百万人が罹患している。適時の診断、効果的な治療、そしてBCGワクチンのような予防措置は、結核の拡散を抑え、命を救うことに寄与する。

予防や治療が容易な病気という世界的な健康問題に包括的かつ効率的に対処するためには、まずその主な原因を見極める必要がある。低所得国では、十分な医療インフラの不足、医療施設やワクチンへのアクセス制限、訓練された医療専門家や必要な薬の不足といった課題に直面している。こうしたアクセスの欠如は、予防可能な病気に対する治療の遅れや不十分な治療につながる。

予防や治療が容易な病気による死亡が後を絶たないことは、世界の医療格差の現実を如実に物語っている。

マジッド・ラフィザデ博士

この問題を解決するには、貧困国の医療インフラを強化するために、政府、医療施設、国際機関が連携して取り組む必要がある。また、健康に対する社会的・経済的要因に対処し、低所得国の母子保健を改善することも必要だ。包括的な教育、広範な検査、利用しやすい医療サービスは、この世界的な健康課題に取り組む上で極めて重要である。

つまり、予防や治療が容易なこれらの病気に対処するためには、政府、医療専門家、非政府組織が関与する、多角的なアプローチが必要なのである。

さらに、このような多面的なアプローチには、これらの病気の原因、症状、予防策についての意識を高めるための包括的な公衆衛生教育プログラムが必要であり、これには予防接種、適切な衛生管理、早期の医療介入の重要性を強調することも含まれる。また、安価な医薬品や治療法の提供、国際的、地域的、国内的な協力体制とパートナーシップの強化、予防接種プログラムの支援と強化、医療インフラに投資する組織的な取り組みも不可欠である。

国連がこの問題に取り組む目標を設定したことは、正しい方向へ踏み出すための一歩である。「持続可能な開発目標」3.2は、2030年までに「新生児および5歳未満時の予防可能な死亡を根絶する」ことを目標としている。この目標は、より広範な国連SDGsの一部であり、貧困を終わらせ、地球を守り、すべての人々が平和と繁栄を享受できるようにするための普遍的な行動要請として、2015年にすべての加盟国によって採択された。具体的には、目標3.2は次のように述べている。「全ての国が新生児死亡率を少なくとも出生1000件中12件以下まで減らし、5歳以下死亡率を少なくとも出生1000件中25件以下まで減らすことを目指し、2030年までに、新生児および5歳未満時の予防可能な死亡を根絶する」

最後に、予防や治療が容易な病気による死亡が後を絶たないことは、世界の医療格差の現実を如実に物語っていることを指摘しておきたい。教育、医療へのアクセス、国際協力を優先することで、これらの病気がもはや脅威とならない世界を目指すことができる。

一言で言えば、私たちは毎年、予防や治療が容易な病気によって1000万人もの命が失われるという悲劇を目の当たりにしている。この「静かな伝染病」に対処し、より健康で回復力のある世界人口を実現するためには、政府、医療従事者、地域社会による共同の取り組みが不可欠だ。誰もが利用しやすい医療を提唱し、意識を高め、予防対策を推進し、このような不必要な死をなくすために努力することは、私たちの共同の責任である。教育、意識向上、そして世界的な協力を通じて、私たちはこの静かな伝染病に対する流れを変え、無数の命を救うことができる。

  • マジッド・ラフィザデ博士は、ハーバード大学で学んだイラン系アメリカ人の政治学者である。 X: @Dr_Rafizadeh
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