米国連邦下院議員435人のうち、パレスチナ人の権利を支持する票を投じる人は10パーセント未満で、親アラブの問題を支持する人はそれより少し多いだけだ。議会でパレスチナ人のために声を上げる人たちは、少人数の孤立した集団になっている。
2021年にパレスチナ人の権利を支持するために提案された最大の法案は、ミシガン州選出のアンディ・レビン下院議員が提出したもので、二国家解決策を支持する決議が含まれていた。法案に賛同したのは他に43人だけで、レビン氏を含めて支持した議員は計44名だった。
米国がなぜこれほどパレスチナ人の権利を認めることに反対するのか、不思議に思うだろう。一部のアラブ人は、パレスチナはもはや重要ではないとあざ笑うかもしれない。だが、ことの真相は、他のアラブ諸国やその要望に対する議会の支持もそれほど高くはない。親アラブの問題、とりわけパレスチナ人の権利を支持することに対して、多くの敵意が存在する。
1990年代に、当時バージニア州選出の下院議員であったジム・モラン氏が、議会でパレスチナ人やアラブ人の権利を擁護するのがいかに難しいことであるかを筆者に説明してくれたことがあった。モラン氏は議会でパレスチナ人の権利を擁護し、アラブ世界を支援するために一貫して発言してきた数少ない非アラブ系・非イスラム教徒の議員の一人だった。今日ならベティ・マッカラム下院議員やマリー・ニューマン下院議員のような存在だ。
モラン氏は筆者に対して、自分はアラブ人を支持する数少ない議員の一人なのに、アラブ系コミュニティの方は一致団結して自分を支持してくれないと述べた。残念ながら、状況は当時とそれほど変わっていない。パレスチナ人やアラブ人への支持を表明した議員はみな、米国の政治システムでは除け者にされてしまう。
イリノイ州で、ニューマン氏はパレスチナ人を公正に扱う運動を拡大させた。ニューマン議員は極左の過激派ではなく、どのような問題でも微妙なあやを見分けることのできる中道派だ。コンセンサスを求め、政治的な対立者をまとめて共通善を採用させる。そのやり方は100パーセントの承認ではなく、過半数の原理に基づいている。手に入れるためには妥協する。
残念なことに、アラブ系やイスラム教徒のアメリカ人の文化はそのようなものではない。妥協を嫌い、アラブ世界がよく要求してきた「オール・オア・ナッシング」を要求することが多い。
パレスチナ人を支持したために、再選への取り組みを前に、地元の民主党指導者たちに揺さぶられている下院議員。
レイ・ハナニア
ニューマン氏はパレスチナ人の権利の支持者であると同時に、イスラエルの権利も支持している。そのために政治的な「キルゾーン」に追いやられている。アメリカの親イスラエル派は、ニューマン氏がイスラエルの支持者であろうが、パレスチナ人を支持している事実を嫌っている。一方、親パレスチナ派は、議員がパレスチナの支持者であろうが、イスラエルも支持している事実を嫌っている。
ただし、ユダヤ人はニューマン氏を切り捨てて、反対に回るだけの余裕がある。親パレスチナ派や親アラブ派にはニューマン氏と対決するだけの余裕はない。それなのに、多くの親パレスチナ派活動家がまさにその行動をとっている。
2020年に、ニューマン氏はイリノイ州第3選挙区の民主党予備選で、パレスチナ系の要望を軽視する現職を抑えて勝利したが、もう一人の親パレスチナ派の候補である、選挙資金を80万ドル以上集めたラッシュ・ダルウィッシュ氏に攻撃されたために危うく負けるところだった。
ダルウィッシュ氏はパレスチナ系の要望よりも本人の利益を優先させたが、幸いなことに全110,852票のうち6,351票しか獲得しなかった。アラブ系コミュニティのダルウィッシュ氏への投資の結果は、惨憺たるリターンだった。
ニューマン氏は議員になって以来、パレスチナ系アメリカ人であるアイメン・チェハデ氏の攻撃も受けている。チェハデ氏はニューマン氏の選挙を支援する見返りにポストを約束されていたと主張しているが、ニューマン氏は否定しており、裁判所の判断を仰ぐことになっている。
残念なことだが、ダルウィッシュ氏との争いも、チェハデ氏との争いも、パレスチナ系やアラブ系のニューマン氏への支持を弱めるだろう。通常なら候補者はこの問題を軽くあしらうだろうが、ニューマン氏の選挙区はパレスチナ系の有権者が全国一多い。
ニューマン氏は、同じ民主党の政治家たちの手によって、厳しい戦いを強いられている。ニューマン氏は第3選挙区から選出されているが、民主党の州指導者はその選挙区を分割することを決定した。そのため、2022年に再選を目指す際は区割りが変更された第6選挙区から立候補することになる。同選挙区では現在、やや保守よりの民主党議員ショーン・カステン氏が議員を務めている。カステン氏がパレスチナ人の権利への支持を表明したことは一度もなく、おそらく今後もないだろう。
ニューマン氏は、パレスチナ人の正義を支持したことで政治的な一線を超えてしまい、同州の民主党員から罰を与えられている。同州の民主党員は、ニューマン氏の勝利を阻止して、パレスチナ人の権利を表明するその口を封じるためにできることであれば何でも行っている。
パレスチナ系、イスラム教徒、そしてすべてのアラブ系によって、ニューマン氏の再選は最優先課題であるべきだ。6月28日にこの選挙区でニューマン氏が民主党候補者に選出されなかったら、マッカラム氏やミシガン州のラシダ・タリーブ氏らが提出した、パレスチナに関する正義、公正、国際的な法の支配を支持する法案の一つでもいつの日か議会で可決されることをどうやって期待できるのだろうか。
まず必要なのは、区割りの変更によってヒスパニック系枠が意図されている新第3選挙区で民主党候補に勝ち上がることを目指しているチェハデ氏と、ダルウィッシュ氏の2人が、公にニューマン氏への支持を表明することだ。私たちは、誰かが肯定的なことを何かしようとするたびに自分の足に発砲するという、自分たちのコミュニティが自分自身への最大の敵によくなるというこの自滅的な慣行を終わらせる必要がある。
ニューマン氏は、パレスチナ人の権利を擁護するためにキャリアを危険にさらすことをいとわない数少ない議員の一人であり、私たちの支持に値する。
ツイッター:@RayHanania