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2024年ダボス会議でサウジアラビアは明確なメッセージを伝えた

ダボス会議セッションに参加する駐米サウジアラビア大使のリーマ・ビント・バンダル王女。2024年1月18日。(X: @Davos)
ダボス会議セッションに参加する駐米サウジアラビア大使のリーマ・ビント・バンダル王女。2024年1月18日。(X: @Davos)
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20 Jan 2024 02:01:06 GMT9
20 Jan 2024 02:01:06 GMT9

ちょうど1年前、わたしは2023年の世界経済フォーラム(WEF)年次会合の閉幕に寄せたコラムを執筆した。そのなかで、わたしはグローバルサウスの主要リーダーの不在を指摘し、将来のWEF会合をより実りあるものにするには、かれらの出席が不可欠だと論じた。また、WEFがサウジアラビアで会合を開くのに機は熟したとも述べた。サウジアラビアは明るい展望に満ちた国であり、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子殿下が昨年9月のFOXニュースのインタビューのなかで、「21世紀のサクセスストーリー」と評したほどだ。

わたしは17世紀の英国の哲学者フランシス・ベーコンの格言をもじり、「ムハンマドが山に来ないなら、山がムハンマドのもとへ来るべきだ」と論じた。

18日、サウジ代表団とWEF理事会は、史上初となるサウジアラビアでのWEF特別会合を4月に開催することを発表した。この発表そのものが、サウジアラビアがビジョン2030を打ち出して以来、達成してきた大きな成果を裏づけるものだ。

だが、重要なのはリヤドで会合が開催されることではなく、その内容だ。テーマは「グローバルな協働を通じた発展」となる予定で、これはサウジアラビアが経済的・外交的・宗教的要衝として、長年にわたり力を入れてきたことでもある。

われわれはその成果を何度も目の当たりにしてきた。サウジアラビアの国際協力への取り組みは、コロナウイルスのパンデミックにおいて、また2022年のロシア・ウクライナ捕虜交換の仲介や、2023年のスーダンでの民間人救出においても際立っていた。

リーマ王女は「正常化ではなく、平和と繁栄」がサウジアラビアの政策の根幹であると明言した

ファイサル・J・アッバス

サウジアラビアの方針をよりよく理解するには、駐米サウジアラビア大使のリーマ・ビント・バンダル王女が18日、ダボスのセッションでCNNキャスターのベッキー・アンダーソンの取材に応じた際の発言に耳を傾けることをおすすめする。リーマ王女は、ビジョン2030の成功には地域の安定と国際協力が不可欠であると明言した。

王女はまた、サウジアラビアがイスラエルとの国交正常化を目指す意向であることを表明した。

ガザ危機を背景に、ダボスでの中東関係の議論では地政学が主要な話題を占めた。イスラエルのイツハク・ヘルツォグ大統領がフォーラムで、イスラエルとサウジアラビアの国交正常化が「ハマスとの戦争を終結させるための重要な要素であり、中東全体のゲームチェンジャー」であると、順序を取り違えた発言をしたことで、こうした議論はさらに白熱した。

けれども、リーマ王女は「正常化ではなく、平和と繁栄」がサウジアラビアの政策の根幹であると明言した。これは1991年のマドリード中東和平会談以来のサウジアラビアの揺るぎない立場だ。サウジアラビアには国交正常化に向けて前進する意思があるが、それはパレスチナの人々の窮状が認識され、解決に向けた合意が結ばれることが前提だ。3カ国合意の一環として、米国によるサウジアラビアの安全保障を求めるという、サウジアラビアの立場に変更はないだろうが、ガザでの戦争が事態を複雑化させており、イスラエルに対するパレスチナの人々からの要求がますます切迫性を増していることは、火を見るより明らかだ。

「パレスチナの人々には、国家と主権、そして不可逆的な進路が与えられるべきです」と、リーマ王女は語り、そのあと双方による無辜の民間人の殺害を非難し、即時停戦の必要性を訴える、力強い声明を発した。

のちに王国のファイサル・ビン・ファルハーン外相も、NBCのキア・シモンズによるインタビューのなかで、同様の見解を示した。「わたしたちが今重要だと考えているのは、パレスチナ国家樹立に向け、信頼の置ける不可逆的な進路を見出すことです」と、ファイサル王子は述べた。「『不可逆的』という部分を、とくに強調する必要があると思います。それこそが過去に欠けていた要素ですから」

ガザ危機がいつ終焉を迎えるのかについて、専門家の意見は割れている。だが、停戦の条件として、ハマスが人質全員を解放することが第一歩となることは明らかだ。人質解放と停戦は、双方が優位性を手放すことを意味するため、容易ではないだろう。だからこそ、地域と米国による保証と支援が、是が非でも必要なのだ。

ネタニヤフ首相には2つの選択肢しかない。 ひとつは、戦争を続け、世界的、国際的な圧力、安全保障上のリスク、そして大量虐殺の非難を受けるリスクを冒すことである。 もうひとつは、ありそうもないが、平和を実現した男として記憶されることだ。

ファイサル・J・アッバス

イスラエルの専門家のなかには懐疑的な意見もある。かれらの主張によれば、さまざまな理由から、ベンヤミン・ネタニヤフ首相は戦争継続を望んでいる。そのうえ、ネタニヤフ首相は18日、第2のステップであるパレスチナ国家の樹立に向けた不可逆的コミットメントを明確に否定した。これはおそらく、このような政策転換が自身の極右連立政権の崩壊を意味するためだろう。

だが、この泥沼を抜け出すのに容易な道はないのだと、首相は理解しなければならない。イスラエルの左派および野党の要人たちは、ダボスを訪れた数人も含め、平和を実現するために米国とその他の地域大国はネタニヤフ首相に辞任を促し、新政権樹立への道筋を示すべきだと主張した。だが、このシナリオは現実的ではない。選挙が迫っていない今、イスラエル国会の過半数の承認なくして、現政権を解体し、新首相を指名することはできないからだ。

したがって、純粋な政治的分析の観点から、ネタニヤフ首相が取りうる選択肢は以下の2つのいずれかだ。第一の選択肢は、戦争を継続し、さらなる国際的圧力、安全保障リスク、ジェノサイドへの非難を背負うというもの。そして第二の選択肢は、ありえないと思えるかもしれないが、あらゆる予想を覆して和平を実現した人物、パレスチナ人に国家を与え、サウジアラビアだけでなくアラブ世界、イスラム世界全体からイスラエルの承認を勝ち取った人物として、歴史に名を残すことだ。

第二の選択肢は停戦から始まる。ネタニヤフ政権下で、あるいは他のイスラエルの指導者の下で、それが実現することを心から祈る。

ファイサル・J・アッバスは、アラブニュースの編集長。X: @FaisalJAbbas

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