サウジアラビアと日本は地理的にこれ以上ないほど離れているが、ここ数日は両国が政治的、経済的、戦略的にいかに緊密になっているかを示している。
サルマン国王の体調不良のため、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子の訪日が11時間前にキャンセルされた。国王は皇太子の旅行開始予定の数時間前に検査のため入院し、サウジ側では重大な事態であったにかかわらず事態は冷静に対応された。 リヤドからの指示は非常に明確だったのだ。物事は通常通りに進められるべきと。
アブドルアジーズ・ビン・サルマン王子(皇太子の弟で世界で最も影響力のあるエネルギー大臣)、バドル・ビン・ファルハーン王子(文化大臣)、アブドゥラー・アル・スワイハ通信・情報技術大臣、そして最後だが、ベテランのハーリド・アル・ファーレフ投資大臣(元サウジアラムコのヘッドで、サウジアラビアと日本との戦略的関係の調整を任されている非常に有能な人物)など、東京行きの飛行機には重閣大臣らの代表団が乗り込んだ。
さらに、皇太子と岸田文雄首相はビデオ通話を行い、このメッセージが東京でしっかりと受け止められることを確認した: 「日本は重要な国であり、我々はあなた方のニーズを理解しており、多くの点で意見が一致している」と。
おそらく皇太子からの最も強いメッセージは、エネルギーの純輸入国として知られ、石油の約45%をサウジアラビアから輸入している日本に、原油を安定的に供給するというサウジのコミットメントを強調したことだろう。
しかし、ここ数日は、サウジアラビアが日本に提供するエネルギーを多様化し、よりクリーンな選択肢を加える予定であることなど、他にも多くの重要な指標を示唆している。両国とも、これは現実的かつ科学的な方法で行われるべきだという点で同意している。
しかし、エネルギーは、サウジアラビアと日本の関係を取引的なものから戦略的なものへと変化させるための多面的な旅路における多くの側面のひとつに過ぎない。2025年に国交樹立70周年を迎える両国は、皇太子と首相が戦略的パートナーシップ協議会の設立に合意した。
岸田首相は電話会談の中で、”幅広い分野でのサウジアラビアから日本への直接投資や、建設、送電、水素利用、デジタル、ICT、宇宙、健康、医療、食品、農業などの分野での協力、ビジネスチャンスの創出につながることへの期待”を表明した。
サウジアラビアと日本が共有するものを同じく持つ国は多くない。要するに、王国が公言し宣言している政策は地域の安定であるが、エネルギー供給という生命線がかかっている日本にとっては、それが絶対的な利益なのだ。だから、この地域に平和と繁栄をもたらすために、両国は緊密に協力する。
中東にいる私たちと同じように、日本もまた地域の問題を抱えている。サウジアラビアは外交的、経済的な影響力を持ち、お互いの立場を近づける役割を果たすことができる。私たちはともに、核兵器や大量破壊兵器の数を減らすことを望んでおり、それは世界的な関心事でもある。
両国は米国に近く、互恵的な方法でワシントンとの関係を最良のものにしようとしている。一方、日本の投資家はサウジアラビアに大きな可能性を持っており、その逆もまた然りである。
課題は、日本の政治的混乱や政権交代からこのビジョンを守ることだが、マルチステークホルダーの価値を創造することが重要な理由はまさにここにある。本質的に、ビジネスは世俗的なものであり、間違いなく非政治的なものである。そのため、責任の大部分は、両国民の利益となる共有ビジョンが関係なく前進するよう、十分な相互依存関係を確保する双方のビジネスリーダーにある。
日本の首相は、2030年にリヤドで開催される万博に先立ち、2025年の大阪万博からサウジアラビアに万博の聖火を引き継ぐことを喜ばしく思うと述べ、エンターテインメント、観光、学術、スポーツの分野を含め、交流のさらなる発展を後押ししたいと語った。
サウジアラビアと日本が約70年前に灯した友好の松明は、これからもますます輝きを増していくことだろう。
ファイサル・J・アッバス編集長